両極端のブルックナー7番

 晦渋で荘重でともすると冗長に感じられるブルックナーの中ではこの7番はフレーズが
馴染みやすいこともあり、4番の「ロマンティック」とともに比較的人気がある曲なのだ
ろう、昨年は朝比奈隆とアーノンクールの二人ほか何点かCDが発売された。私もこの曲
は好きだ。「銀河英雄伝説」の戦闘シーンにもこれの第1楽章が使われていた。(ちなみ
にあのアニメには他にもいろいろなクラシック音楽が”わざとのように”使われていたの
は何故なんだろう、制作にマニアックな人でもいたのかしら?)

 朝比奈隆の指揮するこのブルックナーの7番がレコード及びCD化されるのは今回で9
度目になるそうだ。9度目ですよ。まだ満足しないんだから90歳にならんとする朝比奈
翁の矍鑠たる様には瞠目する。(朝比奈隆は1908年生、録音当時89歳)私もザンク
トフローリアンでのライブ、じゃんじゃん盤、一昨年の大フィルとのライブそして今回の
東京都響とのライブと4種類持っている。同じ曲を同じ指揮者で何種類も持っているのは
この朝比奈のブル7とフルトヴェングラーのベートーヴェンの9番くらいだ。
 朝比奈のブルックナーは荘重だ。いつも重々しくゆったりとまるで巨艦が出港して行く
ように曲が始まる。今回も地鳴りのような低音で始まる。そしていつもの求心力で我々を
ブルックナーの世界へ引き込んで行く。一昨年の大フィルとのライブは金管が出過ぎてい
たので(これが大フィルの特徴なのだが)少々うるさくて辟易させられたが今回はその様
な事もなかった。この都響とのCDはザンクトフローリアンと双璧をなす名演と思う。

 アーノンクールに関しては私は長いこと偏見を抱いていた。それというのも6,7年前
にアムステルダムコンツェルトヘボウを振ってシューベルトの5番と9番(グレート)を
を演奏したときにどちらもCだったこともあって5番はまだしも9番に至っては退屈もこ
こに極まるようなものであった。出来も良くなかったのかも知れない、本人が機嫌が悪そ
うで、まともにアンコールに応えようともしなかった。そんなこともあってアーノンクー
ルはずっと「どうでも良い指揮者」だった。それが偶々NHKでベルリンフィルを振って
ブラームスの1番を演奏するのを聴いたところこれがなかなか良かったので少しは見直し
ていくつか聴いてみることにした。ブラームスやドボルザーク、コンツェルトヘボウとの
ブルックナーの4番などである。どれもなかなか侮れない。そして今回の7番である。
 初手からウィーンフィルの音がする。何とも甘くてふくよかな弦の響きがウィーンフィ
るである。アーノンクールはウィーンフィルを活かしきって美しい弦に副旋律をゆだねて
蕩うように演奏して行く。過去の偏見はまさに偏見であった。
 いつものように荘重で厳粛な自分の世界を築いて行く朝比奈とウィーンフィルの特性を
活かして音楽を構築したアーノンクールの2人のまるで正反対のアプローチだがそれぞれ
が優れた演奏であったのは音楽というものの不可思議さである。

 参考CD ブルックナー、交響曲7番

    朝比奈隆指揮、東京都交響楽団(ライブ) CD番号:FOCD9132(フォンテック)
    ニコラス・アーノンクール指揮、ウィーンフィル(ライブ)
                        CD番号:3984-2488-2(TELDEC)

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