前年に快走したクラークとロータスが,今年も快調だった. 今年のタイトルもクラークとロータスが取るのではないかと誰もが思った. しかし,その通りに事は運ばなかった.
中盤戦から突然フェラーリが復活した. 第5戦イギリスGPまで,コンストラクターズ・選手権は10ポイントの第4位だった. そこからいきなり3連勝し,第8戦イタリアGPではランキング・トップになってしまった. それ以降は,優勝はできなかったが表彰台は確保し,フェラーリはコンストラクターズ・チャンピオンになった.
ドライバーズ・タイトル争いは最終戦メキシコGPまでもつれた. タイトル獲得の可能性あるドライバーは3人いた. 1位G.ヒル(39ポイント),2位J.サーティース(34ポイント),3位J.クラーク(30ポイント)という順位だった.
スタート直後,逆転王座には優勝しかないJ.クラークが飛ばした. 彼が優勝した場合,G.ヒルとしては3位以上を確保しなければタイトルを獲得できない. ところが,序盤のG.ヒルは出遅れていた. L.バンディーニと3位争いをしていた彼は,ついに接触し,遅れてしまった. 後は天に任せるしかない.
後半になり,J.クラークはやはり快調に走っていた. チャンピオン候補の一人であるJ.サーティースは,そのころ4位を走っていた. チャンピオン獲得には2位以上が欲しかったが,今となっては叶いそうもない. しかし,異変が起きた. J.クラークのロータスからオイルが漏れ始めた.
ファイナルラップ,タイトル獲得間近だったJ.クラークのマシンはついに停まってしまった. これでD.ガーニー,L.バンディーニ,J.サーティースの順位となった. フェラーリが2位と3位だ. そして,J.サーティースは2位が欲しい. 今のままでは,G.ヒルがタイトルを取ってしまう. “L.バンディーニ,スロー”のサインがピットから出された. 間に合った. L.バンディーニがサインを認識した. そして彼はチェッカーを3位で受けた. こうしてJ.サーティースがドライバーズタイトルを獲得した. それは,かつての2輪チャンピオンが4輪までを征する瞬間だった.