フクの癲癇(てんかん)発作の記録
最初は真ん中に1本だけだった止まり木
だけど飼い主がよく見えるカゴの隅っこにずっと立っているので
その場所に居られるよう、もう1本止まり木をつけたのでした
■□■ はじめに ■□■
1羽の白文鳥が事情があって里子に出され、一人の鳥飼いさんが仲介して
とある鳥専門病院にひきとられました
その時既に10歳 見目麗しく立派な体格をしていましたが
決して若いとは言えない年齢です
引き取られてほどない頃、友人と私は、偶然その鳥専門病院に診察に行きました
顔を合わせた途端に言われた言葉 「倫子さん、文鳥いらない?」
いきなりだったので、とても驚きました
友人が一緒なのを見て、先生は更に言葉を付け足しました
「○○さんでもいいんだけど」
どうしてこの白文鳥が、ここに引き取られてきたのかの話を聞きました
理由は「それなら仕方がない」と思わざるを得ないものではありました
長年慣れ親しんだ家を離れ、病気の鳥が来る「病院」という環境の悪い場所に住み
ずっと手乗りとして暮らしてきたのに
今後はカゴから出して貰えず、カゴの中だけの生活を送るであろう事を想像すると
とても侘びしい気持ちになってしまったのでした
そして本音としては、友人でも私でもいいから引き取って欲しいという
その先生の言い方にも、何だか憤りに近い感情が引っかかっていたのも事実です
飼い続ける気持ちがないのなら、仲介者に打診された時に
断っていればよかったのですから
右から左へとたらい回しにされる文鳥 人間の子供なら虐待扱いです
イキモノである以上、鳥だって同じです
うちには余り丈夫でないぴぃと、甘えん坊で我が侭なちゅるという2羽の先住鳥がいました
しかも、この二羽は決して仲は良くない ケンカが絶えません
そこにもう一羽加わったらどうなるかしら?
一応落ちついて暮らしているぴぃとちゅるにも、ストレスが掛かるだろう
狭い我部屋に、もう一つ増えるカゴの置き場所は?
年齢が高いから今後の病気の心配もあるし、その分だけお別れも早く来る
また病気の治療や看病に耐えられるだろうか?医療費の負担も掛かる
何より、別れの悲しみを早くに味わうのは辛い…
すごく迷いましたが、私はどうしても残して帰ることができませんでした
結局、色々な事を覚悟で引き取ってきたのです
後から聞いた話によると、病院にいた期間は1ヶ月もなかったとか
この白文鳥には、帰りの車の中で、友人が「大福」という名前を付けました
通称は「フク」 呼びやすくてこの子らしくて気に入っています
案の定フクは王様気質で、ぴぃとちゅるとは、なかなかうまくいかない日々が続きました
世話も1羽増えただけとは言え、無精者の私にとっては負担でもありました
それでもなついてくれるようになると、やっぱり情が湧いてきます
本心から「連れてきて良かった」と思えるようになりたい
フクにも「連れてこられて良かった」と思って欲しい…そう願っていました
フクは徐々に我が家での生活に慣れてきましたが
1つだけ「?」な事がありました
時々、夜中や明け方に、カゴの中でバタバタと暴れるのです
何かの物音がして驚いたのだろうか?疳の虫?
ある日カゴから出して手の平に乗せると「ひゃーひゃー」とか細い声で鳴きました
その頃の私は「文鳥がこんな怯え方をするなんて」と思っていたのです
そう、フクはその時点で既に癲癇持ちだったのですが
引き渡し時に病院で異常なしと言われていたので、まさか病気だとは考えもしませんでした
そして2002年の7月末、うちに来て5ヶ月が過ぎた頃
ついに大きな発作を起こしました
今までは少し暴れるだけだったのですが、この日は一晩中暴れ続けました
痛いはずなのに、カゴの金網にぶつかり続けるフク
カゴの外に出すと、今度は部屋中を飛び回って壁にぶつかってしまう
しかたなくキャリーに入れて枕元に置き、暴れて自身の体をキャリーに打ち付けるたびに
落ちつくまで声を掛けて宥めていました
そして翌朝、ついにはっきりとした神経症状があらわれたのです
止まり木から落ち、小刻みに震えてうまく動けなくなり、ついには痙攣…
今から思うと、里子に出された事、引き取られた病院で落ちついたと思ったら
またすぐに環境が変わってしまった事
元の家では思い通りに過ごせていたのに、先住鳥のいる家に来てしまい
我慢しなければならない部分がそれなりに増えてしまった事…
短期間のうちに生活の全てが変わり、ストレスが溜まっていたに違いありません
それがきっと、この時の大発作を引き起こした原因だったのでしょう
その日から長い長い闘病生活が始まりました
病院に通い続け、あれこれたくさんの薬をとっかえひっかえ試しました
感染症対策、脳血栓対策、抗てんかん剤、偏頭痛の薬まで…
しかし、発作が収まる事はありませんでした
診断名もつかないまま、投薬と断薬、薬の変更の繰り返し
そして特に変化もなく、頻繁な通院が続いたのです
ある日先生が軽く言いました 「どうせ死なないんじゃない?」
「もう1羽痙攣を起こす文鳥がいたけど、病院には来なくなったよ」
ほかの飼い主さんが来てるか来てないかなんて、私には直接は関係ないこと
「どうせ死なないんじゃない?」って、どういう意味、それ?!
……。
この病気は何なんだろう?治すことは無理なんだろうか?本当に死なないんだろうか?
悩む事の多い日々が続いていましたが、ある日決定的なミスが発覚し
それがきっかけになって、決めかねていた転院を、きっぱりと決意しました
決意が遅すぎたんです もっと早くにセカンドオピニオンを求めるべきだった!
診察内容に段々と疑問を感じてくる事が増え
散々質問しても、解決策や治療方法の転換に繋がるような返事は殆ど返ってこなかったのに
何故、1つの病院のみに通い続けてしまったのでしょう?
もし自分が病気になって同じ状態になったら、すぐに他に良い病院がないか探してます
なのに…今回は完全に飼い主のミス 優柔不断すぎました
先輩の鳥飼いさんにも勧められて行った病院では、すぐに診断名が出ました
癲癇(てんかん) 恐らく先天性のもの
文鳥には比較的多い病気だそうで、だいたい5歳前後で発症するケースが多いとか
完治はしない病気です
抗てんかん剤と呼ばれる薬はありますが(いわゆる向精神薬の一種です)
あくまでも発作と発作の間隔を開け、回数を減らすのが目的
しかも、どの薬が合うか、どれくらいの量(濃度)で効果が出るか分かるまでに
手間や時間が掛かって大変に難しい上、薬の副作用も大きめなのです
投薬量が適切かどうかの判断は、血中濃度を調べる事で分かりますが
犬や猫等は可能でも、文鳥サイズの鳥だと血液を採取しての反復検査は無理に等しいです
また、一度飲み始めたら、飲み続けるのが基本だと言われています
止める場合は少しずつ減らしていかないと、却って大きな発作を誘発する原因に
なってしまう場合があるという、とてもリスクの大きな薬です
今まで何種類かの抗てんかん剤を試して効果がなかった事から
(徐々に減薬という指示はなく、いきなり処方が終わったり
急に薬が変更になったりしていたので、発作が起きていたのかも?)
転院先の先生は「また抗てんかん剤を飲ませてみるという方法もあるけれど
今までいくつか飲ませてダメだったのなら、効かない可能性の方が高いと思う
それなら負担の大きい薬を飲ませるより、サプリメントで基礎体力をつけ体調を整え
癲癇の発作に耐えられる体を作っていくほうが、この子にとっては良いでしょう」
病気についての丁寧な説明の後、そうおっしゃいました
私は即座にその判断を選択する事に決めたのです
文鳥という小さい体のイキモノは、基本的にMRIやCT、脳波の検査はできません
現在一カ所だけ、ハムスターサイズでも検査できる機械を持っている病院があるそうですが
麻酔の必要があり、検査費用も非常に高額という、2つの大きな問題があります
これらの点から、高度な検査は一般には現実的ではありません
ですから癲癇(てんかん)という診断は、先生の臨床経験から出された結論です
犬や猫、人間のように、必要な検査をして100%確定できた上での診断結果ではないです
しかし、そういった形でも、はっきりした診断名を告げられて、私はうれしかった
曖昧にしたまま「どうせ死なないんじゃない?」と言われるくらいなら
その先生なりの診断名と治療方針をきちんと示された方が、ずっとずっといい
癲癇(てんかん)とはっきり言われるまでの約1年4ヶ月間は、本当に辛かったけれど
今は余計な迷いや不安もなく、気持ちに余裕を持ってフクと暮らせています
分からない事があれば、その都度掛かり付けの先生と相談して、どうするかを決めています
もちろん発作は収まることなく、習慣的に続いていますが
最近は徐々に症状が軽くなってきていますし、QOLもアップしていると感じてます
ここから先の記録は、本来は私的な防備録のつもりで作ったものです
発作が起こる度に、小さなメモ帳に時刻や症状の記録をつけているのですが
深夜や明け方に発作が起きる事が多く、少し寝ぼけているのと
フクの様子を観察しつつ書き込むので、汚い字で殴り書きになっています
このままだと後で読み返しても分からなくなりそうなので(笑)
当時の日記とも照らし合わせて、きちんとした記録にしようと思い立ちました
癲癇(てんかん)の原因や経過、症状はそれぞれ違います
この記録はあくまでも「フクの場合」です
でも、もしあなたの飼っている文鳥さんが不審な痙攣を起こすようになり
何の病気か分からないとか、癲癇(てんかん)が疑われた時には
ヒントになる部分もある「かも」しれません
1個体の事例を載せることは、時には情報の混乱をまねく事もあるのは承知しています
だけど、一生付き合っていかなければならない病気の辛さを知っているがゆえ
フクに起こった事を、書き残しておきたいと思ったのです
いつか、癲癇(てんかん)が不治の病でなくなる日が来ますように…
フィンチのような小さな個体でも、安全に高度な検査が受けられるくらい
鳥の医学・医療が進みますように…
2004年3月現在のフク 発作が起きる時もあるけれど元気元気!
止まり木は今も2本ですが、普通に平行に取り付けてます