なれそめ

この車の前は、トヨタのAW11型MR2(84年式)という車に乗っていました。 身軽で、そこそこパワーもあって、可愛い奴でした。

4AGの調子も良く、日本刀を意識したと言うデザインにも馴染んで いたし、全体には余り不満もなかったのですが、さすがに 90年代の 国産車と比べると、剛性や、高速安定性の面で古さを感じずには いられませんでした。あと、やっぱり二人しか乗れないのは不便かなー と思う事もありました。

それでなんとなく次の車を探していたのですが、 当時の国産車は膨張の一途を辿っていました。SW20型になって MR2 はライトウェイトスポーツから GT指向を強めたし、スポーツカー といえば 3ナンバーで、燃費も悪くて、サーキットが速いだけって言う 車が増えていました。私は運転して楽しい車が欲しいのであって、 サーキットのラップが良くても、乗り心地が余りに堅いのは遠慮したいし...

そんな折、とある電話関係の展示会で、NOKIA という会社のブースに それまで見た事もないカブリオレが置いてあったのです。なんと言う事も ない形なのですが、私は NOKIA の端末よりその車に目を奪われ、ずいぶん 長い間そのブースにいた気がします。(NOKIA の人ごめんなさい)

とりあえずその車がプジョー306であることだけチェックして、会場を 後にしました。世の中には綺麗な車がある物だと感心しながら...

それまで外車なんて、性能の割りに高いか、あるいは国産には まるで追い付かないボロいものだと思っていました(もちろん超高級な 奴は例外ですけど)。そんな私が、デザインだけで心を奪われ、 情報集めを開始したのです。性能なんて二の次でした。あの車が 欲しい!...ただそれだけでした。一目ボレって奴でしょうか。 デザイナーって凄いですね。ほんとに尊敬してしまいます。

さて、調べはじめてすぐに、本体価格が 359万円で、新車で買うと 400万は 優に越える事がわかりました。頭金を二年越しで貯金する位でないと とても手が届きません。幸い AW は元気ですし、ま、気長に貯金すっかな などと構えることにしました。

しかしある時、通勤経路にある怪しげな外車専門店の隅に、みつけて しまったのです。色は白でしたけど、確かにアレです。間違う筈は ありません。「中古があるのか!」

さっそくその週末、見に行きました。それは左ハンドルで、並行輸入 されたものでした。走行5000km、まだまだ新車同様です。おまけに 革シート仕様でした。さらに、新車価格より確実に100万以上安いです。 なにはともあれ、試乗です。

緊張と興奮で背筋がぞくぞくします。こんな気分を味わうのは久しぶりです。 加速はトロイけど、乗り心地は実に上品でした。「いいよ、これ。欲しい!」。 予定より10ヵ月も前です。頭金も余りたまっていません。でも、お買い得です。 決めないと売れちゃいそうです。「うぅ...」

店のセールスマン氏は、「もう何時間でも悩んで下さっても結構ですよ」と 言っています。私は金策を必死で考えつつ、やっぱり止めておこう、でも 欲しい、飲み代を少し削れば大丈夫だろうか、いややっぱりきつい、でも 欲しい...などと、悩んでいるうちに、ほんとに数時間その店にお邪魔して いました。

もうとっぷり日も暮れた頃、セールスマン氏が n 杯目のコーヒーを 持って来てくれながら言いました。「お客さん、そこまで悩んで、 買わずに帰ったらきっと後悔しますよ。予約金、3000円でもいいですから、 決めちゃいましょうよ。ね。」

悪魔のささやきでした。もう店を閉める用意が始まっています。 「あーもう、どうしても欲しいんじゃぁ!」

こうして、私は 3000円を払ってサインしました。さっきまでの悩みは 嘘のように消え失せ、金策の心配は後回しになり、晴れやかな、なんとも 言えない気分で帰って来ました。

これが、私と PEUGEOT 306 Cabriolet 形式 DLFZ4 とのなれそめです。 さーてローン地獄が待っている。


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