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東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な殺人事件。殺されたのは「誰」で「誰」が殺人者だったのか。そもそも事件はなぜ起こったのか。ノンフィクションの手法を使って心の闇を抉る宮部みゆきの最高傑作がついに文庫化。(文庫裏表紙より) 「火車」で直木賞を逃した宮部みゆきが、翌年この「理由」で直木賞を受賞。 実際、ネットで見かける書評にもあまり芳しいものは多くはない。 確かにノンフィクション(ルポルタージュ)の手法をとって語られていくこの作品は、いつもの宮部作品とは違って幾分とっつきにくい。外堀を埋めて行くかのように、関係者たちへのインタビューがなされていくのだが、最初のうちは、何が何だかわからないまま、とにかく読み進める形になってしまう。ルポの形式を取っているため、文章自体もいつもより硬質だ。ひとりひとりの人間の、その生い立ちや家族、人々とのかかわりあいを丁寧に、丁寧に描写して行くそのスタイルが鬱陶しく感じたのも事実だ。 けれども、物語を読み進めていくうちに、やや敷居が高いと感じられた文体も全く気にならなくなり、先へ先へとページを繰ることになった。 ひとり、またひとりと登場人物たちの生きて来た様が語り進められて行くたびに、ぼんやりとしていた物語の輪郭が次第に鮮明になって行く。ラストのどんでん返しだとか、犯人捜しのスリルを求めるミステリ物とは趣の異なるこの作品だが、見えなかったものが徐々に見えていくその過程は、犯人を捜し求めたときに得る快感に近いものがある。 実際にあった事件を元に、競売物件にまつわる問題点を指摘しつつ、家族のひずみを描いた物語云々といった話はこの際どーでも良い(笑)。市井に生きる人々を、当人に感情移入するという形ではなく、ルポという一歩ひいた形で見事に描写しきった点に、そうして作品そのものの構成の妙に、私はただただ圧倒され、そうして久々の満足感を覚えた。そのことだけでもう十分(^^)(2002.08.26) |
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