更新日 1999年 3月 9日 Japanese only

リングアラウンドテストの概要



 リングアラウンドテストは、コダックが推奨する、感光材料(フィルムや印画紙)のテスト方法です。むずかしい用語を覚えなくても「シャドーは露光、ハイライトは現像」という調子再現にとって大切な感覚を養えるので、黒白写真を始めたばかりの方にも安心しておすすめすることができます。

 手順はごく簡単で、次のようなものです。

  1. ひとつの被写体を、段階的に露出を変えて撮影する
  2. 1.とまったく同じフィルムを4本か5本か作る
  3. 2.でできたテストフィルムを、1本ごとに時間を変えて現像する
  4. それぞれのコマをプリントして、もっともよい仕上がりの得られる撮影感度と現像時間を調べる

 ガイドブックとしては、『コダック プロフェッショナル用 白黒フィルム』(日本コダック株式会社 DKP0056)があります。黒白写真全般に関するテキストとしてもたいへん優れたものですが、絶版になっているかもしれません。英語版の"KODAK Professional Black-and-White Films" (KODAK Publication No.F-5)ならまだ手に入るでしょう。コダックの出版物は、同社の製品を扱っている写真店(Qディーラーといいます)で取り寄せることができます。

 英語はどうも、とおっしゃる方もご安心ください。武田元彦さん(WWW)や西島朋幸さん(WWW)のページに、リングアラウンドテストの親切な解説があります。私もNIFTY-ServeのFPHOTOSにつたない文章を投稿したことがありますので、アカウントをお持ちでしたらデータライブラリ1の#423をご参照ください。

 なお、このコンテンツは当Webサイト独自のものであり、Phil Davisの"Beyond the Zone System"とは無関係であることをあらかじめお断りしておきます。文責はエディターの高橋にあります。


■ 始めの頃

 黒白のフィルム現像を始めたばかりの頃、私は粒子の荒れた、ハイコントラストのプリントを作りがちでした。原因は、適正な露光と現像が与えられた、よいネガから焼いていないことにありました。いいかえれば、フィルムの感度設定と現像時間のどちらか、あるいはその両方が正しくなかったのです。

 フィルムの箱に書かれた感度や、メーカーのデータシートにある現像時間は目安にすぎません。メーカーの研究室で行われているテストの条件と、ユーザーの現像条件は違っているのが普通だからです。つまり、よりよいプリントを作ろうと思うなら、リングアラウンドテストのようなフィルムテストを行って、自分だけのフィルム感度と現像時間を求める必要があるわけです。

 ここのところを、写真家の新川幸信さんはとてもうまく説明しています。

 原則的にいえば、ネガは焼ける限り薄いほうがいい。この焼ける限りといういい回わしは微妙だ。そのネガを作る人のプリント技術、そのフィルムに対して期待するコントラストなどで大幅に違ってくるからだ。

 そこで今回のタイトル、“適正ネガは崖っぷち”となる。露光不足や現像不足のネガは失敗で崖下に転落してしまう。落ちないためにはふちから離れるほど安全だが、安全なほど最高の画質という崖下の眺望は失われる。どの程度ふちから離れるか、どこまでふちに近寄るかはその人の技量の問題となる。

 自信がないときは撮影の露出をちょっとタップリ目にかけてやる。同じように現像のときも少し余分に押してやる。こうして露出オーバー、現像オーバーの真っ黒なネガにした経験はないだろうか。特に舞台のような露光の分かりにくい条件ではこのミスを冒しやすい。

 35ミリ判はやはり小型ネガなのだ。自信を持って切りつめ露光、切りつめ現像にしなければ、この画面サイズから最高の画質を引き出すことはできない。これが35ミリ判を実質上もっと大きなサイズに拡大するコツなのだ。

 なお、このタイトルを決めてから、コダックが適正露光で同じような表現をしていることに気がついた。だれもがいいネガを作るためにタイトロープを歩くような張りつめた気持ちでいるのだろう。
 
アサヒカメラ 新川幸信の新写真教室/連載2 崖っプチの切りつめ現像

■ 適正ネガは崖っぷち

 これは「適正ネガは崖っぷち」を表わしたものです(すさまじいイラストであるとはいえ)。

 Aのネガは露光や現像が不足で、崖から落ちてしまっています(ネガの薄さが限界を超えると画質は極端に低下する)。Bは露光過度、現像過度のネガで、安全ですが、よい見晴らし(画質)は望めません。Cは露光、現像ともに適正なネガです。危険をともないますが、最高の見晴らしが楽しめます。

 リングアラウンドテストは、新川さんの言葉を借りれば、「崖っぷちに対して間合いを測る」ための方法ということになります。


■ リングアラウンドについて

 リングアラウンドとは、段階露光したフィルムを1本ごとに現像時間を変えて処理し、次の表のように規則的に並べたものをいいます。

2絞り露光過度で
30%現像過度
1絞り露光過度で
30%現像過度
標準露光で
30%現像過度
1絞り露光不足で
30%現像過度
2絞り露光不足で
30%現像過度
2絞り露光過度で
15%現像過度
1絞り露光過度で
15%現像過度
標準露光で
15%現像過度
1絞り露光不足で
15%現像過度
2絞り露光不足で
15%現像過度
2絞り露光過度で
標準現像
1絞り露光過度で
標準現像
標準露光で
標準現像
1絞り露光不足で
標準現像
2絞り露光不足で
標準現像
2絞り露光過度で
15%現像不足
1絞り露光過度で
15%現像不足
標準露光で
15%現像不足
1絞り露光不足で
15%現像不足
2絞り露光不足で
15%現像不足
2絞り露光過度で
30%現像不足
1絞り露光過度で
30%現像不足
標準露光で
30%現像不足
1絞り露光不足で
30%現像不足
2絞り露光不足で
30%現像不足

 このようなデータでテストフィルムの露光と現像を行い、いちばん仕上がりのいいプリントが得られるコマを見つけます。それがあなたのシステムにあった撮影感度であり、現像時間なのです。(フィルムテスト編に続く)




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