キリストの墓

 八戸からレンタカーでキリストの墓と大石神ピラミッドがある三戸郡新郷村へ。路線バスもあることはあるのだが、乗換えが必要で時間がかかり、さらに本数も少ないので、ここではレンタカーを使用した。
 約1時間で、新郷村に到着。村の中心部を通り過ぎ、5分ほどのところにキリストの里公園がある。村にとって貴重な観光地のようで、駐車場や遊歩道もちゃんと整備されている。キリストの墓の他、「キリストの里伝承館」に資料が展示されている。

十来塚と十代墓十来塚と十代墓

 新郷村のキリスト伝説について少し解説しておくと、もともとこの地方にそういう伝説があったわけではなく、昭和になってから茨城県の竹内巨麿という人が「ここがキリストの墓だ」と断定したのが始まりである。つまり、伝説ではなく湧説ということになる。
 この竹内家というのがとんでもない家で、キリストの遺言書やらモーゼの十戒石やら、すごいものを多数所有していたそうなのだが、その中の神代史(竹内文献といわれる)から、次のようなことが明らかになったそうである。
 「キリストは22歳のときに行方不明になり、33歳のときに忽然と現れて教えを説いたのだが、この11年間の行動は聖書にもまったく記されていない。実は、このときキリストは日本へ来ていて、越中の国にいた尊き方の弟子になって修行を重ねていた。そして11年間の修行を終えたキリストは日本を去ってユダヤに帰国し、周囲の人々に日本の尊さを語りつづけたという。しかし、キリストの教えは当時のユダヤ教には受け入れられず、捕らえられて磔刑に処せられることになったのだが、実は磔になったのは弟のイスキリであった。生き延びたキリストは、4年間シベリアを放浪した後、アラスカから船に乗り、現在の八戸に上陸。再来日したキリストは名前を「十来太郎大天空」と改め、ミユ子という女性と結婚して106歳まで生き、この地に没した」
 このことを実証しようとした竹内巨麿は、調査の結果、戸来村(現在の新郷村)の竹やぶの中にあった土まんじゅう2個を見つけ、それぞれキリストの墓(十来塚)とイスキリの墓(十代墓)ということになった。(ただし、この土まんじゅうについては、誰かはわからないが高貴な人の墓という言い伝えがこの地方にはあったそうである)
 というのが、新郷村のキリスト伝説である。磔になったはずのイスキリの墓があるのは不思議だが、ここにはイスキリの耳が葬られているそうである。(キリストが持ち歩いていたのか?)

キリストの里伝承館民家復元コーナー

 この話を信じるかどうかは自由だが、私はなかなか面白いと思う。墓自体は特にどうということのない土盛で、十字架はわりと新しく立てられたもののようである。花が活けてあって、小銭(賽銭?)が置いてあるところが実に日本的。
 また、墓の近くにある「キリストの里伝承館」には、キリスト伝説の根拠がいくつか紹介されている。

(1)合併して新郷村になる前は、この付近を戸来(へらい)村といっていたのだが、これはヘブライに由来する。
(2)この地方には、古くから「ナニャドヤラ」という盆踊り歌が伝わっていて、この歌の歌詞「ナニャドヤラー、ナニャドナサレノ、ナニャドヤラー」は日本語では意味不明なのだが、ヘブライ語で聞くと神を称える内容になっているという。
(3)墓を守ってきた沢口家の家紋は、ダビデの星が変形したものである。(六角形ではなく五角形なのは、恐れ多いという理由でひとつ減らしたものらしい)
(4)生まれた子供を最初に屋外に出すとき、額に墨で十字を書く習慣があるなど、ユダヤ教にいわくありげな風習が多く残っている。

 館内では、「ナニャドヤラ」のビデオも見ることができる。確かに不思議な感じの歌なので、これは一見の価値はあると思う。他に、キリスト伝説のパネル表示やビデオ紹介、「大石神ピラミッド」の紹介などがあり、なかなか楽しめる場所だった。
 閑散としたところを想像していたのだが、この手のマニアには有名なスポットのようで、観光客は意外と多かった。土産に「キリストせんべい」を買いたかったのだが、残念ながら売店が閉まっていたので買えなかった。



大石神ピラミッド

大石神ピラミッドの太陽石
上大石神ピラミッド頂上からの眺め
 キリストの里公園を後にして、新郷村のもうひとつのスポット、大石神ピラミッドへ。国道をそれてすぐに未舗装の細い山道になり、対向車が来ないことを願いながらしばらく進むと、やがてピラミッド前に到着。駐車場はなく、道がやや広くなったところに3台ほど車が停まっている。停められるのはせいぜい5台程度だが、こんなところを見物にくる物好きはそうはいないだろうから、この程度で十分という気もする。
 竹内文書によれば、日本には数万年前のピラミッドが7基あるという。そのひとつが、この大石神ピラミッドである。
 さて、そのピラミッドだが、エジプトにあるようなピラミッドを想像してはいけない。日本にあるピラミッドはいずれも自然の山を利用したものなので、エジプトのピラミッドのように一目瞭然というわけにはいかないのである。
 山の頂上や稜線に巨石が規則正しく配置されているのが日本のピラミッドである。ここも、太陽石、方位石、星座石、鏡石などの名前がついた岩があるのだが、どうもイメージがつかめない。確かに大きな岩があちこちにあるのだが・・・。想像力が貧困なのかもしれない。
 少し先に「上大石神ピラミッド」という表示があったので行ってみたが、こちらは山の斜面をかなり登らないといけなかった。ようやく巨石までたどりつくと、そこが山の頂上になっていて、見晴らしはなかなかいい。こちらの方が、ピラミッドの頂上という感じはするのだが、やはりイメージがつかめない。しばらく景色を眺めていたが、釈然としない気分のまま、ピラミッドを後にした。もっと想像力があれば、さらに楽しめたかもしれない。
 その後、新郷村中心部で土産の「清酒・キリストの里」を買ってから、八戸へ戻り、列車でむつ市へ向かった。

(2000.5.5)