「忍者狩り」(1964/山内鉄也)
撮影中スナップ。右がお女中を拷問中の闇の蔵人・天津敏。中央が演技指導中の山内監督。

近衛十四郎・主演。東映映画作品。
息をつく間もないジェットコースター忍者ムービーだ。とにかく脚本と演出に無駄がない。作られた時期は1964年、忍者ブームのまっただ中だ。
29才の新人監督・山内鉄也と新進脚本家・高田宏治は、いままでにない全く新しいタイプの忍者物を作ろうと考えた。いままでの時代劇にありがちな主人公と悪役がゆっくり見得を切って対決するようなそういう作りはやめようと。
敵も味方も、どちらも目的のためには手段を選ばない。主人公の浪人も、どれが忍者かわからないから無実の者をとりあえず全部斬り殺していく。まさにハードボイルドだ。
スタッフ平均年齢26才の東映始まって以来の若さが覇気が作品からあふれ出ている。
当時は映画もTVも忍者ブームで、TVの一番人気と言えばその忍者ブームを起こした「隠密剣士」だった。「隠密剣士」をTVで見ていた山内監督は、でかい、強い、恐い、と三拍子揃った風魔小太郎役・天津敏に『あの男が闇の蔵人だ!』と目を付けた。
天津敏は映画界では全くの無名だった。が、背が高く精悍で、東映城にはいないタイプの悪役だったのだ。
衣装合わせにやってきた天津敏に監督は言った。
『君のやる闇の蔵人という役は、闇の中でしか生きられない忍者の役なんだ。だから君の顔は撮せないんだ』
パイプ椅子にきちんと腰掛けた天津敏は監督の目をまっすぐに見て、『はいっ、はいっ』と答えた。もうすこし豪快なタイプの役者かと思っていたらまったく温厚で生真面目そうなので、大丈夫かいな?と山内監督は心配になったらしい。が、いったんキツイ悪役メイクをすると人格が変わるのか(笑)姿は見えなくても十分恐い(もちろん見えてももっと恐い)天津敏の声優声が『ぐわははは!』と響き渡った。
もちろん主演である近衛十四郎も素晴らしい脚本に応えて熱演している。クライマックスの死闘シーンのリハーサルで、ハァハァと息を切らしている近衛十四郎に『休みましょうか?』と監督は声をかけた。が、『いや…いいんだ、息が切れているほうが!』とそのまま本番に突入した。
中田雅喜が時代劇初心者に最もお薦めする忍者ムービーがこれだ。見ればわかる、見て損はない。まるで劇画全盛期の面白さだ。
優れた時代劇はまさにSFだ。サムライ・フィクション、そしてソード・ファンタジーだ。

資料提供・山内鉄也監督。(転載、二次使用一切禁止)
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