音楽評論家、田家秀樹さんがお書きになった、
「Home Sweet Home」2枚組みライブアルバム。
「THE CONCERT]のレビューです。
この掲載を依頼していただいたみゆき様、連絡をしていただいた毎日新聞社学芸部 かわさき様、
そして何よりも田家秀樹さん本人の記事の掲載了承ありがとうございました。
暖かい人達に出逢えたことを誇りに思います。世の中捨てたもんじゃないです。
人の暖かさに触れた時、その暖かさを逃さぬよう誰かに伝えようとします。
田家さんの文章を読んで、文字という消えない暖かさから他の方に伝わっていくことを願い、掲載させて頂きます。
本当にありがとうございました。
以下毎日新聞5月11日夕刊 らっこ(楽庫)頁より、
田家秀樹。
レコーデイングという作業が 記録 だとしたら、彼は、このアルバムは「本来の意味でのレコードだと思う」と言う。
一人のア−テイストとしてだけではなく人間の葛藤(かっとう)の記録。才能を賞賛され将来を嘱望されていた若き音楽家の、
その全てを失いかねないつまずき。自業自得という非難と再起を望む声と果てしない自責の中で歌えない3年を過ごしての復帰ツアー。
9日に発売された2枚組みライブアルバム「THE CONCERT]には、13本の最終日、新宿厚生年金会館での模様のほぼ全貌が
納められている。
「回れる場所も少なかったですし。これを聴いてまた僕のコンサートに来たいと思ってくれれば本望なんで。
今までなら絶対にイヤだと言っていたラフなテイクもそのまま使ってます」
収録曲は復帰アルバム「Home Sweet Home」を中心にした新旧20曲。トークもそのままだ。中には感情が募ってしまい
途中で歌えなくなる曲もある。
「幕が開いた時は冷静なつもりだったんですよ。でも、途中で何かの拍子で作った時のことがよぎったりしてガタっと崩れることは
ありましたね。自分の感覚を超えた人の優しさや思いやりに出会うと泣くしかないんだなって。それは今まで感じたことがなかったですね」
ミュージシャンは小倉博和(G)をはじめ一流ぞろい。ツアーでの選曲も彼に一任した。
「自分で選べなくて。僕以上に僕のことやファンのことを考えて選んでくれて。照明のスタッフの人とか、
自分の曲をこんなに聞き込んでくれている人がいたんだって。それは勇気づけられましたね。」
作品が語る心情。大ヒット「どんなときも」にしても、今の心境のように聞こえる。
「曲に教えられました。僕は歌より劣っているんです。歌は僕よりずっとすごいって。」
ツアー中のこんなエピソード。旅先の街角で「ファンです」という女性に声をかけられた。
「今日は何でいらしたんですか」と聞かれ、以前だったら「ファンなのにコンサートを知らないの」と思ったかもしれない。
でも、「コンサートなんです。今度来てくださいね」と自然に言えた自分がいた。
「傲慢でしたね。いい気になってた。今回はお客さんがあまりに温かくて。こんな自分でも信じてくれる人がいたと思えたのが
最大の希望でした。一番大切なのは音じゃない。作る大元にある気持ちなんだ。今、そう思えて本当に良かった」
人生で重要なのはつまずかないことではなく、そこからどうするかなのだと思う。映像が見えないからこそ伝わる何か。
彼の非凡さと音楽の持つ力を再認識させてくれるはずだ。
( 音楽評論家 田家 秀樹 )
2002年5月11日 毎日新聞夕刊 らっこ(楽庫)頁より
