| そして事件は起こる 〜続「再び正露丸の日々」〜 先月の会報に、私はこう書いた。 【Shinが中学生だよー。どーするんだよー、ホントに。部活とか、いったいどうするんだ。ちゃんと自分で見て回って、仮入部して……ってできるんだろうか。】 我ながら「ダテにshinのハハを12年やってるわけじゃないよなー」と感心したのだが、まさにこの部分で事件は起こった。コミュニケーションのむずかしい子が、中学校の普通学級に入るのだから、きっと何かしら起こるだろうというのは予想している。みんなが一斉に動く授業カンケイはともかくとして、自分でやりたい活動を見つけて主体的に動かなければならない「部活カンケイ」が心配だったのだ。 いきなりビンゴである。4月15日に彼がやらかしたのは「仮入部バックレ事件」であった。その日は授業終了後「仮入部」が行われる予定だった。仮入部というのは、本格的に自分が入る部活を決める前に、興味のある部活に何日間か「お試し入部」する制度だ。日数は5日間。5日とも同じ部活に行ってもいいし、5つの違う部活を試しても構わない。とにかく仮入部をしたら「仮入部カード」に部長さんのサインをもらって帰ってきて、その日の感想を書く。だからその日からは、shinの帰りは遅くなるはず、だったのである。 ああそれなのに。4時50分、仕事の合間にリビングに来てみると、なぜかそこにはジャージ姿のshinがいるではないか。「あんた、どうして家にいるの? 部活は?」「ぶかつは、すいそうがくぶ」「吹奏楽部、行ったの?」「いった」「サインもらった?」「もらった」・・・しかし「仮入部カード」はきれいさっぱり白紙なのであった。彼は、仮入部に行くために、友だちの見よう見まねでジャージに着替えるところまではよかったものの、その後どこに行ってなにをしたらいいのかわからないまま、家に帰ってきてしまったようなのであった。 まったくアタマの痛いことである。とりあえずは担任の先生に手紙を書いた。「shinは仮入部をせずに、授業終了後そのまま帰ってきてしまったようです。悪気はなかったのでしょうが、どこに行ってなにをしたらいいのかがわからなかったのだと思います。明日も仮入部がありますので、明日の朝には本人に『誰かお友だちにくっついて、どこでもいいから仮入部をしてきなさい』とよく言い聞かせて出すつもりでおりますが、本人が夕方まで覚えていられるかどうか心許ないです。Shinがウロウロしていたり、帰りそうになったりしているのにお気づきになりましたら、お手数とは存じますが、一言お声がけいただけましたら幸いです……」 翌朝コッテリと「今日は仮入部なんだから、ひとりで帰って来ちゃダメだ」と言い聞かせたのを覚えていたのか、担任の先生が声をかけてくれたのか、友だちが誘ってくれたのか、翌日から彼は仮入部に行くようになり、残り4日間を吹奏楽部に通い詰めた。 「きょうは何やったの?」「ドラムやった」……「きょうは何をやった?」「チューバ吹いた」……そして5月1日。彼は吹奏楽部に入部届けを出した。本人は「ドラムをやりたい」と大張り切りである。5月3日には吹奏楽部の2・3年生が、地元商店街のお祭りで演奏を披露した。1年生も「見習」として駆り出され、ステージ横でサクラとなって拍手をしたり、ヨタヨタと打楽器運びを手伝ったりするshinの姿が見られたのであった。 きっと今後も、何かと「事件」は起こるのだろう。 しかし今はとりあえず、彼が入学前からのアコガレであった吹奏楽部に無事入部できたことで「ひとつ山越しゃ ほんだらっだほいほい♪」という気分のハハである。 |