随想録『パラボラ・アンテナ』
★P−108
「人は生まれながらに平等である」という思想は、至福の思想であるが、同時に不便な思想でもある。
では、成長してゆくいつの間に、人は不平等になってしまうのか、誰にも説明できないからである。
「人は決して平等には生きられない」というのも一つの思想である。
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この世は多くの偶然から成り立っている。
この世のあらゆる偶然は体験できる。
しかし、この世のすべては理解できない。
この世は体験が全て。理解はほとんど及ばない。
だから、人はとかく偶然を信じたがる。
たとえそれが迷信であろうと。
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−−迷信とは、偶然の一致をきちんと説明する方法である。
ジャン・コクトー
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「現世否定、来世志向」、何と言う愚かな思想だろうか。
私にはとても信用できない。
人間にはもともとこの世に生まれてきた崇高な目的などない。
だが、崇高な目的を強制する怪しげな思想が、人間を「現世否定」で誑かし、「来世志向」の自爆テロを唆す。
しかし、人間にとってこの世がすべてであり、来世など何の意味もない。
来世がないことを、人間は自らの宿命として受け入れなければならない。
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人間はどんなに強靭な神経の持ち主でも、死に直面したときは正常ではいられない。
極限状況では、とりわけ麻薬や幻覚剤を使って自己の鋭敏な神経を封じ込めようとする。
アフガニスタンは世界のケシ栽培の八割を占めるといわれる。
それがタリバン組織の資金源となっているが、それ以上に注目すべきは、自爆テロの実行犯が死に直面したときそのアヘンを使っていたのではないか、という疑いである。
かつて、日本の神風特攻隊員も、死の恐怖から遁れるために、酒や薬物を使っていたという事実がある。
現世を否定する薬物で神経を麻痺させて、あの兵士たちは、あのテロリストたちは敵艦に肉弾で突っ込んでいったのである。
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人間は誰も自分がいつどこに生まれてくるか、選ぶことができない。
私の誕生日は、1951年5月3日、それから五十年がたった。
私は戦争を知らない。戦争に狩り出される兵士の愚かさを知らない。
少なくとも私が生まれてからまだ一度も日本は他国と戦火をかまえたことがない。
これは私の人生にとって一番誇るべきことではないだろうか。
だから、私はただひたすら私が死ぬまで日本が戦火に巻き込まれないことを願っている。
私は終生断じて兵士という愚かな肩書きを与えられたくはないのだ。
人間は、男共は、これ以上血を流して愚かさを証明する必要がどこにあるのか。
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人間は総じて賢い。
だが、時として愚かである。
人間は愚かなまでに賢い。
文明を生み出すほどに賢い。
戦争を引き起こすほどに愚かである。
人間はいつも賢くいつも愚かでもない。
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世界からテロリストを根絶する唯一の方法は、宗教を禁止することである。
世界中のテロリストは、必ず自らの信じる宗教的正義を盾にする。
あらゆる宗教を禁止して、その盾を無意味にしなければならない。
あなたは無宗教の恐ろしさに最後まで耐えられるだろうか。
しかし、その恐ろしさに耐えられなければ、あなたは到底テロリストに打ち勝つことができない。
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