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これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴の言葉は香子の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた二人。アメリカ人でも難関の司法試験にパスし弁護士事務所でホープとなった治貴。二人の夢は次々と現実となっていく。だが、そんな幸福も束の間……。感涙のラストシーン。(文庫紹介文より) タイトルに惹かれて手をのばした作品です。てっきり若い男女のラブ・ストーリーだとばかり思っていたのですが、小さな女の子のいる若夫婦のお話なんですね。 が、この夫婦。まったくもって所帯臭さというものがありません。若い頃にはかなりの苦労をしたはずなのに、その欠片もなければ、今までの年月が醸し出す二人だけの空気といったものもありません。 なんというか、全編を通して非常に嘘くさい話です。ポール・オースターが好きな私ですから、作品すべてにリアリティを要求したりはしませんが、それでも主人公の感情の揺れが焦点であるこの作品の場合、これはちょっとまずいんじゃないの?って思います。 この作品を絶賛する人もいるようですが、結婚して、専業主婦の経験があって、なおかつ小さな子供のいる人なら、この展開は絶対納得がいかないと思います。ようするにきれい事すぎるんですね。ちょっと極端な例ではありますが、タレントの大澄賢也と小柳ルミ子の泥沼の離婚劇を見ても、世の中はそう甘くはないゾってとこだと思うんですけどね。 まぁ、そんなこんなであれこれと白けてしまう部分があったものですから、自他共に認める涙もろい私が、ラストシーンはついに泣かずじまいでありました。イルミネーションに彩られた幻想的なクリスマス・ツリーとこの綺麗な話を融合させたかったのだろうとは思いますが、何もクリスマスでなくても良かろうに、という感覚だけが残りました。 個人的趣味ではありますが、やはりクリスマス関連の話には何らかの「奇跡」的要素が欲しいと思います。日本人的感覚で言うならば、年末の仕事納めの日の職場。多少やっかいな問題や問い合わせがあっても「えぇ、今年はもう終わりなんで、年が明けたらご連絡いたします。そういうことで、はい。来年もよろしくお願いいたします」と言いさえすれば、すべてが許されてしまいそうなあの雰囲気。クリスマスってのは、あれにちょっと近いような気がします。 クリスマスだから、これくらいいいよね。クリスマスだから、こういうことだってあるよね。クリスマスだから、なんだかわからないけど、すべてオッケーだよね……。 人々が、知らずしらずのうちに優しい心になるシーズン。クリスマスの物語ってのは、こういう所から始まって欲しいなぁ、と思うわけです。 と、散々けなしてしまいましたが、物語の展開が気になって最後まで一気に読み切ってしまったことは事実です。決して退屈な話ではありません。読んだ後心に残りはしませんでしたが、平均点以上の作品だろうとは思います。 (00.09.22)
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