■資料:『十四々条の信仰条規』
(Fundamental Buddhistic Belief)一 仏教徒は各人相共に同一の忍耐寛裕及び彼我の念を離脱して、一視同仁すべく、且つ禽獣社会【動物界】に対するも正当の慈愛を施行すべきものとす。
二 宇宙(ユニウァルス)は創造されたものにあらずして進化せしものなり。而して其作用は諸神の好僻心【気まぐれ】に出るに非ずして自然(ナチュラル)の法則に依るものなり。
三 仏教の真理は捏造の者に非ずして自然よりして発見されたるものとす。而して其の真理は常住壊空【世界周期】(KALPS)に仏陀と呼ばれる大偉人輩出に依て表示されたるものと吾人は信す。
四 現劫【現在のカルパ】の第四法教師はサキャムニ即ちゴータマ・ブッダにして今を距ると二千五百有余年の昔時に於てインドの王家に生る。実にシャカは古今史乗中不世出の人傑にして本(も)とシダールタ・ゴータマと呼ぶ。
五 世尊教を施き曰く夫れ無学無識【無明】は欲望を生ず。而して之れを満足せんとするに依て転生因起子の転生も爰(ここ)に亦た悲哀【苦】の縁となる故に悲哀を退けんと欲せば欲望を辞せざるべからず。欲望の念を絶んと欲せば無学無識を磨消して智識の開発を必要とす。
六 無学無識は転生(リバース)を必要なりとの信奉に固執す。并(ならび)に転生は人間生活の永続を撰定するの最大方便とす。而して生活の永続は転生を無益とするものを打破すと思考す。無智はまた詐偽背理の思想を構成す。而して詐偽背理の思想は一には世界は只た人類のためにのみ存在すと、二には此の生活は唯た不変不化の歓楽痛苦の情態に供しあるとの詐偽を構成するものなり。
七 無学無識を開散せんと欲するには、智識を開発し志想を研磨し、而して卑下なる快楽の希望を絶ざるべからず。
八 転生の因なる存世中の欲望消滅せしとき、転生も爰(ここ)に歇(や)む。而して吾等はじめて涅槃の境域に到達す。
九 世尊曰く、无(無)智と悲歎とは左の貴尊なる四真理に依り滅却することを得。
一 現世の不幸悲哀【苦諦】
二 悲哀の因縁(眼前の楽に其身を安ぜんとする絶えず起る慾望)【集諦】
三 欲望の消散即ち慾望より遠かること【滅諦】
四 慾望を消散するの方便(八正道)【道諦】
一、正しき信用【正見】 二、正しき思想【正思惟】
三、正しき談話【正語】 四、正しき所行【正業】
五、正しき活計【正命】 六、正しき勤勉【正精進】
七、正しき記憶【正念】 八、正しき黙思【正定】
十 正しき黙思ハ人をして心胸の潔浄即ち隠然仏の清浄不垢の境域に至らしむるものなり。十一 如来(タタガタ)が挙示せられし仏教の本質は左の如し
一、諸悪犯す勿れ【諸悪莫作】
二、衆善之れ行え【衆善奉行】
三、心胸を清浄にせよ【自浄其意】
十二 宇宙万物はカルマなる因果の理に従うものとす。過去の功徳と罪業とは現世の各人の禍福を定む故に各人は現世の幸不幸に依て過去犯せる罪業の浅深有無を謀るべく、又た現世の行為は来世の禍福を定むるものなり。十三 カルマ(果報)を得るの障害を避んと思はば左の戒律【五戒】に服従せざるべからず。
一、不殺生 二、不偸盗 三、不邪淫 四、不妄語 五、不飲酒
今まここに揚げるを要せざる他の五戒律は、凡俗より僧侶者之を観察するを可とす。十四 仏教信徒は迷信に遠ざからざるべからず。世尊曰く、凡そ人の父母たる者はその子女を教ゆるに学問技芸を以てせざるべからず。又曰く、何人を論せす道理に合するに非ざれば格言にあれ書籍にあれ或は従来の格言といえども決して之を信ずべからず。
■初出:『仏教』No33(1891, P43)訳語が分かりにくい上、原文と照らし合わせると首をかしげる訳もあるがそのままにしてある。【】内は訳語を筆者が補ったもの。原文は"OLD DIARY LEAVES" FOURTH SERIES 1887-92" H.S.OLCOTT, The Theosophical Publishing House, Adyar(1910, P415)に掲載されている。