障害者プランに思う

「ご隠居、ご隠居」
「なんだい八つぁん、きょうもまた騒々しいじゃないか。おまいさんは落ち着きがなくていけないよ。ほれ、これをぐーっと」
「ごくごくごく……なんだい、水ですかい」
「あたりまえだ、おまいさんに酒なんか飲ました日にゃ、もっと騒々しくなる」
「ちぇっ……ところでご隠居、見ましたかい。市の障害者プラン」
「おお、見た見た。たいへんためになることか書いてあったな」
「そうですかい。まあ、ご隠居がおっしゃるんならそうかもしれねぇんですけどもね。どうもあっしは、うさんくせぇ気がしてならねぇ」
「こりゃおだやかじゃないね。どうしたい」
「あっしが思うに、あの“交流”ってヤツがあやしいんじゃねえかと」
「どこがあやしいんだい。交流とは互いに入り交じることだ。いいことじゃないか」
「ご隠居が持ってんのは、角川の字引ですね」
「ああ、あれは夜になるとうるさくっていけない」
「それはいびきですよ。ご隠居がボケてちゃ困るねどうも。あっしがもってんのは、新解さんの第三版なんですがね」
「そりゃ古いね。新しいのを買いなさいよ」
「いや、字引ってなぁ古くっても用が足りちまうもんですから、ついつい……。で、その新解さんによれば、交流ってのは“異なる組織・系統に属するものの間に、人の行き来や交渉が行われること”ってんですけどね。」
「そりゃまた、当たってるようなひねくれてるような」
「わざわざ“交流”“交流”ってでけぇ声で言わなきゃなんねぇのは、元来“異なる組織・系統”にいるからなんじゃねぇかと」
「ばぁさん、長屋の連中集めておいで。八っつぁんがが演説はじめちまったよ。長生きはしてみるもんだ」
「まぜっかえさねぇでくださいよ。うちのガキは、よく糊屋のばぁさんとこにちょっかい出しに行きますけど、わざわざ“交流”なんてこたぁいいませんよ。それを老人と子どもの交流だの、障害児と健常児の交流だの、なんか前提が違うんじゃねぇんですかい。はなっからいっしょにしときゃあいいんですよ。わざわざ“交流”って銘打つのは、本来別々にしとくもんなんだって意識があるんじゃねえかってね」
「新解さんもひねくれてるが、おまいさんも相当だね」
「ああ、食パンにぬったくるピーナツクリーム」
「それはソントンだよ……って、苦しいオチだねどうも」

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