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名探偵はなるのではない、存在であり意志である――勤め先の二階に事務所を構えた名探偵巫(かんなぎ)弓彦に出会ったわたし・姫宮あゆみは、”真実が見えてしまう”彼の記録者を志願した……。猛暑の下町、雨の上野、雪の京都で二人が遭遇した、哀しくも残酷な三つの事件。(文庫より) 北村薫の作品は、トリックの妙というよりも、もっと地味な部分。物語の中にひっそりと紛れ込んでいる人々の存在や、ほんの何げない場面の心に染みるような描写にこそ真価を発揮していると思います。変な表現の仕方かもしれませんが「純文学とエンターテイメントの融合!」なんて感じてしまうこともしばしばです。 で、この作品なんですが。 また、作品中に登場する探偵コンビですが、名探偵である巫弓彦の存在感が非常に薄く、とって付けたように事件を解決するあたり、ちょっと拍子抜けの感がなきにしもあらず……。 なんて、けなしてしまいましたが、実はこの作品、同じ作者による「円紫シリーズ」と設定が似すぎているんですね。こちらも中年の落語家円紫師匠(探偵役)と女子大生の<わたし>というコンビで、事件が起こるたびに、円紫師匠か難問題をさらりと解決する。で、いいんですねぇ、この円紫師匠が。言葉のひとつひとつに含蓄があって、<わたし>が信頼を寄せている理由もよくわかる。 私自身がこちらのシリーズを大好きなものですから、「冬のオペラ」を読むとなんだか肩すかしをくらったような気になってしまうのです。あるいは、読む順番が逆だったら、もっと違った感想を持ったかも知れませんが。 というわけで、北村薫の作品自体は、私は高く評価しています。でもって、もしもまだ一冊も読んだことがないという方がいましたら、ぜひぜひ「空飛ぶ馬」「夜の蝉」「秋の花」の一連の円紫シリーズを読んでみて下さい。心にじんわりと効いてきますよ。
(00.12.01)
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