それゆけマッキーシングル!!
ホーム 上へ 君が笑うとき 君の胸が痛まないように 君は誰と幸せなあくびをしますか 君は僕の宝物 SELF PORTRAIT UNDERWEAR PHARMACY Such a Lovely Place Cicada それゆけマッキーシングル!!

 


雨ニモ負ケズ
COWBOY

夏のスピード
まだ生きてるよ
Red Nose Reindeer
HAPPY DANCE
Merry-go-round

雨ニモ負ケズ」             いるか

「はぁぁ〜〜〜〜。。。」
大きなため息がでる。“ため息をつくと幸せが逃げるよ”なんていうけれど、もう、それ以前の問題だ。
今日発売された求人情報誌を投げる。はさめておいた赤エンピツが畳の上を転がっていった。止まるまで、ボ〜っと眺めた後、天井を見上げた。

「今週もいい所なかったなあ〜〜・・・。」と一人つぶやく。
天井を見上げたまま(本当にいい所、無かったか??)と問いただす。
(結局、いい所ってなんだろう?給料や待遇がいい所か?自分がしたい事?)
もう一度、端っこから求人案内を食い入るように見直した。
うっ・・・やっぱダメ。どれだけ妥協しても、やっぱり妥協し切れないところもある。条件が合わないところもある。
でも、思いっきり妥協して、ウソ固めて、そしたら就職先なんて沢山あるのだろうか?
(結局、自分は何がしたいのだろう??)
だんだんと解らなくなってくる。営業?事務?サービス業?どれも中途半端に興味があって、どれも中途半端に自信がない。こんなんじゃ、面接だって上手く行くはずがない。

そんな自分にだって、小さい頃からの夢があった。
『動物のお医者さんになりたい』
心意気は本物だったくせに、結局は自分の努力が足りなかった。今思うと、そこまでの気持ちだったのだろうか。それでも、必死に勉強してきた。いや、「つもり」になっていたのかもしれない。
でも、今の自分には獣医の資格も、動物に関連する資格さえも、なに一つ持っていない。通信制の学校に専門学校、行けるものならば行って勉強をしたい。今ならなんでも吸収できるような気がする。でも、結局はお金。

(本当にやりたいことを就職先に考えるのは無理だなあ、やっぱり・・・)

そんな事、とっくに解っていた。
それでも、いろんな事を経験していく中で、自分にも
『これが出来たらいいのに。』
と、勉強を独学で始めるきっかけがあった。
それは大学時代、接客のアルバイトをしていた時のことだった。
接客の仕事をしていると、本当にいろんな人間に出会う事が出来る。
その中で、自分の言葉がお客様に届かないことがたまにあった。
そう、日本語が解らない外国人。そして、聾唖者。
もどかしい。相手の言葉を理解したい。非力・・・。
それが、英語と手話を勉強し始めたキッカケだった。

結局、かじっただけでなんとなくしか身についていない。
今でもたまに本は開いてみるけれど“他にすることある”だの“明日からは・・・”だの、自分に甘えて何一つ進んじゃいない。
大学時代に取りたかった資格もあったけれど、これまた参考書をかじっただけ。やれ、“研究室が忙しい”なんて甘ったれてた事を言ってたっけ。
今でも、本棚には参考書が並んでいる。
“いつかは勉強するだろう”とか“自分への戒め”とか変な理由で捨て切れていない。気持ちばかりが膨らんでいって、体や精神がついていってない。

本当はこの中の一つだけでいいんだ。
『これだけは、自信があります。人に負けません。』
なんて胸を張って言えるものが、ただ一つだけでもあればいいんだ。
ううん、一つだけ、欲しい。
それを、あれもこれもと…。心が怠慢、肥満。
「しょ〜〜もなっっ!!」(苦笑)
本棚を見て苦笑いをする。
(自分に負けてるんだな。自分に勝つって難しいよな。それでも!)
ふとそう思うと、なんとなく、就職が決まり切らないのもわかったような気がした。少し、楽になったような気がした。

(自分に負けない…か。宮沢賢治だな(笑)そ〜いや、小学校の頃からなんかこの詩、好きだったっけ。雨ニモマケズ、風ニモマケズ・・・・もう一回読みなおして見ようかな。うん。)

鍵を持って、財布を持って、近くの本屋へ行って来よう。
宮沢賢治の詩集を買って来よう。
また、新しい自分をはじめる為に。

前略 宮沢賢治様

アナタハ ソウイウ ニンゲンニ ナルコトガ デキマシタカ?
ワタシモ ナルコトガ デキマスカ?
ソレデハ オカラダニハ クレグレモ オキヲツケテ 
マイニチヲ オスゴシクダサイ

                       草々 

 

COWBOY」                だんでらいおん

僕はその日、いつものように眠りについた。
そして朝、起きてみると…

外の景色がまるっきり変わっていた。
あるのはただ砂埃の舞う平原。あたりには何もない、そんな中に僕がいる。
「???ここはどこだ?」
あたりをとりあえずきょろきょろと見回す。
近くの木に、見慣れないスクーターが一台止めてあり、そこには僕のイニシャルが
記されている!

え?え?
カギは…ポケットを探ると出てきた。チョークがところどころへこんだような
おかしな形のキー。こんなので動くのだろうか?

とりあえず、誰か通らないか待ってみる。

ずいぶん時間が経って。
ここにいつまでもいたところで助けはやってきそうにない事を悟る。
いままで人はおろか、動物もみていない。考えた末、僕は進む事にした。
バイクの免許はある。スクーターくらいなら運転できるだろう。
僕はスクーターに乗り込み、キーらしきものを差し込んで回した。

音もなく、それは『浮き上がった』。
困惑する僕をよそに、スクーターは空を進んで行く。

青すぎるくらい青い空。まるで絵の具を流したような…
そう言えば海の青が反射して空が青いんだってどこかで聞いたな。
ここも海があるのかな………?
見たところ水のある気配すらないのに。

やがて。
よくSFに出てきたようなドームのついた街が見えてきた。
なんだか機械的な街だ。あるのはビルやタワーばかり。
ちょうど街の中央に、僕は降り立った。

「ようこそいらっしゃいました。…………………さんですね?」
後ろから不意によびかけられ、僕は『びくっ』とした。
なぜ僕の名前を知っているのだろう?
恐る恐る振り返ると、そこには女の人(?)が立っていた。
どうやらロボットかアンドロイドのような彼女は、手紙を差し出している。

差出人の名前はなかった。
『ようこそネーム:トライ=ハイへ。早く"僕"を見つけてね。』
?なんだ?要するにこの差出人を探せば何かわかるってのか?
「ところで君は?」
「COWGIRLです。ナビゲーターをしています。」
「じゃあ、ちょっと説明してくれないか。一体ここはどこなんだ?」
「わかりました。…………………さん。」
「いや……フルネームで呼ばれても緊張しちゃうんだけど…そうだな。
いつものHN…ビットとでも呼んでくれないかな?」
「ではビット。ここについて説明します。」

彼女から聞いた事によると。
このトライ=ハイにはちょうど四方に都市があるらしい。
僕らがいるのはノースシティ。
イースト、ウエスト、サウス。
そのどこかに、手紙の差出人…通称アゼットがいるらしい。


「こっちからは探せないのか?」
「無理ですね。彼は端末を持って歩いていないので…」
「ふーん。じゃあ、ちょっとくやしいけど、探しにいってみるか。」
「私はナビターミナルにいます。ここに呼び出しと案内がついていますから、
何かあったら使ってください。」
スクーターの真ん中の画面を指差し、手動運転に切り替えながら、彼女は言った。

「ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして。」



イーストシティ〜日の昇る街〜

はじめに僕が訪れたのは、イーストシティ。
ここは打って変わって、木造の…僕らが住んでいるのと変わらない町並み。
時折頭上にアンテナのついた赤いものが行ったりきたりしている。
「?」
僕は画面に手を触れ、情報を呼び出した。
「『Red Data Babies』。『Blue Data Babies』とともに
情報運搬を仕事とする。」

あ、だから行ったりきたりしているわけか。
心の中で納得すると、歩き始めた。

『彼は必ず一番高いタワーにいます。』
COWGIRLのその言葉を信じて、僕はタワーに向かう。

途中ですれ違うのは、ロボット達ばかりだった。
大きいもの、小さいもの。
あらゆる形のがいるのではないか。そんな気がする。

『イーストシティ・センタータワー』

僕はエレベーターに乗って最上階を目指す。
ついた場所にいたのは、白いロボット。
「おや珍しい。君は誰かな?」
まるでおじいさんのような、低くてしわがれた声。
「僕はビット。アゼットを探しているんだけど?」
「ここにはいないよ。他を当たってくれないか。」
「ほんとか?」
「嘘ついても得にはならないだろう?」
「まあね。」
「噂じゃ、西のほうに見た奴がいるって話だけどな。」
「ま、期待しないで行ってみるよ。」


ウエストシティ〜陽気なやつら〜

僕が次に着いたのは、まるで西部劇のセットのような町並み。
もう日も傾きかけている。どこか眠れる場所でも探すか…
歩いていると、不意に後ろから呼び止められた。
「おい、見ない顔だな。」
一瞬びくっとして振り返る。
またロボット。
ゆうに2メートルはあるだろうか。
テンガロンハットをかぶり、こちらを見ている。
「ここに始めてきた奴は、まず腕試しだ。ちょっとこい。」
「悪いけど、人を探してるんだ。」
「まあいいじゃねえか。急いでるわけでもないんだろ?」
否応なく引きずられていった先には、大小さまざまなビンが置いてあった。
「あれをこいつで打つんだ。」
差し出されたのは、おかしな形のリボルバー。

「その顔じゃ、初めて撃つんだな?よーし。一発でも当たったら…」

「何やってんだ?トリー。」
背は僕と同じ位だろうか。ちょっと華奢な体つきの、こちらもロボット。
「よう。COWBOYじゃねえか。いやあ、新入りをちょっとな。」
「またか?無理矢理つれてきたんじゃないだろうな?」
「いやあ…その…」
「………。」

COWBOYと呼ばれたロボットは、こちらを振り向いた。
「ごめんな。悪い奴じゃないんだ。…何しにこんなとこまで?」
「あの……アゼットを探しに来たんだ。」
「…ひょっとしてお前『ビット』か?」
「なんで僕の名前を……って、アゼットの知り合いなのか?」
「ああ。アゼットなら、サウスタウンの…まあいいや。一緒に行くか?」
「連れてってくれるのか?なら、一緒に行こう。」
「っていってもこれから行くと着くのは夜中だな…明日の朝にするか。」
「あいにく、泊まる場所が確保できてないんだ。」

「なーに。心配はいらねえよ。」
突然口を開いたのは、トリーだった。
「すぐ近くに俺のホテルがあるさ。かまわねえ、ただで使ってくれ。
今日はパーっとやるぞ!」
「いいのか?見ず知らずの奴に。」
「いいんだよ。ここで会ったのも何かの縁だしな。」

「新入りに乾杯!」
周り中ロボットだらけの宴が始まった。
おかしな事に、人間が飲むような普通の酒をみんながみんな飲んでいる。
酔っ払っている奴もいる。なんだかいつもの飲み会を思い出して、笑ってしまった。
「こいつらに付き合ってると体が持たないぞ。どうせ朝までのむんだからな。」
僕は『彼』と一緒に僕の部屋へ抜け出した。

「話を聞かせてくれないか?」
ふと、『彼』が漏らした。
「どんな話がいい?」
「なんでもいい。好きな話を。」
「そうだな…」

僕はいろいろな事を話した。
家族の事、友達の事、仕事の事。

お返しに『彼』も話をしてくれた。
ここのこと、アゼットの事、カウガールの事。

「なんだ。じゃあ、もうカウガールに会ったのか?」
「ああ…いい子だったけど…まさか?」
「そうだよ。付き合ってるんだ。」

僕らはすっかり打ち解けていた。気づいてみると朝だった。

「眠くないか?」
「全然。なんでだろ?」
「じゃ、行くか。」
返事の代わりに大きくうなずいた。

サウスシティ〜最後の、そして…〜

そして僕らはやってきた。
白い石造りの街…サウスシティ。
「あそこにアゼットはいる。行ってこい。」
指差されたのは、これまでで一番高いタワー。

エレベーターで登っていく。それにつれて僕の鼓動が大きくなる。

『やっと会えたね。』

僕は目を疑った。
髪の色以外は、僕とまったく同じ。
ここで初めて会った『人間』。

『ちょっとした旅だったけど、感想は?』
真紅の髪をした『僕』はいたずらっぽく笑った。
「悪くなかった…って、何の用で僕を呼んだんだ?」
『まだ気がつかないかな。ここは一体どこなんだか。』

………………。
ここ。ネーム:トライ=ハイ。
………………!
僕は思い当たった。ここがどこなのか。
『そう、ここを見せるために僕は呼んだんだ。
限りない可能性を秘めている君に知ってほしくて。』

たしかに、このごろへこんでたからな…

『さて、せっかく会ったけどお別れだ。』
「え?」

僕の後ろから、光が射し込んでいた。
その渦に飲まれながら、僕はこういった。

「また、会えるかな?」
『その答えは、君の中に。』


目が覚めた。
いつものベッド。目覚ましはいつもより30分前を指している。
「なんだ。夢か。でも、なんかリアルだったな。」

トーストと紅茶と目玉焼き。

僕は、今日もバイトだ。
「さて、行ってくるか。」
いつものバイクのキーを取って、エンジンをかけた。

―そこにはあのスクーターの鍵が、キーホルダーと一緒にくっついていた―

」                   果樹

 昨日のけんかは、ほんのちょっとしたことから始まった。
最初はお互いを気遣いながらの言い争いだったのに、次第に言葉は強みを帯び、
僕はすっかり頭に血が上ってしまっていた。そして、ふと我に返った時、
「悪いのは僕の方だ!」と気が付いたけれど、いまさら後にはにひけない状況になっていた。
 結局、僕は、引っ込みがつかなくなった意地で、むちゃくちゃな屁理屈を並べたて、
罪の無い彼女に頭を下げさせてしまっていた。
「よし、言い負かしたぞ!」と言う半ば勝ち誇った気持ちとは裏腹に、
心の中は言いようの無い罪悪感と、後悔でいっぱいだった。

 そこで僕は今日、ある作戦を思いついた。
「ちょっと高いけど、君のために奮発したんだよ。」って彼女の家を訪ねる作戦。
「前の日にいくらけんかしても、僕は君を許すよ。」って。
 きっと彼女は何も言わずに、僕を受け入れてくれるだろう。我ながらいい作戦だと思った。
 そして、僕は、‘桃’を買った。彼女の大好きな‘桃’を。
ただ、僕のうしろめたさをごまかす為に。

 ・・・僕は愚かだった。最低だった。・・・
 彼女は、僕が訪ねて来たことに笑顔を見せて喜んでくれた。
「ありがとう。昨日はごめんなさい。私あなたが来てくれてほっとした。」

 その笑顔にガツンと来た。(何をやってるんだ!)
僕は素直に謝ることもできず、そのうえそれを、見せ掛けの優しさで、もみ消そうとしていたんだ。
 手にしていた‘桃'はまるで、僕に利用された事で、その甘さを失うかのように香りを放っていた。
 僕は不安になった。

 〜彼女は気づいているのだろうか? この僕の愚行に。
  彼女はどうして嫌わないのだろうか? こんなズルイ男を。〜

 しかし、またしても僕は彼女に救われる事となった。
「この桃いいにおいだね。でも、3つだから1つは半分こだよ。」
彼女の明るい声がキッチンから届いた。
 
 僕は、彼女の当たり前すぎた優しさを今更になって身にしみて感じた。
僕はいつも、自分の事ばかり考えていた。自分の願いばかりを押し付けていた。

 情けない僕は、彼女を、彼女との幸せを、もっと大事にしたいと、こんな些細な事からだけど、強く思った。
     やわらかい‘桃'をつぶしてしまわぬよう、
              もっともっと甘く香るように。 

 

夏のスピード                    まほ

“浮気するなら別れるべきだよ”
いつか交わした言葉が背後に来たのは今日のような日。
雨のにおいが残る柔らかな夕暮れだった。

いつもの場所で重ねる時間は永遠だと信じてた。
「・・・ほかに、他に好きな人が出来たの」
流れゆく景色を止めたのは君の静かなブレーキ。
受け身など取れるわけも無かった。

「どういうコトだよっ!」
ノラ猫みたいな後ろ姿と言われた時みたいには怒れなかった。
気付いたら、ただ君を抱きしめる僕がいた。
力いっぱい包み込んだ始まりの頃のように。

僕の背中にあったはずの手はギュッと握られていた。
優しいぬくもりは、もう感じられない。
“君の気持ちはその内側にあるんだね”
身じろぎしない彼女の唯一の抵抗が全てだった。
「ゴメン・・・」
心とは裏腹の強がりなんて何の意味も無いのに。


思い出の場所だからこそ、君はここを選んだの?
思い出の場所で別れた事で、君は先へ進めたの?


並んで歩いた街並みは今も変わりはしないだろう。
雑踏やクラクションで背中を押されても、
たたずむ僕は進めない。
こめかみに残る痛みを季節が取り去るまでは・・・。

まだ生きてるよ         河合 達人


「おまえなんか、死んじゃえばいいんだよ!」
彼女がきつい口調で言った。
僕たちは公園で別れ話をしていた。
ただでも寒い公園なのに君のその言葉で
僕はとても寒くなった。
僕は君のその言葉が最後の言葉だと思った。
これ以上君は何も言わないだろう。
僕の「さようなら」だけを待っている・・・。
僕には何も言わせないつもりだ・・・。

「さようなら。」
なんか、波に流されているように、
流れに乗って僕は言ってしまった。
君も、
「さようなら。」
と切なくポツリとつぶやいて歩いていってしまった。

僕たちが別れることになってしまったのは、
僕の仕事が忙しすぎて、彼女をかまってやれなかったから。
今から考えてみると、疲れて帰ってきた僕に心配して
話しかけてくれていた君をなんだかくどく思っていた僕が
むなしかった。君の気持ちにも気がつかないで・・・。

僕はもうこうなっちゃえば「俺は仕事人間」と
自分で決め付けて仕事に励むしかない・・・。
そう思った。

翌日、朝起きると熱っぽい。
体温計で体温を測ろうと思っても
めまいがしてしまって体温計がどこにあるかも解らない。
必死に体温計を探しやっと体温が測れた。

40.5℃

「マジかよ。」
ポツリと自分でつぶやいた言葉が
だれからも返事が返ってこないのが寂しかった。
「くそー、君がいれば・・・。」
そんなことを思ったけど、あの昨日の言葉を
思い出してしまった。

"おまえなんか、死んじゃえばいいんだよ!"

僕の心の中から何回も何回もこだましているかのように、
聞こえてきた。
「死なない。死なない。俺は死なない。ただの風邪だ!」
彼女の言葉に対抗するかのように必死に心の中で
つぶやいた。
「これじゃ会社へもいけない・・・。今日は休もう。」
電話まで必死ではって行き電話をかけた。
彼女とは同じ会社だった。僕と彼女が別れたことをみんなが
知れば、僕はなんだか恋の病で会社を休んでる感じに思われる
だろうな・・・。ホントに40.5℃もあるのに・・・。
そうは思われたくない・・・。
「40.5℃あります。」なんていったら高熱すぎちゃって
余計信じてもらえないだろうな・・・。
"こんなこと考えてるならいっそのこと寝ちゃおう。"
そう思って、僕は眠りについた。

夕方。僕は商店街のジングルベルの音で目がさめた。
一度耳に入るとなかなかその音を消すことができない。
君のあの言葉のようにベルの音が何回も何回も
頭の周りを囲んでいくような感じでなんとも耐えがたかった。
僕は朝から何も食べていないことに気がついた。が、おきたら
余計悪くなりそうな気がしてどうにもできなかった。
布団に体全部くるまって、僕は"寝るぞ。寝るぞ!"と
自分に言い聞かせた。

翌日、少し体調が良くなった。
会社の人たちに悪く思われたくないってことと、
「俺は仕事人間」と決めたことのプライドがかかって
いたからだろう。会社へ行くことに決めた。

通勤電車。満員でぎゅうぎゅう押されて
咳が何回もでた。周りにいた僕と同じ
サラリーマンの人たちに咳をかけてしまった。
なんだか申し訳なく思えた。

会社へ行くと、いつも隣の席で仲のいいやつが
話しかけてきた。
「何?どうしたんだよ。おまえ彼女と別れたんだってな。
風邪気味のおまえには悪いけどさ、彼女、社長の息子と
付き合ってんだってさ。」
"マジかよ"また僕はそう思った。
彼女とは同じ部ではないから顔はあわせずにすんだけど、
彼女は僕が昨日会社を休んだことを知っているだろうか?
社長の息子とはどこで出会ったんだろう・・・。
そんな疑問が次々と出てきてしまって、仕事をする気になれなかった。
でも、「俺は仕事人間」。このプライドをかけて、
仕事をがんばった。

昨日の分まで仕事をしたので残業になってしまった。
会社の帰りに医者によるつもりがもう、終わりの時間になってしまって
医者に行き損ねてしまった。

家に帰ってすぐ僕は布団にもぐりこんだ。
やはり夕方は熱が高くなって、だるい。
ぐったりとベットに横たわった。
きゅうに空が見たくなった。星が見たくなった。
手を伸ばしてカーテンを開けると・・・。
彼女と別れた日に彼女が干していた洗濯物を
まだ取り込んでいなくて見えなかった。
彼女がおいていった最後のものは
"僕の洗濯物"だった・・・・。

吐きそうになってしまったが、吐いても
処理のしようがない。起き上がって
片付けようとしたら余計はきそうになるだろう。
ぐっとこらえて、苦しかった。

何日かして・・・。
僕はすっかり良くなり、死なずにすんだ。
久しぶりにCDショップにでも行ってみようと
思い、CDショップへ立ち寄った。
シングルのCDのところを何気なく見ていると・・・。

「まだ生きてるよ」

マッキーの曲だった。歌の歌詞をみると、
なんともこのあいだまでの僕の状況と
そっくりだった。なんとなくはまってしまって
そのCDを買った。

僕はまだ生きてるよ
まだ生きてるよ
まだ生きてるんだよ(フゥ×4)
僕はまだ生きてるよ(フフッフー)
まだ生きてるんだぞ

僕は苦笑いをした。今だから笑えるけど
彼女と別れるときにこの曲を知っていたら、
ただじゃなかっただろうな・・・。
なんとも、フゥ×4 や フフッフー が
君が新しい彼氏と一緒に笑う声に聞こえた。
このフレーズを聞いて、僕は思った。
いつか彼女とばったり遭遇したら、
大声でこう言ってやろう。
「まだ生きてるよ」って。
それが彼女に対してのあの時言えなかった、
僕の最後の言葉になるだろう。と思った。

Red Nose Reindeer」             Dandelion

「もうそろそろ時間だぞ。忘れ物ないか?」
玄関で靴を履きながら彼は言った。
「大丈夫。」
私も急いで靴を履く。
本当はもう少しいても大丈夫だけど、道が混んでしまうかもしれないと言われたので、
早目にここを出ることにした。

遠距離恋愛。
長続きしないと言われ続けて、もう3年目になる。

「じゃ、行くぞ。」
二人で相談でもしていたかのように同時に車に乗り込み、
エンジンはかけられた。

そしてゆっくりと車は動き出す。

予想通り、道は混んでいた。
なんだかしゃべり出す空気にならなくて、ちょっと気まずかったのか、
あなたはラジオをつけた。
ちょうどDJがメッセージを読み上げている。
リクエストでかかったのは、気の早いクリスマスソング。
なんとなく照れて、二人で顔を見合わせる。
そのとき、わざと思い出したみたいに、あなたは口を開く。
「ごめんな。クリスマス一緒にいてやれなくて。」
「忙しいのはおたがいさま。」
私はそう言って笑ってみせる。
忙しい月、結局私も仕事納めまで休みが取れそうになかった。

二人、離れて暮らす年末。
プレゼントは買うだけムダみたい。
そのかわりに、昨日ちょっとしたいたずらをした。

私はいつでもそばにいることを伝えたい。
そして、いつか二人がずっと一緒にいられますように。
そんな願いも込めて、『しあわせ』という名前のコロンをテディ・ ベアにつけてきた。
彼はそのことに気づいているらしかったが、わざと黙ってるみたいだった。

しばらく走ると渋滞はなくなったので、思ったよりも早く駅に着いた。

「入場券を買ってくるから、ここでじっとしてろよ。」
あなたは言って、急いで販売機に向かう。
いつもは大きいはずのその背中が、ちょっと小さく見えた。
まるで確かめているように、何度もこっちを振り向く。

私はふと、自分の切符に目をやった。
切符の値段の違いは、二人の距離が物理的に遠い事を実感させる。

二人で改札に向かう。
私はめずらしく自動改札に引っかかる。やっぱり本当は帰りたくないみたい。

新幹線のホームはちょっと寒かった。
「会えないけど、クリスマスイヴには電話するよ。」
私は何気なく言ったつもりだった。
でも、それを聞いたあなたはしばらく無言で、下を向いていた。
その顔をやっと起こしたとき、必死に何でもない顔をしようとしていた彼の目から
涙がこぼれていた。

初めて見る泣き顔。どんなにつらいときでも泣いたりしないのに…。
そんな事を思っていたら、いつのまにか私も涙があふれていた。

思いは距離を越える。
二人ともわかっているから余計に悲しかった。

でも、時間は私たちなんて気にしないで流れ続ける。
それはまるでコートを忘れたときに限って吹く北風みたい。

思いを運ぶ新幹線がやってきた。
二人とも涙を拭いて、私はドアを越えてすぐのところに立つ。
そして、あなたの顔を見つめる。

見送ってくれるその顔は、言葉にならないくらい素敵だった。
私も、負けないくらいに微笑んでみせた。
少し会えないけど、元気でいてね。
次に会うときまでに、驚いちゃうくらいもっと素敵になるから。

ドアが閉まって、私はこれからあの駅へと送り届けられる。
いつのまにか、とても暖かい気持ちに包まれていた。

「HAPPY DANCE」                       わったん

こういうのは一生慣れない。
もう2時間も同じ場所に座っていた。

昔、TVでこう言ってた。
「人を好きになることは簡単。
でも、人を好きでいることは難しい」って。
その当時見ていた僕は、「本当にそうだな」って思った。
でもそれは君に逢えるまでだったから。
ドラマに出てくるような素敵な出会いでもなく、
君と出会ったけれど、会った瞬間に「やばい」と思った。
ときめきでもひとめぼれでもないこの気持ち。

「このままだと好きになってしまう」

案の定好きになってしまった。
君とうまくいったのも早かった。
そんな君と今この公園で別れ話をしている。

僕はさっきから黙ったままだ。
笑顔で「さよなら」を言える芸当は僕にはできない。
そんな顔をしたら、ひきつって余計見苦しくなるだろう。

君はいつでも明るかった

僕と君なりに出した答えだったけれど、
土壇場になってこれでいいのかが、わからなくなってきた。
「これから… どうするの?」
君は今の僕には到底出来ない元気な声で言った。
僕も明るく答えなくちゃ。
「これから… 一人でいようと思う」
戻れないのはわかっている。
戻れば同じことの繰り返しであることも。
でもなぜこれだけ寂しいのだろう。
”一人でいよう”なんてただの見栄だ。
僕は言ったあと、彼女を見た。

君も苦しかったんだ

僕は彼女の横顔から目を離した。
やっと決心がついた。
君との思い出の箱が音をたてて僕の心に閉まっていった。
”さようなら”は言えない。僕は勢いよく立ち上がった。
君に手を差しのべた。ダンスのお相手に誘うように。

「今までありがとう」

僕は笑顔で言えた。君とのダンスパートナーを勤め終えた。
君は最後に僕の手をとって、立ち上がった。
握手はぎこちなかったけど、向かいあったまま、
たあいのない話をした。手を握ったまま。

僕らは離れるのじゃない
僕らは別れるんだ
君はそっちか、でも僕はこっちへ行くよ

最初は迷うかもしれないけれど、お互い前を見て歩こう。
奇麗事に聞こえるかもしれないけれど、今はそう思える。
幸せを探しだせる気持ちを持ち続けて。
自然に二人の手がほどけた。

「じゅあ…」と僕が言った
「また」という言葉を飲み込んで

Merry-go-round」         みゃー


ワープロのキーを叩いていた僕の肩を、隣の席の同僚がつついた。
「お呼びがかかってるよ。」
彼の指さす方向を見ると、課長が僕を手招いている。
僕は課長席の前に立った。
「顔色がわるいな。」
「そうですか?」僕は無表情に答えた。
「おまえ、先月から全く休み取ってないそうじゃないか。」
「・・・はぁ、いそがしいもので。」
「そんな理由じゃないだろ。」
「・・・・・。」
「まぁ、恋人が死んだショックを仕事で紛らわそうとするおまえの気持ちもわからんでもないけどな、過労死でもされたらこっちが困るんだよ。」
「・・・・すみませんでした・・・。」
僕は両手の拳を堅く握りしめた。
世の中にはここまで無神経な輩がいるもんだとつくづく思ったが上司の言い分もわからなくもない。僕は次の日半ば強制的に休みをもらった。
───── よりにもよってクリスマスイブ・・・
    一年でいちばん一人きりになりたくない日に・・・・


時間を持て余すのははなからわかっていた。寝だめするにも昼までが限界だ。
たまった洗濯物を片づけ、掃除機をかけたりしたけど、それでも今日という日は
終わってくれない。
ワンルームの部屋の窓から、夕暮れが始まりかけていた。
さて、どうする?イヴの夜をひとり、この部屋で過ごすのか・・。
いや、だめだ。何かをしていないと、よけいなことを考え込んでしまう。何も考えたくなかった。
とりあえず外に出ようと、ため息混じりに靴を履いた。
郵便受けをのぞくと、何通か入っていた。ダイレクトメールにNTTからの領収書、そして鮮やかな色彩を使った一枚のポストカード。
サンタのイラストに「MERRY CRISTMAS」とポップ文字で書かれてある。宛名の筆跡には見覚えがあった。学生時代につき合っていた彼女からだ。
今はもう、別の姓になって、幸せな家庭を築いている。去年も手書きのクリスマスカードを送ってくれた。去年のよりも上手くなっていた絵が、彼女の幸せぶりを物語っていた。
ほんのちょっと、暖かいものを注がれたような気がした僕は、それをバックに
納め歩き出した。


クリスマスソングが至るところから流れてくる街の中は、誰かを待つ人たちであふれていた。街路樹には、まばゆいイルミネーションが飾られ、まるで星が宿っているかのように冬の街を灯していた。
ベンチに腰を下ろして煙草をくわえた。広場の向こう側にも女の子が座っていて、誰かと待ち合わせしているようだった。急に女の子が立ち上がって満面の笑顔を見せた。彼氏らしき男の子が彼女に近づいていくのが見えた。
彼も笑っていた。嬉しそうに笑っていた。
僕はたまらなくなって、また歩き出した。


ホントウナラ、アソコニイタノハ、ボクトキミノハズダッタ。


ケーキ屋が揃ってクリスマスケーキの宣伝をし始める11月の下旬、僕たちは二人で食べるためのケーキを早々と予約するために、彼女のお勧めのケーキ屋に行った。
「やっぱりイチゴショートよねっ。」
「えー、チョコレートの方がよくない?」
ショーケースの前でそんなことを言い合いながらも、気分はもうクリスマスに飛んでいて、はしゃいでいた。そのあと、レストランで食事して、帰り際彼女は笑顔でこう言った。
「イヴに、二人で一緒にケーキ受け取りに行こうね。」
彼女の最後の言葉だった。


どこを見渡しても彼女といた風景。僕の行動範囲は結局彼女とのデートコースだった。
ふらりとゲームセンターに入った。100円玉をいくつも費やしてひたすらゲームに熱中しようとした。
背後に誰かがいるような気がしてパッと振り向いた。誰もいなかった。
「もうかえろうよぉ。」────ゲームにはまりこんだらなかなか帰ろうとしな
い僕に、彼女が僕の服をつかみながら促していたっけ。


キミガイナキャ、イミガナイ。ナニヲシテテモ、タノシクナインダ。


街中、まるでメリーゴーランド。
大人も子供も、家族連れも恋人同士も、笑いさざめき、その幸せそうな表情が無数の電飾に照らされグルグルと回り続けている・・・。
自分一人が世界でいちばん不幸に思える。
僕もこのメリーゴーランドに乗るはずだった。でも、一緒に乗ってくれる人はもういない。僕は今、柵の外から他人の幸せを傍観している、笑顔をどこかに置き忘れた男だった。


・・・・・・ サミシイヨ。  アイタイヨ・・・・。


それは何かの合図みたいだった。 冷たい粒が、僕の頬にふれた。
雪だ。白い雪は暗くなった夜空によく映えて、まるで映画のワンシーンのように絵になる光景だった。とても美しかった。
見上げている僕の上に、優しく優しく降り続けた。
「あなたのために降らせているのよ」といわんばかりに・・・。
来年も、その次の年も、この白い雪は降るんだろう。
そのとき僕は、やっぱりこうして一人で空を見上げているんだろうか。

冷たい雪が、体の表面からしみ込んで、胸を熱くした。
それまで長い時間硬く凍り付いていたものが解凍されていくような感覚だった。
喉の奥がキューンと痛くなって、熱いものが滴になって目からこぼれ落ちた。
次から次へと涙は僕の顔を伝い落ちた。
止まらなかった。僕は笑うことだけじゃなく、泣くことさえも忘れてしまっていたようだ。
“いつかのクリスマスイヴはきっと、愛する誰かと一緒にいられますように”
僕は雪に願いをかけた。僕がこれから先、年を取っても、手の届かない彼女を想い続けてクリスマスを忌み嫌う男になんかなって欲しくないだろうから。
ふと気がつくと僕は、あのケーキ屋の前まで来ていた。

「いらっしゃいませ」
店員の女の子が笑顔で迎えてくれた。
「ケーキを予約していたんですけど。」
いつのまにか僕も笑顔になっていた。あの日、忘れたつもりのない忘れ物はここにあった。