松山・石手寺

三重塔
 松山到着は午後3時ごろ。石手寺へは翌日行くことにして、この日は松山市内を散策してみた。移動手段は主に市電。市電はバスと違ってルートがわかりやすいから、旅行者にとっても便利な乗り物である。
 この市電が伊予鉄道の踏切を渡るところは、線路同士の平面交差になっている。阪急今津線(今は平面交差は無くなったが)以来、久しぶりに平面交差を見た。ここを通るときの車輪の音がいい。
 松山市内で一泊し、朝10時ごろ、松山駅前から市電で道後温泉へ。せっかくなので付近を歩いて道後温泉の建物を見た後、バスで石手寺へ。(なかなかすごい所だったので、このページは写真が多い)



 石手寺は、四国八十八ヶ所の五十一番目の札所で、美しい三重塔もあり、遍路の格好をした人が何人もお参りをしているという、<表向きは>大変雰囲気のいい寺である。しかしながら、本堂脇にある地下道から先は、大きく雰囲気が変わり、実に怪しげな寺になるのである。
 本堂の左隣に、不思議な面の架かった社がある。その奥に、「マントラ洞」という地下道の入口と、マントラ洞の洞内図がある。ここが、裏の石手寺への入口である。

曼途羅マントラ洞内図

 入口脇の案内板によると、洞内は右へ行けば四国八十八ヶ所霊場をまわる洞内巡礼、まっすぐ行けばマントラ塔へ続くマントラ洞の2つのルートの分かれているようである。
 そして、いよいよマントラ洞へ。入口の賽銭箱に100円を入れてから、暗い洞内に入る。

マントラ洞入口

 洞内に入ると、すぐに道が二手に分かれる。最初に、前方へ伸びているマントラ洞へ進む。通路には中央に地蔵さんが並んでいて、その頭にロープが渡してある。ここでは片側通行なのである。
 それにしても暗い。下の写真はフラッシュを使っているから明るく写っているが、実際にはほとんど明かりがないため真っ暗である。危なくてしようがない。
 洞内には、やや広くなった場所が2ヶ所(それぞれ「胎蔵界」「金剛界」という)あり、ここにはシャンデリア状のライトがいくつもあるのだが、ほとんどついていない。電球の交換ぐらいやっておいてほしい。
 「胎蔵界」には中央にエイリアンの爪のようなものが置かれていて、「中央の五鈷に触れて仏の智恵を感得下さい」とある。この爪は五鈷というものらしいが、仏教には詳しくないのでなんと読むのかわからない。一応、触ってきた。

マントラ洞内胎蔵界

 一方の「金剛界」には、ほぼ等身大の大きな石仏があり、ここにもシャンデリアのように電球が下がっているのだが、これもほとんどついていない。写真を撮ってみて、ようやく何があったのかわかるという状態である。維持にもちゃんと金をかけてもらいたい。
 ちなみに、洞内には人は少ない。本堂のほうには人は大勢いるのだが、この地下道に入る人はあまりいないようである。暗いからかもしれない。
 「金剛界」からしばらく歩くと、マントラ洞の出口に着く。外は一般道になっていたが、急に明るいところに出たのでかなり眩しい。目の前には石材店らしき建物があり、その一角に琵琶を持った観音像?がある。この雰囲気からすると、この石材店は石手寺が経営しているのかもしれない。
 さらに付近を歩き回ってみると、近くに荒れて蜘蛛の巣だらけの庭園があり、さまざまな像が建っている。入口には「マントラ三昧」とあり、下の写真はその中のガネーシャ像。

マントラ三昧マントラ三昧

 庭園の先には、金色のUFO型建物があった。これがマントラ塔である。周囲には痩せこけた釈迦の石像があったり(これがまたでかい)、入口付近には石で作った手が伸びていたり(石手寺だからか?)、不思議な建物である。「マントラ三昧」から先、人をまったく見ないが、代わりにマントラ塔の周囲には猫がたくさん住みついていて、近寄っても逃げない。何があるのか期待しながら、中に入る。

マントラ塔マントラ塔

 1階はたいしたことはなく、階段の裏などに木彫りがいくつか置いてある程度。しかし、2階へ上がると雰囲気は一変する。
 2階はホールになっていて、ひな壇のように周囲が高くなっているのだが、大量の木彫りが所狭しと置かれている。階段を上がるとホール中央に出るのだが、木彫りがすべてこちらを見ているので、なかなか気味が悪い。
 天井は天窓になっていて、シャンデリア状の飾りが下がっている。胎蔵界や金剛界と趣向は同じようである。木彫りに混じってなぜか古いプロジェクターとスクリーンがあったので、かつて映画でも上映していたのかもしれない。ここでホラー映画でも見たら、さぞ楽しいだろう。

マントラ塔内部マントラ塔内部

 中央にあるソファーに座ってしばらく休もうとしたが、周囲の木彫りからいっせいに見つめられるので、すぐにいたたまれない気分になった。
 2階にある出口から外へ出て、蜘蛛の巣をよけながら遊歩道のような狭い道を上っていくと、やがて一般道に出た。この上は墓地になっているらしく、お参りに来ている人もいるようである。しばらく墓地に沿って歩いてみたが、大きなキャンバスに描かれた不思議な絵が並んでいる一角があった。何かよくわからない怪物(龍かもしれない)の絵やら、空を飛ぶ吉祥天?やら、月夜の墓地の絵やら、どういう意図なのかよくわからない。この墓地は石手寺の所有らしいが、いやなんとも・・・。
 ここで引き返すことにして、来た道を通ってマントラ塔へ。マントラ塔を出て付近を歩いてみると、おそらく石手寺が経営している「いして幼稚園」があり、建物には期待通りに不思議な絵が描かれていた。うーん。
 マントラ三昧を過ぎ、マントラ洞の出口へ向かっていると、そこから出てきた数人のグループが、「なんだ、これで終わりか」と言って引き返していた(「マントラ三昧」の入口はわかりにくい)。実にもったいない。ここからが面白いというのに。
 再びマントラ洞へ入り、次は洞内巡礼へ。入口付近の絵が迫力がある。

洞内巡礼弘法大師修行場

 こちらは通路にたくさんの地蔵さんが並んでいて、お参りをしながら歩くだけで四国八十八ヶ所霊場巡りができてしまうという、たいへんにお得な場所。
 蝋燭型のライトがあちこちにあるのだが、切れているものがほとんどで、こちらの通路も暗い。注意しながら歩いていくと、やがて大師堂があり、そこが出口になっている。大師堂付近にも、多くの木彫りが置いてある。この大師堂には参拝者がわりと多く、遍路の装束を着た人もときおりやってくるが、この人たちはマントラ塔の存在を知っているのだろうか。



 マントラ洞を出て、再び表の石手寺へ戻ってきた。
 表の石手寺を歩いてみたところ、一角に「宝物館」という資料館があったので入ってみた。ところが、入口にいたおばさんに料金の200円(だったと思う)を払おうとすると、「えっ、入るんですか?」と驚いたように言われたので、その感じからするとどうやらほとんど来館者はいないらしい。中はかなり狭く、寺の古い資料がいくつか展示されている。設立年を含めて、石手寺は詳しい来歴がわからない寺であることはわかった。
 さらに、パゴタという東南アジア風の建物もあり、入ってみるとビルマで戦死した人々が奉られていた。この寺の関係者でビルマ行った人がいるものと思われる。
 寺の入口付近には、小規模だが仲見世のように店が並んでいる。ここで土産物を買って帰ろうとしたところ、マントラ塔にあったような木彫りが寺の入口付近にも並んでいることに気づいた。ただし、こちらの方がずっと大きい。裏の石手寺の雰囲気が、ここで暗示されていたわけである。
 このような不思議な寺はあちこちにあるようである。次は群馬県の赤城寺に行ってみたい。

  石手寺公式サイト http://www.nehan.net/



高速船シーマックス
 石手寺を後にして、バスで道後温泉駅へ。高速船の出港まではまだ時間があるので、バスで大通り駅へ行き、松山市で一番の繁華街らしいアーケード街をしばらく歩いた後、市電で松山市駅へ。そこから伊予鉄道で松山観光港へ向かう。市電との平面交差を通り、終点の高浜駅から連絡バスでターミナルへ。
 ここから、高速船「シーマックス」で門司へ。約3時間の船旅だったが、この船は揺れが新幹線そっくり。座席は広くゆったりとしていて、なかなか快適だった。夕方、門司港に到着し、門司港駅から列車を乗り継いで家へ帰った。

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(2000.9.17)