| 再び正露丸の日々 3月24日、卒業式。14年度、学校のPTA役員だったワタクシは、なんと来賓扱いなのだった。Shinの卒業式だから緊張するのと、自分が来賓だから緊張するのとで、ガチガチになってしまう。しっかり正露丸(私にとっての万能薬)を飲んで学校へ行ったのだが、よっぽど緊張していたと見えて、受付で記帳するペンも震え、名前がヘタクソになってしまった。 来賓控え室に行くと、かつて市教委交渉でお世話になったK指導主事が。知り合いに会ったような気分でうれしくなって「おはようございます〜」ととびっきりの笑顔で挨拶してみたが、先方はうれしくなさそうだった(残念)。 来賓席の一番すみっこに座る。「卒業生、入場!」と声がかかるやいなや、どーしたものかブワーッと涙が出てきた。でも、他の来賓(K指導主事や、市議会議員や、自治会長さんや、近隣保育園の園長先生や)は、当たり前のことながら、泣いたりしない。ワタクシひとりが来賓席で号泣、というゆかいなことになってしまった。 来賓の議員さんが「中学生になったら、誰も助けてくれません」とスピーチ。だから自分の力でガンバリなさい、ということだったのだろうが、やや情緒不安定になっているワタクシは「そーか、中学生になったら誰も助けてくれないのか……」とブルーになる。しかし号泣したりブルーになったりしているハハをよそに、Shinは実に堂々とした卒業生ぶりだった。 卒業式が終わると、春休み。Shinの辞書に「タイクツ」の文字はない。ビデオを見ていたりCDを聴いていたり、防音室にこもってローローと歌を歌っていたり、ノートにせっせと何かを書き込んでみたり、Shinはえらく充実した春休みを過ごした。しかしハハは春休みの間、ずっとブルーであった。心の片隅に、いつも暗雲のカケラがある。Shinが中学生だよー。どーするんだよー、ホントに。部活とか、いったいどうするんだ。ちゃんと自分で見て回って、仮入部して……ってできるんだろうか。各教科の先生に提出物なんか指示されたって、ハハは把握できないぞ。翌日の持ち物だって、担任の先生がまとめて黒板に書いてくれるわけじゃなし。ああ、Shinは無事に中学校生活を送れるのか…… ブルーなキモチは、入学式の朝にピークに達した。入学式は卒業式と違って、練習がない。Shinよ、オマエは大丈夫なのか??? 例によって正露丸を3粒、しっかり飲んでおく。 身長は165センチを超えて、すっかりオヤジ顔。前夜、自ら入念に洗面所でヒゲを剃ったShinは、まるで3年前から中学生であったかのように制服がよく似合った。というより、いままでランドセルが似合わなさすぎたのかも知れない。 学校に着いてハハが受付をしているあいだに、Shinは人波に乗って、どんどん昇降口の方に行ってしまった。おいおい、自分が何組だかわかってるのか〜? と追いかけようとしたが、まんまと見失ってしまった。不安がつのるハハ。 でも、入学式が始まるとちゃんと、1年2組の先頭に立って(出席番号が1番なのだ)入場してきたので、おそらく無事に自分のクラスにたどりついたのだ……と思う。いや、ぜんぜん無事じゃなく、世間様にご迷惑をかけ倒した挙げ句かもしれないが。しかし、人波に紛れ、周りの人に紛れて行動するのが、Shinはものすごくうまくなった。何をやっても人のカタマリから逸脱していて、一目で「あっ、Shinはあそこにいる」って分かる時期もあったのに。 入学式では、ひとりひとり名前を呼ばれて、呼ばれたら返事をして、立って、礼をするのだったが、Shinはそれも、ソツなくこなしていた。周りの子は緊張しまくっていて、きちんと前を向いて座っているのだが、Shinは興味の赴くままにキョロキョロしている。特に背後で吹奏楽部の演奏が始まると、気になって気になって後ろばっかり見ているのだ。 ともあれ、入学式は無事に終わった。彼の担任は20代の女性で、理科の先生だ。翌日のスケジュールについて説明をしている最中、何を思ったかいきなりShinに「ねえ、先生何歳に見える?」なんて振るのだ。ウロタえたShinが「あ……あ……36歳!!」と叫び、先生落ち込み。「女性に"何歳に見える?"と訊かれたら、とりあえず"18歳"と答えとけ」としつけておけばよかったと思ったが、後の祭りである。 先生は、みんなが生活ノートを書いている間、しばしばShinのそばに寄っては「ここに書くんだよ」「ひらがなでもいいよ」と声をかけてくれていた。少しホッとする。 会報の原稿依頼があったので書きはじめてはみたが、なにせ、まだ「渦中」なのである。今からうまくいくともうまくいかないとも、何もわからない。どうかワタクシをそっとしておいてください、と心からお願いする次第である。正露丸の差し入れ歓迎。 |