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人質カノン
宮部みゆき 著/文春文庫★★★★☆

今回は、文庫裏表紙の引用はなし。
というのも、この紹介文、完全にネタバレしておりまする。う〜ん、もう少し気をつかって欲しいものだ。この意外性があるからこそ、生きるシチュエーションなのに……。

さてこの短編集。
作品によって出来にばらつきがあるのだけれども、印象的な作品がいくつかあったので、トータルで見れば十分にお薦めに値する短編集に仕上がっていると思う。

中でも私が気に入ったのは、自分を裏切った男を殺すために運転免許を取得したという女性が登場する「十年計画」、祖父の過去を調べて行くうちに、生きることの意味を見出して行く「八月の雪」、飛び降り自殺しようと深夜の街をさまようOLといじめられっ子の小学生との交流(冒険)を描いた「生者の特権」の3作品。

近頃「ここで泣かせよう」「ここで感動させよう」という作者の意図がありありの小説をよく見かける。確かにその部分で泣いてしまうのだけれども、泣きながらもどこか釈然としない思いを感じていた人は、案外多かったのではないだろうか。

宮部作品にはそういったあざとさが全くといっていいほどない。にもかかわらず、何気ないちょっとしたシーンでホロリとさせられる。油断していた時に、そういった文章にぶつかると「おっ、やられたな」と思うと同時に「やっぱり上手いな」と感心する。そうしてこの感動や感心がある限り、私はやっぱり宮部作品を読みつづけるんだろうなぁ、なんて、そんなことを「人質カノン」を読みながら考えた。(2001.12.27)

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