06年2月26日 毎日新聞 滋賀版
日曜リサーチ 日本語の講師 学生通訳を小中に派遣…
県教委事業1ヵ月 外国籍児童・生徒 「気持ち分かるようになった」
滋賀県内で増える外国籍の子どもへの日本語や生活の指導を支援するた
め、県教委は先月十六日からポルトガル語やスペイン語が話せる大学生を、
通訳として公立小中学校に派遣する事業を始めた。一カ月余りがたって現
場の日本語講師からは「子どもの気持ちが分かるようになった」と歓迎す
る声が出ている一方で、民間の支援者からは「母語も併せて教え、アイデ
ンティティーに自信を持たせる教育も必要」との指摘もある。(滋賀本社
新里健)
個性や能力引き出すため
「母語教育を」の声
「縄跳びしながら私にぶつかってきたの」「この前たたかれたから」。
二十一日、米原市市場の大原小。日本語の授業の合間、ともにブラジル国
籍の女児と男児がけんかを始め、早口のポルトガル語で言い分を訴えた。
京都外国語大三年の塚田智恵さん(二三)は、二人の言い分を日本語講師
の冨田正子さん(三九)に伝えた。
冨田さんが「嫌がることをしちゃだめだよ」と男児を諭すと、涙ぐみな
がら「お父さんとお母さんは仕事で帰りが遅いから、一人でゲームをして
待ってるんだ」と話した。この児童は一月に編入したばかり。塚田さんの
通訳によって男児の置かれた状況を知った冨田さんは「彼も寂しかったは
ず。仲良くしたいけど気持ちがうまく伝えきれないのかも」と思いやった。
同小に在籍する外国籍の児童は九人で、全員がブラジル国籍だ。一昨年
十二月、学区内に人材派遣会社が経営するアパートが建って以降急増し、
本年度もすでに十人が編入、五人が転出した。
学生の派遣は、ポルトガル語やスペイン語を母語とする外国籍の子ども
が七人以上いる小中学校を対象にして始まった。日本語講師の冨田さんは
「授業の内容は身ぶりを交えて何とか伝えられるが、ポルトガル語が十分
に分からないので、子どもの気持ちをくみ取るのが難しい。通訳がいると
助かる」と話す。同様の感想を持つ県内の日本語講師は多い。
言葉の壁を取り除く取り組みが始まったのは一歩前進だが、教育内容も
精査すべきとの声もある。草津市で外国籍の子どもの支援に取り組むNG
O(非政府組織)「子どもくらぶ たんぽポ」によると、算数や理科は十
分理解できるのに、日本語が分からないために学校では学力がないと判断
される子どもが多いという。
スタッフの仲晃生さん(四〇)は「母語を並行して教えることで自分の
アイデンティティーに自信を持たせ、個性や能力を引き出す教育内容を考
えないと、日本の教育制度に適応させるだけで終わってしまう」と注文す
る。
【写真説明】ブラジル国籍の児童とポルトガル語で談笑しながら授業をサ
ポートする塚田さん(右)=米原市市場・大原小