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定年ゴジラ/重松清/講談社文庫 ★★★★☆

開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を捜す四人組の日々の哀歓を温かく描く連作。「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版。(文庫裏表紙より)

初めて読んだ重松作品です。
それにしても、文章が上手いです。安定した文章力、しっかりとした物語展開。危なっかしいところが少しもないため、安心して物語の世界に心を泳がせることができます。

そろそろ我が家も転勤かな、それとももう半年はここに住むのかな?といった、落ち着かない日々の春先。そんな時に読んだものですから、私の不安定な心の中に見事この作品はすっぽりとはまってしまいました。

定年退職をしたものの、その先の人生を見つけられずに、宙ぶらりんな心持ちの主人公たち。35年ローンを組んでやっとの思いで手に入れた我が家は、終の棲家でありえるのか。滑稽とも言える軽快なテンポで描かれて行く彼らの姿は、それゆえにそこはかとない哀しさを醸し出しています。

惜しむらくは、山崎さんの奥さんがやや紋切り型だったこと。家庭の主婦にだって、それなりに悩みや苦労はあるものですが、山崎さんの奥さんにはそういったところは全く見あたりませんでした。大地のような包容力を持つ、完全無欠の女性……、まあ、男性諸氏の理想像なのでしょう。

それはさておき。
「夢は叶ったのか」
そう自問自答する山崎さんの姿には、思わずこちらの胸までが熱くなりました。

自分の人生をふと振り返りたくなった時、ほんのちょっぴり弱気の虫が頭をもたげた時、自分のいるべき場所はここではないんじゃないかと思った時……。この本をぜひ手にとってみて下さい。流行のビジネス書のように、大きな活字の簡単明瞭な答えは提示されていませんが、じわじわと効いて来ること間違いなしです。(2001.03.13)

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