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連作短編集だとばかり思っていた。 鉄瓶長屋を舞台にした人情物語。住人達ひとりひとりの日常にスポットをあてながら、読者を飽きさせない程度にミステリの味付けをほどこした物語。時間つぶしに読むのに手ごろな長さと内容の物語……。 そんなことを思って読み始めたのだけれども、これがまぁ、何とも良い方向に期待を裏切られた。 連作短編集だとばかり思っていたら、途中から一転。これが長編の、しかもかなり骨太の推理小説だと知ることになる。知った途端、ひとつひとつが独立しているとばかり思っていた長屋の住人たちの騒動が、わっと一箇所に集まって、その勢いのままに読者を物語の中へと引っ張り込む。 その見事な展開といったら、さすが宮部嬢とうなるばかり(~_~;) ただし、推理部分そのものは、決して出来がいいというほどのものではない。標準のやや上といったところか。すべての謎がとけてもなお、どこかしっくりいかないものが胸の奥にくすぶり続けてしまった。いつもの宮部嬢の、まるで上質の手品を見るかのような鮮やかな物語構成を知っている者としては、あとちょっと!と思わずにはいられないのだ。 それでも、推理部分の弱さ(弱いと言っても、標準以上ではあるのだが)を補ってあまりあるのが、個性豊かな登場人物たち。ひとりひとりが皆生き生きと、しかも力強く描かれている。現在とは遠く隔たった江戸時代の話だというのに、読んでいるうちに、馴染みの生活を垣間見ているかのような、そんな錯覚さえ覚えてしまう。 時代物というと、どうしてもとっつきにくい印象があるのだけれども、宮部みゆきの描く時代物は決してそんなことはない。たまたま舞台が江戸時代だっただけ、たまたまそこが長屋だっただけ、たまたま……、その程度の違いにしか思えなくなって来るのだ。 そうして、いつしか鉄瓶長屋のお徳を、同心の平四郎を、差配人の佐吉を、ページを繰りながら懸命になって応援している自分に気づいた。 爽やかさと、ほんのちょっぴりのほろ苦さとが混じりあったラストにたどり着く頃には、そこで物語が終わってしまうのが本当に惜しくて、そのまま お徳にくっついて行って、もう少し物語の世界にひたっていたいような、そんな気分にさえなっていた。 |
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