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何不自由なく豪商の娘として育った少女・珠晶(しゅしょう)は先王の歿後、荒廃した恭国を憂い自ら王となるため蓬山(ほうざん)を目指す。侍女の衣を失敬し家を抜け出したものの騎獣をだましとられ、苦難の末に辿り着いた蓬山には自らを恃(たの)む人が溢れていた。だが、最後に麒麟が跪(ひざまず)いたのは……。十二国供王誕生への遠大なる旅の物語!!(文庫裏表紙より) 十二国記シリーズの唯一の欠点として、読み終えた瞬間は「あぁ〜、面白かった!」と思えるのに、その後時間の経過とともに印象がどんどん薄れていってしまうというのがある。しかし、この作品にいたっては、心の底にしっかりと何かが根を下ろしたような気がする。 まわりの大人たちがだらしないから、私が王になるのだと言って、蓬山(ほうざん)を目指す少女珠晶は、最初はただ単に小ざかしいだけの女の子にしか思えないのだが、読み進んでいくうちに、その少女の内側には確固たる信念があることに気づかされていく。時として、子供特有の直球勝負の言動があるのだが、それがかえって心地よい。裏表、分け隔てのない性格と、負けず嫌いの性格……、生意気なだけのことはあるな、そう思わされた時には、珠晶が無事にたどり着きますように、と願っている自分がいた。願いながら、私も珠晶のように強くなりたいと、そう思った。 もしも珠晶が十二歳の少女ではなく、もっと年かさの行った女性だったなら。きっと「そうだよね、私もがんばろう」などと素直に思うことはできなかったろう。理想ばかりを掲げた嫌な奴とさえ思ったかもしれない。 けれども、相手は十二歳の少女。彼女のまっすぐなところがいとおしくも感じられる。このあたりは、主人公に少女を持ってきた作者の技がさえている……と言っては言いすぎか。私自身は、人物造形の妙といい、構成の巧みさといい、小野不由美はやはり只者ではないな、と今回の作品を読んで、よりいっそうその思いを強くしたのだけれども。(2002.05.07) |
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