特性曲線を描こう
NIFTY-ServeのFPHOTOSに投稿した、特性曲線ワークショップ(講師: 比田井一良さん)のレポートをもとにして書きました。このワークショップはメーリングリストPAFの活動のひとつとして、講師のお勤め先であるラボテイクさんの暗室をお借りして行われたものです。
ステップタブレット このワークショップではコダックの#2ステップタブレット(Kodak Photographic Step Tablet #2)を使いました。これは21段階(ステップ)の濃度をもつフィルムです。ステップの番号が上がるにつれて、ステップタブレットは一定の濃度差をもって濃くなっていきます。
#2ステップタブレットは、それぞれのステップが、隣り合ったステップと0.15の濃度差をもつように作られています。ただし多少の誤差があるので、使用する前に各ステップの濃度を実際に測定し書きとめておく必要があります。キャリブレーションと呼ばれるその作業をメーカーがすでに済ませている製品のことを、濃度校正された(calibrated)ステップタブレットといいます。価格が高くなるので、普通は濃度校正されていない(uncalibrated)ものでよいでしょう。下の表は理想的なステップタブレットの濃度と、ワークショップで使ったステップタブレットの実際の濃度を比較したものです。
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この0.15の濃度差は、絞り段数の半絞りぶんに相当します。たとえば後ろからライトボックスで光をあて、スポットメーターのようなもので各ステップの明るさを測ったとすると、隣り合うステップの明るさの差は半絞りになるのです。
ライトボックスの上においた、コダックのNo.2ステップタブレットとコニカの濃度計PDA-85
このときのステップタブレットは、半絞りずつ明るさの違う光源の集まりであると見なすことができます。
感光材料(フィルムや印画紙)をテストする方法はいくつかありますが、段階露光を繰り返してまったく同じ試料をいくつか作り、それらを現像時間を変えて処理するという点では共通しています(リングアラウンドテストやゾーンシステムのテストを考えてみてください)。ステップタブレットを焼き付けるテストでは、わずか1回の露光で、フィルムや印画紙に21段階の露光量を与えることができるわけです。また、ステップタブレットをフィルムに密着させて焼き付けるため、カメラの光学系に関するファクターがテスト結果に含まれません。これは欠点のように思えますが、感光材料の素の特性を評価するのに適しているということでもあるのです。
濃度計(デンシトメーター) 濃度計は手に入れにくい測定器です。ラボテイクで使われていたのは、X-Rite社の濃度計の中でも非常に高価なものでした。私はPDA-85というコニカの透過濃度計をもっていますが、反射濃度の測定ができないのでやや割高感があります。スポットメーター濃度計のページには、スポットメーターに簡単なアダプターを付け、透過/反射両用の濃度計として利用する方法が出ていますので、あわせてご参照ください。
また、当サイトでは、濃度計をお持ちでない方のための濃度測定サービスも提供しています。ぜひご利用ください。
その他 30cmぐらいの定規、雲形定規、方眼紙、鉛筆、消しゴムなどは各自で用意して行きました。引伸機やデュープ用固定マスクなど、お借りしたものもいくつかあります。下文を参照してください。
テストフィルムの露光には、ラボにあるフジの6x9引伸機を1台、光源として使わせていただきました。ラッキーの引伸しタイマーと、安定化電源装置が付いたものです。
露光量の決定 以下は比田井さんに教えていただいた、フィルムテストの露光量を決める方法です。まず、引伸し電球が色温度の低いタングステン光源なので、フジのライトバランシングフィルターLBB-12をネガキャリアにはさみ、光の色をあらかじめ補正しておきます。
ISO100のフィルムをテストする場合、フィルム面での照度を8ルクス、露光時間を1秒とします。照度の測定には照度計を使いますが、ワークショップではEV値の読める入射光式露出計で代用しました。露出計に平面受光板を取り付け、台板上で引き伸ばし光の明るさを測るわけです。
露出計のEV値と照度の関係は、次のようになります。
2.5 x 2EV = 照度(2をEV乗して2.5をかけると照度になる)
したがって台板上の照度を8ルクスにするには、EVを約1.7にすればいいことになります(2.5 x 21.7 = 8)。台板上においた露出計がEV1.7を示すまで、レンズの絞りや引伸機の高さを変えて調整します。
フィルムの用意 暗室で、テストするフィルム(このときはTmax100の4x5シートを使いました)を箱から出し、ステップタブレットに密着させます。これにはI.S.E.製のデュープ用固定マスク(35mm用)を使いました。
デュープ用固定マスクに、乳剤面を上に向けてフィルムをセットします。その上に、ステップタブレットを乳剤面を下にして重ねます。つまり乳剤面どうしを密着させて露光するわけです。シートフィルムの角にはノッチがある(きざみがついている)ので間違えることはないでしょうが、暗闇の中でステップタブレットの表裏を知るのは難しいものです。ステップタブレットの角に小さく切り込みを入れておけば、作業が楽になるのではないでしょうか。
露光 フィルムとステップタブレットをはさんだデュープ用固定マスクを、引伸機のレンズの下におきます。タイマーを1秒にセットして露光します。ワークショップでは、このテストフィルムを3枚作りました。フィルムは用意していただいた4x5フィルムの空き箱に保管しました。
現像にはラボテイクの自動現像機を使わせていただきました。1台で35mmロールから8x10のシートまで現像できるものです。自動現像機内での作業の1単位を1ノッチというそうですが、ワークショップでは1ノッチを120秒にセットし、3ノッチ(360秒:6分)、4ノッチ(480秒:8分)、5ノッチ (600秒:10分)の、3 とおりの現像時間でフィルムを処理しました。
いうまでもありませんが、自分でテストするときは、自前の機材を使い普段の方法で処理することになります。下の写真は、現像の終わった3枚のテストネガを撮ったものです。
仕上がったネガの各ステップの濃度を測定し、その値を書きとめていきます。
上のような代表的な型の濃度計(写真はX-Rite 310TR)では、乳剤面を上にしてネガをステージの上に乗せ、発光部の十字の中央に測定するステップの画像を合わせます。受光部(アームの先端)を押し下げると濃度が表示されるので、その値を記録するわけです。結果は次のようになりました。
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特性曲線について 特性曲線は、露光と現像、そしてそれらの結果として生じる画像の濃度の関係を、グラフを使って表わすものです。縦軸に濃度、横軸には露光量をとります。濃度軸(縦軸)の値はグラフの下から上に向かって、露光量軸(横軸)の値は左から右に向かって増加します。
Tmax100のような普通のネガフィルムの場合は、下図のようなゆるやかなS字カーブを描きます。露光量の変化に対して濃度が直線的に反応するのが理想ですが、多すぎる露光や少なすぎる露光に対してフィルムは敏感に反応しないため、特性曲線には図のように肩と足と呼ばれる部分ができます。
また、直線部の傾きはコントラストを表わします。現像の度合が進むと傾きは急になり、コントラストが上がることを示します。
座標軸の目盛り付け ごく普通の方眼紙を用意します(私が使っているのは、コクヨのホ-19というA4判の方眼紙です)。これを横長に使い、まず下から1cmのところに鉛筆で露光量軸の線を引きます。次に左から1cmのところに濃度軸の線を引きます。
左下の交点から濃度軸に沿って5cmずつ上がったところにそれぞれ印をつけ、下から順に1.0、2.0、3.0の数字を書き入れます。つまりグラフの1cmは、濃度の0.2に相当することになります。これで濃度軸の目盛り付けは終わりです。
露光量軸は、ステップタブレットのステップナンバーで目盛り付けします。
まず、露光量軸の右端から3cm左のところに印をつけます。ここを基準の露光量、つまり先ほどの8ルクスで1秒の点とします。テストフィルムに与えられる露光量は、ステップ濃度の増加により、ここを起点として段階的に減っていきます。露光量が減るということは、グラフ上では左にシフトするということです。
前に述べたように、ステップタブレットの濃度が0.15上がると、テストフィルムに与えられる露光量は半絞り減ります。露光量軸をステップナンバーで目盛り付けすることができるのは、ステップ濃度と露光量のあいだに、このような関係があるためです。
ここでは濃度軸と同じように、グラフの1cmをステップ濃度の0.2として露光量軸を目盛り付けします。すると、基準点から各ステップまでの距離(cm)は、そのステップ濃度を0.2で割ることで求めることができます。では先ほどのステップタブレットの実測値から、その距離を求めてみましょう。
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基準点から各ステップまでの距離を求めたら、鉛筆で露光量軸の上にその位置を印し、ステップナンバーを書き込みます。ステップ濃度が正確に0.15ずつの差で並ぶのなら目盛りを等間隔でふればいいのですが、実際にはこのように、ステップ濃度のばらつきを目盛り付けに反映させる必要があるのです。
こうしてグラフの露光量軸に1から21までのステップナンバーを書き込んだら、それぞれの目盛りからネガ濃度に相当する距離だけ垂直に上がったところに点を打ちます。8分現像したテストネガですと、たとえばステップ14のネガ濃度は0.71になっています。濃度軸は1cmを濃度の0.2として目盛り付けしたのですから、露光量軸からこの点までの距離(高さ)は、0.71を0.2で割った、3.55cmになります。この点に、鉛筆で薄く印をつけるわけです。
このように、ステップタブレットの各ステップに対応するテストネガの濃度をプロットしていくと、グラフ空間には21個の点が現れます。これらを雲形定規で結んでいけば、はじめに図示したような典型的なネガの特性曲線ができるのです。
3枚のテストフィルムに同じことを繰り返して、1枚のグラフに現像時間の異なる3本の特性曲線を描きます。下が完成したTmax100の特性曲線です。下から順に6分、8分、10分となっており、曲線の傾き(コントラストを表わす)は現像時間の影響を受けることがわかります。
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