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出演:ユイユエ・ミン、マクウァイ・ファン(115分)
少年チュンは香港の下町(おそらくモンコック)で家族やメイドと一緒に暮らしている。家は軽食屋をやっており、チュンが宿題をするのもお店の片隅。ちょっとボケかかったおばあちゃん、麻雀荘に入り浸りの母親、国際電話ばかりで仕事をあまりしないメイド、ヤクザにつきあいを強要されながらもかわしながらほどよく距離を置いている父親などが、いつもチュンの周りでわいわいがやがやしている。あるとき、食器洗いをしている少女リンに出会う。リンはチュンの父親の店の求人の張り紙をみてやってきたが、幼いからと追い返されてしまうが、こっそり自分の配達の手伝いに雇うことにする。リンの妹を連れて3人での配達やいたずらが始まる。ビクトリア湾を眺めていたとき、リンが7月1日を心待ちにしていると言う。香港返還の日がくれば、不法移民も香港から追い出されなくなるから。
チュンが仕事をさぼったのを知った父親は、チュンをしかる。チュンの兄がヤクザになったため、父親はより厳しくチュンを育てていた。チュンにはその親心は伝わらず、家出してしまう。程なく見つかり、リンとあうのも禁じられる。あの子は不法移民の子だ。
香港返還第3作。1作目では若者の止められない心情を勢いよく描き、2作目では目的を失った中年の中途半端にされた心の持っていき場のなさをそのままに描いてきたフルーツ・チャン監督ですが、この3作目では子供を通して、香港の未来を見通す目を描いています。
映画の中では、娼婦やヤクザと一緒に普通の人が普通に暮らせる香港は、一見すると差別のない平等な世界に見えながら、不法移民というだけで子供を一緒に遊ばせるのを拒むような差別意識が潜んでいます。でも、それは大人の世界の話。子供には、不法移民もヤクザも関係ありません。気に入らない相手にはおしっこジュースを騙して飲ませ、友だちとは親が反対しようが仲良くする。ただ、子供は自由だけれど、思慮の足りないところもあるので、ときとして間抜けなこともしてしまいます。不法滞在がばれたリン親子が護送されていくのをチュンは自転車で必死で追いかけます。自分の身体にあわない自転車を必死でこいで走っているうち、護送車と救急車を見誤って、大嫌いなヤクザが病院に搬送されるのに付き添ってしまうのです。救急車から降ろされるヤクザが、心配してくれるのはチュンだけだと勘違いしている傍らで、納得のいかないような笑顔を浮かべるチュン。護送車がどこに行ったか分からなくて困りながらも、人に感謝されたらうれしい。そんないくつかの表情が交じったような彼の顔は、いろんな意味で問題を含んだ今の香港と似た部分があるのかもしれません。
今回の映画では、監督は今までよりも人の感情に焦点を当てている感じがしました。前作の「ロンゲストサマー」では、かなり突き放した印象があったけれど、今回は丁寧に追っかけている感じ。台詞ではなくカメラの視点で気持ちが表現されているのは相変わらずですが、カメラと主人公との距離が(物理的にではなく)近いように受け取れました。それだけ、未来をつくる彼らの世代に期待する監督の心情の現れではないかとも思うのです。
かなりヘビーな政治的事柄をあつかっていて、ラストも決してハッピーではないのだけれど、観たものに心地よい印象を残すのは、チュン少年の元気な姿があるからなのでしょう。前作よりも、ずっと温かくたくましい作品でした。(00.01.17)
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