随想録『パラボラ・アンテナ』
★P−32
コンピュータ・ネットワークの100年後は見当がつかない。
バイオ・テクノロジーの200年後は予想もつかない。
しかし私は、文明の未来を無謀にも予言してみよう。
電波のネットワークや生命のテクノロジーは驚異的に発達するだろう。
しかし、人類は未来に希望を失って、刹那主義に陥ってゆくだろう。
ネットワークやテクノロジーの究極に、人類の目的が啓示されているわけではないということが露わになるからである。
電波と技術の洪水が、地球の裏側の他人の存在をくまなく教えてくれる。
しかし、他人の存在をどれほど大量に詳細に知ったからとて、結局自分にはつまらない存在であることが明白になる。しかも、全人類的に。
他人の存在を知ることが、他人の考え方を知ることが、自分にとって無意味であると悟るのである。
それは他人も自分もやがて死ぬ運命だということを否応なく再確認するだけである。
全地球を知ること、全世界を知ること、それが実はニヒリズムを知ることに他ならない。
全体を知ることは、結局自分が無意味であることを知るのである。
未来に希望がもてなければ、人類は総体的にどうなるのか?
残された道は、刹那主義、日和見主義、オブローモフ主義である。
その未来に、科学や生命工学の天才が1人や2人生まれても、焼け石に水であろう。
先端知識やその優越感は、もはや人を文明の未来に駆り立てる力を喪っている。
コンピュータ・ウイルスや未知の病原菌は、不滅の悪魔のように人類の未来を脅かすだろう。
人はもはや未来を目的にして生きる意味を見いだせない。
むしろ、多くの人は、死ぬべき理由を必死になって未来に求めるようになる。
おそらくそこには、未来を際限なく悪用した宗教が栄えるだろう。
そうした文明の未来が、私には影絵のように見えるのである。
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−−我々の先祖が生き延びるためにある合理的な技能を必要としたのはたしかだが、人間の脳は合理的な器官というよりは宗教的な器官に進化した。合理的な科学への関心は少数派である。したがって、最初の人間の脳は、外的世界に対して象徴的な意味を賦与するために進化したらしい。そして後になって科学というウイルスがその子孫の少数に感染し、もともとは他の観念を伝えるために進化した神経回路で栄えている。
ニコラス・ハンフリー 『魂の探求』
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「ホロコースト(皆殺し)」、恐ろしい言葉だ。
かつて地球の歴史で、6500万年前に恐竜ホロコーストが起きたように、人類ホロコーストが起きないという保証はない。
たとえそれが起きても、人類の仕業ではなく、自然の仕業であることを祈りたい。
肉食恐竜もいたが、恐竜自らが恐竜ホロコーストを招いたわけではないことは事実である。
しかし、劣悪な人類は、自らの手で人類ホロコーストをやりかねない。
そうなれば、人類は、地球の歴史で、救いようがない原始的な生命体に位置づけられるだろう。
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