土地の境界を測量して図面を作成する作業においては、境界点に丸や四角の記号を作図することが多い。これらの記号を俗に「杭マーク」と呼ぶ。
測量用のCADなら杭マーク専用のコマンドを備えていて作図も編集も簡単なのだが、JWの場合は円コマンドや矩形コマンドなどを駆使してマークを表現することになる。よく使うマークを図形登録などしておけば若干の利便性は確保されるが、そもそも汎用2次元CADであるJWでは、このように表現された杭マークはあくまでも線データ・円データなどが集まったものであり、かねがねいくつかの点で不便に思っていた。
境界線はマーク中心に結線しなければ正確に表現できないが、そのままでは印刷時に見苦しいのでマーク内に突き出た境界線を伸縮しなければならず、数が多いと結構な手間である。それ用の外部変形で一括処理すれば良いのだろうが今のところこれだというものが見当たらない。
そもそも線を伸縮してしまうと実際の境界点から線端が離れてしまうことになり、三斜求積の外部変形が動作しなくなるなど、のちのち不都合なことが多い。
線データ・円データ等の塊なので、移動や複写の際に範囲選択するのが大変である。込み入った場所での選択作業はストレスが溜まる。(マークをブロック化すれば多少は楽になるとはいうものの)
また、結線された境界線ごとパラメトリック変形できれば楽なのだろうが、先に境界線を伸縮してあると線端が変な位置になって使い物にならない。
マウス右クリックでreadされる対象は、実点・線端・線交点など。例えば四角に十字といったありがちな杭マークではreadされるポイントが9箇所もあり、それが狭い範囲に集中している。 マーク中心に結線したつもりが、実はマークの角に結線されてしまったというような事故が頻発するため。じゅうぶんに拡大して作業しないと間違いを起こしやすい。
それとは逆に、単純な円マークでは中心点をワンクリックで取得できない。通常はクロックメニューの右AM3:00「中心点」を用いることになるだろう。
杭マークというは図上寸法が決められているのが普通だが、編集の途中で縮尺変更すると杭マークのサイズが変わってしまうので、結局は編集をやり直さねばならない。
登録図形から呼び出す場合でも図形サイズは縮尺に連動するため、配置の際には縮尺を考慮して倍率を計算せねばならない。
このように、測量図作成においてJw_cadで杭マークをどのように表現したらよいのか、これまで長年の課題であったわけである。
そんなある日、何気なく本家掲示板を覗いていたら聞きなれない用語が目に付いた。「点マーカ」である。
Jw_cadのバージョン履歴には出てこないし、メニューを片っ端から開けてみてもそのようなコマンドは見つからないのだが、「点マーカ」・「杭マーク」と語感が似ているせいか、なんとなく解決の糸口がここにありそうな気がしてきた。
そこで「点マーカ」について詳しく調査したところ以下のようなことがわかってきた。
なるほど、これなら使えそうだ。希望の光が差してきた。
あいにくjw_cadの基本コマンドでは作成できないので、線記号変形データを作成するところから始める。外部変形でも良いが線記号変形のほうが手っ取り早いのでJW_OPT4.DATに記述されている説明を元に、単純な白塗りの丸のデータを作ってみた。
#杭マーク
99
999
0 白丸
00 00 0 0 1 0 30003 -1 -1 c 3
999
で、これを線記号変形で実行してみると無事に画面上に配置されたので、以下、点マーカについて幾つかの実験を試みることにする。使用したJw_cadは2004年10月3日公開のVersion 4.03gである。
まずは白丸のマークが境界線を覆い隠してくれるかチェックしたい。
事前の準備として、作業が混乱しないように基本設定>一般(1)の「逆順描画」のチェックが外れているのを確認した。その下の行のチェックボックスはソリッド図形の描画順にしか影響しないので、これは関係無かろう。
さてどうか。いろいろ試してみたが、どうしてもマーク内に線が突き出てしまう場合がある。どうやら線を先に描いてあとからマーク描けば覆い隠してくれるようだが、先に描いた線を移動したり属性変更したりすると(内部データの登録順が変わるのか)マークの上になってしまう。きっちりと上下関係を意識して作図するのは困難な作業である。
結局、「基本設定」の描画順をいくらいじっても関係ないことがわかった。
ただし、印刷時の描画順はコントロールできそうだ。
印刷メニューから入ってプリンタの選択をした後の画面で、「カラー印刷」のチェックを入れたうえで「出力方法設定」ボタンを押してみる。
するとプリンタ出力形式のダイヤログが現れ、左上に二つ並んだボタンで出力順を切り替えられるようになる。
上のボタンを「レイヤ順」、下の方を「出力順無」(線色)に設定してみた。
(あらかじめ「カラー印刷」にしておかないとボタンが押せないので要注意)
そうしたうえで、今度はレイヤ1に境界線、レイヤ2にマークを記入するようにして、印刷イメージを見る。 印刷設定では上位のレイヤが下位のレイヤを覆い隠すはずである。果たして無事に境界線がマークの内部に突き出して見えることが無くなった。
このように、レイヤの上下関係さえ意識して製図するようにすれば従来のようにいちいち線伸縮をして見栄えを整える必要が無い。これだけでも大収穫というものであろう。編集時の見え方が印刷の出力順に連動してくれれば作業しやすいだろうが、作者様にお願いするものアレなので当分の間気にしないことにする。
さて、マーク中心をreadしずらい点は改善されるだろうか。試しに丸い形の点マーカの中心点を右クリックしてみたらちゃんと拾える。円データで作ったマークならさらにワンアクション必要だったのがこれなら格段の便利さ。 どうやらJwでは実点と同様な振る舞いをするようだ。
念のため四角い点マーカを配置して四角の角を右クリックしてみても拾わなかった。これなら不要なポイントをreadして困ることがないだろう。
また、点マーカは図上寸法が固定されているらしく縮尺を変更しても表示サイズが変わらない(*1)のがうれしい。これからは縮尺変更を恐れずに編集作業を続けられそうだ。
なんと、今まで不便だと思っていたもろもろが点マーカで解消されたのである。これならJw_cadも測量専用CADを凌ごうというもの。今後は点マーカを積極的に活用して楽しいCADライフを満喫しようと思う。(なんじゃそれ?)
さて、現在私が実用に供している線記号変形データを紹介したいと思う。よく使う杭マークをデータ化したもので、参考資料として役立てば幸いである。
私自身の利用形態と作図環境ではうまく作図できているが、他の条件ではうまくいかない場合もあるだろうし、Jwの将来のバージョンで仕様が変わる場合も有りうる。単なるサンプルデータなので利用・改造・流用は御自由であるが、質問・要望等は一切受け付けないので御留意いただきたい。
JW_OPT4Z.DAT ←これをダウンロードしてJWWフォルダに入れればよろしい。ファイルサイズが小さいのであえて圧縮はしていない。
JWWフォルダにすでに同一名称のファイルがある場合は、ファイル名を変更する("Z"の部分を別のアルファベット1文字に置き換えてほしい)。
ところで、SXF仕様では点マーカの標準サイズが2.5mmと決められているのだが、マークの入力時にはmm単位で大きさを指定できるようにしたい。サンプル線記号変形データはあえて0.4倍の倍率で作製し、1倍=1mmとなるようにした。
さて、サンプルの利用において留意すべきことがある。
まず、SXFでは丸や四角といった単純なマーカーコードしか用意されていないので、測量で良く使う「丸に点」や「四角に十字」などは苦肉の策として複数の点マーカを重ねて表現している。 重ねたマーカーは同一レイヤに書き込むようになっているため、編集作業中に何らかの拍子で作図順が逆転して、「四角に十字」のはずが「白い四角」で印刷されてしまうことも有り得るのでご注意いただきたい。
また、白塗りの三角形はSXFでは定義されておらず、残念ながら透明な三角形しかない。サンプルの三角点マークは透明な三角形で便宜的に作製したものなので下の線を覆い隠すことができない。
SXFとは(財)日本建設情報総合センターが策定しているCADデータ交換標準フォーマットである。マーカーコードの仕様についてJw_cadの作者様にあれこれ要望するのはお門違いというものだろう。
興味のある方はこちらから資料(PDF)をダウンロードしてほしい。
Jw_cadで扱う点マーカコードは、SXFでいうところの「マーカコード」と矢印の先端形状を表すための「矢印コード」を合わせたものらしい。Jw_cadではこれらを一元的に扱うため、コード番号が重複しないように、SFXのマーカコードにマイナス値を設定している。以下にSXFのコード表を示すので参考にしていただきたい。
サンプルでは複数の点マーカを重ねて表現しているものがあるが、それぞれの点マーカは便宜上同一線色で同一レイヤで書き込まれるようになっている。これらを範囲指定して重複整理を行うと、同一位置にある重複した実点として処理されるため、重なっているマーカーが消えてしまうので御注意いただきたい。
jw_cad 4.10では解消されている(2005/09/01)