花火降る夏 去年煙花特別多 the longest summer

☆☆☆☆☆ 乾いた映像、淡々とした人物描写、素晴らしい音のセンス。いうことなし。(99.07.25)


監督:フルーツ・チャン(1998)

99年7月のぴあフェスで公開された作品です。一般公開は2000年。

香港駐留の英国軍に仕えていた兵士たちは、中国返還に伴って仕事を失った。おりしも、香港は不況のまっただ中で、若くもない男が職安にかよってもなかなか仕事を得られない。ふらふらしている主人公をみて、両親は「弟を見習ってヤクザになれ」という始末。仕方がないので、弟の出入りしている組で運転手になるが、いまひとつ気に入らない。主人公は、かつて兵士仲間だった中年男4人と弟を加え、銀行を襲撃することにした。襲撃当日は大雨で、いざ銀行に押し入ろうとした瞬間、出口からまさに仕事を終えた銀行強盗と鉢合わせしてしまう。

フルーツ・チャンの香港返還三部作の2作目。ものすごく衝撃を受けました。

まずひとつは音。テレビ映像などがおおく入ることもあって、BGMはほとんどありません。トラムやバスの音などの生音(効果音かもしれないが)が主体で、ものを投げるところだけ、放物線を描くような”ひゅーん”って音が入るんです。すごく印象的になります。そういえば、『メイド・イン・ホンコン』でもテレビを投げ捨てるシーンがあったなあ。監督的には、ものを投げることに何かメッセージがあるのかも。

で、アンディ・ラウの歌ったエンディングテーマをどう絡めてくるのかなあと思っていたら、メロディラインだけラストでずーっとリフレインさせてる。そして、スタッフロールが入るところから、歌詞がのってくる。『始皇帝暗殺』みたく、いかにも付け足しって感じはしませんでした。こういうとこ、うまいです。

もうひとつは、人物の描き方。心理描写がぜんぜんありません。ただひたすら、人物の行動を追っかけていく。つかず離れず、この追っかけ方が、監督の視点なのでしょう。突き放すほど冷たくなく、転んだとき抱え起こしてやるほど優しくない。この関係が、人物描写にドロドロさを与えない要因なのでしょう。すごく乾いた映像、という印象を受けました。ラストまで、その乾いた視点のまま、突っ走っていきます。こういうところが、すごく新しい感じがするのかもしれません。(99.07.25)


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