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When We Were Orphans(翻訳:わたしたちが孤児だったころ
カズオ・イシグロ著 ★★★☆☆

アヘン取り引きに絡んでいたイギリス人ビジネスマンの父親が上海の自宅から突然姿を消したとき、9歳のクリストファー・バンクスは友だちのアキラと探偵ごっこに夢中だった。「中国人街のうさぎ小屋のような路地で追いかけっこや殴り合い、撃ち合いをしたあと、詳細は違っていても決まって必ず、ジェスフィールド公園での壮大な儀式で探偵ごっこは締めくくられた。その儀式で僕たちは、一段高くなった特別ステージにひとりずつ上り…拍手喝采を送る群衆に向かって挨拶するのだった」

次いで母親までもが行方不明となったクリストファーは、イギリスへ送られることになる。2つの世界大戦に挟まれた時代を彼はそこで過ごし、やがて「自称」有名な探偵になる。しかし家族を襲った運命が彼の頭から離れることはなかった。クリストファーは懸命に記憶をたどり、両親の失踪に何らかの意味を見出そうとする。そして1930年代末、彼はついに上海に戻り、自分の人生において最も重要な事件の解決に乗り出すのだった。しかし調査を進めるにつれ、現実と幻想との境界線は次第にあいまいになっていく。彼の出会った日本兵は本当にアキラなのか。両親は本当に中国人街のどこかに監禁されているのか。そして、何か重要な祝典を計画しているらしいグレイソンというイギリス人の役人はいったい何者なのか。「まず何よりも先にお聞きしたいのはですね、儀式の会場をジェスフィールド公園にすることでよろしいかということです。なにしろ、かなり大きなスペースが必要となりますのでね」

『When We Were Orphans』でカズオ・イシグロは、犯罪小説の伝統的な手法を用いて、少年時代のトラウマが落とす影から逃れられないでいる困惑した男の心情を感動的に描き出している。シャーロック・ホームズは推理の際、泥のついた靴や袖についた煙草の灰といった断片的な証拠で事足りた。しかしクリストファーに残されたのは消えゆく遠い昔の記憶だけ。彼にとって、真実はもっとずっと捕らえ難いものだった。小説は一人称で書かれているが、クリストファーの慎重に抑制された語りには冒頭からほころびが見られ、彼を通して見る世界が必ずしも信頼できないことを暗示する。そのため読者は、自らもまた探偵になることを迫られ、クリストファーの記憶の迷路を真実のかけらを求めてさまようのである。

イシグロはもともと派手な弁舌に走る作家ではない。しかし、この作品に漂うもの静かなトーンは、かえって強く感情を揺さぶってくる。『When We Were Orphans』は見事なまでにコントロールされた想像力の傑作である。そしてクリストファー・バンクスは、著者の創造した人物のなかでも、最も印象的なキャラクターのひとりと言えるだろう。(C)Amazon.co.jp

なんともまぁ、ややこしい本を選んでしまった──というのが、今の率直な感想。
英文が難しいとか、ストーリーがひねくれているとか、そういうことではない。「さて、感想を書こう!」そう思ったときに、何をどう書いたらいいのか、非常に迷ってしまうのだ。

物語の細部にまで注意を払い、文学的な解釈をあれこれ並べたててみれば、それなりに体裁の整った感想が書けそうな気もするのだが、そういうのはあまり趣味ではない。あまり深いことを考えず、さらさらと物語が流れるままにまかせ、そうしてある種、直感的に感じたもののみを感想として取り上げるほうが、私の性格に似つかわしい。

けれど。
この作品に関しては、そういう直感に頼った感想を書き上げると「読み手として底が浅いなぁ」と言われそうで、何だかひじょーに不安なのだ。当たっているだけに、余計に辛い。

辛いのだけど、やっぱり思ったままを書いてしまおう(~o~)

と、いささか前置きが長くなってしまったが、この作品、一言で言うならば、面白くない。さすがイシグロと思わされる丁寧な描写はそこここにあったが、肝心の主人公であるクリストファーは人間的魅力に欠けていて、最後の最後まで感情移入することが出来なかったし、ラストも悲劇でこそなかったが、だからといって、希望に満ち満ちたものでもなく、長いことクリストファーとともに物語の中を右往左往してきたこちらとしては、不完全燃焼の思いだけが、ぶすぶすと燻り続ける結果となってしまった。

物語終盤、クリストファーを取り巻く世界が怪しい色合いを帯びてくる。それを称してAmazon.co.jpの書評では「幻想」という言葉を使っているが、幻想というにはいささか中途半端。現実と幻想の境界線が揺らぐかのような危うさが、今ひとつ伝わってこない。というよりむしろ、小説自体が破綻してしまったかのような印象さえ受ける。けれど、こちらとしては「よもや、イシグロがそんなことをするはずかない……」という思いがあるものだから、今まさに壊れようとしているのは、クリストファー自身なんだろうか??などと、無理やり物語の中に整合性を見出そうとしつつ、先を読み進めるという、何やらおかしな読み方になってしまった。

失踪した両親を探し求め続けずにはいられなかったクリストファーの姿は、悲しくもどこか滑稽だ。そうして、私たちもまた、クリストファーと同じようにして、逃れることのできない何ものかに引きずられるようにして生きているのだと思ったら、どんよりと重たい気持ちになってしまった。

人生を深く考えたい方は、読んでみてもいいかもしれない……。(2002.10.21)

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