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楽しく明るい大スターと有名監督の作品ばかり4本続けて紹介してきたが、今回は趣向を変えて、暗く緊張感漂う、中堅スターと新進監督のマニア向け作品を紹介する。 世の中が不安な時、人は、サラリーマンである武士よりも、強くて自由な忍者というものにあこがれるらしい。近頃、忍者物が作られるのもそういう理由だろう。 1963年~1968年まで、東映は時代の波を受け、忍者物・集団抗争物を作り続けた。いずれも監督は新人。出演者も中堅・新人スターが多数で集団劇を演じた。日本映画史的には『17人の忍者』『十三人の刺客』が代表作となっている。 が、何度も見返してしまうのは、やはりこの『忍者狩り (1964/山内鉄也監督) 山内監督はこれがデビュー作。デビュー作が代表作になった。 主演は近衛十四郎。戦前からの中堅スターで、60年代の剣技はトップ。東映では柳生十兵衛シリーズを撮っている。 大敵役に天津敏。天津敏はTV時代劇『隠密剣士』(1962~65)の敵役・風魔小太郎で認められ、43歳で初めて銀幕に躍り出た。敵役専門で、主演作はない。 脚本は高田宏治。『鬼龍院花子の生涯』など書いている。 とにかく初っ端から緊張感のある画面に吸い込まれる。新人監督の作品とは思えない。この緊張感はクライマックスの二人の死闘までダレルことなく続く。無駄なエピソードは何もない、ノンストップの素晴らしい脚本だ。 物語は単純である。四人の浪人が弱小藩の城代家老に雇われ、幕府が雇った甲賀忍者達から若君を守るという、ただそれだけの話である。当時ありがちだった思想や理屈っぽさがないのがいい。 浪人のリーダー和田倉(近衛十四郎)はこの藩を守るよりも、自分の藩を潰した忍者の頭目・闇の蔵人(天津敏)に復讐したいのだ。当然手段は選ばない。嫌疑のかかる家臣を6人捕らえて拷問し、斬り捨てる。 無実の者を手にかけるとは!と責める家臣達に近衛十四郎は、わからんのかっ!と恫喝する。 「こうしなければ忍者は斬れんのだっ!一人一人斬っていくより闇の蔵人を見つけ出す手はないのだっ!!」 もう、むちゃくちゃである。 城代家老(田村高広)も若君を守るためなら家臣の6人ぐらい、と黙認するから、本当に正義も何もない。敵も味方も同レベルである。 この大敵役、闇の蔵人・天津敏が特筆すべき快演(怪演?)だ。 とにかく近衛以下みんな、『闇の蔵人がくる、闇の蔵人がくる』と恐れるのだが、天津敏はほとんど画面に顔を見せない。縁の下に居たり、編み笠を被っていたり、黒ずくめで覆面してるから顔なんか分からない。だが、それだけあおられると現れた時が恐ろしい。 ぐわはははは……!と低音の天津敏の声優声(声優もやっていたから声は抜群に良い)が闇に響き存在感大の黒ずくめが現れる。こいつがまた、でかい上に敏捷だから、めったなことで倒せない。 あと一日で若君を守る攻防戦が終わり近衛の勝ちという時、葬儀に若君を参列させなくてはならなくなった。闇の蔵人がこの好機を逃すはずがない。城代である田村高広は若君を斬りに現れる蔵人を斬れ!と近衛に言う。近衛は斬れません、と言い返す。 「若君を犠牲にしなければ蔵人は斬れません!若君を斬る瞬間にしか蔵人は姿を現しません!……拙者としては若君にご参列願いたい」 「おぬし……っ!」 そして、廟の中の死闘に突入する。 近衛を斬り倒した後の、闇の蔵人のセリフ。 「ぐわはははは!今度も俺が勝ったな。……動けるか?動いてみい!もう、おぬしにはこの俺を斬る力はない!」 ……もう、まったく小池一夫の劇画のノリである。これを、まさに劇画の世界から抜け出てきたような忍者が声優声で言ってくれちゃうのだから、もうマニアには堪りません!!(笑) そりゃ、突っ込もうと思ったらなんぼでも突っ込める脚本だ。だいたい忍者が高笑いするかっちゅーの!?だが、そんなことを考えさせずに一気に見せてしまう問答無用の面白さがある。それはまさに劇画の面白さだ。田村高広も女優陣も良い。時代を超えて楽しめる東映忍者物のベスト1である。87分。 『忍者狩り』は東映ビデオから出ています。 ――伝説のTV時代劇『素浪人月影兵庫』の兵庫と『隠密剣士』の風魔小太郎の対決だ。相手にとって不足はない!男心をそそる剣戟俳優・天津敏はマニア必見!! 2000.9.3更新・10.31再更新。2004/5/1再更新 |
TV時代劇は専門外なのだが、今年リメイクされたことだし、あまりにも良くできた名作なので紹介することにした。お子さまものと馬鹿にする事なかれ。これこそまさにサムライファンタジーの名作だ! (1967~1968・倉田準二、山内鉄也、他) いまさら私が「赤影」のストーリーについて話す必要もないだろう。ネット内で検索すれば山ほどヒットする。 ここでは「仮面の忍者・赤影」に至るまでの忍者物の変遷を述べることにする。 「自来也」(1937/マキノ雅弘)の項でも書いたように、尾上松之助のサイレント映画の昔から、忍術使いはドロドロドロンと煙と共に現れて、大蝦蟇を出したり大蜘蛛を出したり(怪物を召還)して戦った。印を結んではテレポートのようにえいと消え、雲に乗って空を飛んだ。映画は舞台劇とちがって、ぱっと消えるのは簡単だ。かくて忍術映画は始まった。「自来也」をはじめ近衛十四郎の「忍術千一夜」(1939/大伴龍三)など、ドロンパッと消える忍術映画が山ほど撮られた。 戦後の「笛吹童子」(1954/萩原遼)でも大友柳太朗の忍術使いは竜に乗って登場し、「里見八犬伝」(1954/河野寿一)でもぱっと消える忍術使いや妖術使いが登場する。 それが、戦後の時代小説や剣豪小説のブームでしだいに忍術使いにもリアルさが求められるようになった。劇画や漫画でも、「伊賀の影丸」でスポーツトーナメントのような闘いが描かれ、「忍術武芸帖」や「サスケ」では忍者は戦乱の世を生き抜く生身の人間として描かれ、忍術を科学的に解明しようという試みがなされている。 映画も、忍者を戦乱の世の中を生き抜く生身の男として描いた「忍びの者」(1962・山本薩夫)などが生まれるようになった。ここではもはや忍者はテレポートなどしない。市川雷蔵演じるところの忍者は常人と同じように生活し、政治の流れの中で生き、悩み傷つき、恋をする。この作品は従来の忍者のイメージを刷新した。 すべての家庭に普及しだしたTVでは、宣弘社念願の時代劇「隠密剣士」(1962~1965)がはじまり、子ども達の間でも忍者ブームが起こった。大瀬康一、牧冬吉、天津敏ら、TV時代劇スターが生まれた。主人公と大敵はワンクールごとに対決するのだが、けっして蛇や蝦蟇を召還しない。手裏剣や剣で勝負を争った。視聴者に対して忍者道具の解説などがあり、忍術を鍛えられた体術としてとらえていた。 おかしなもんで政治が不安定なときや不況の時は皆さん自由で強い忍者にあこがれるらしい。安保で揺れる日本中で、小説・漫画・映画・TVと、どちらを向いても忍者がいた。「梟の城」(1963/工藤栄一)「十七人の忍者」(1963/長谷川安人)などなど…。もはやどの忍者もぱっと消えなかった。 ーーーそして、そのリアルタイプの忍者物の頂点が「イチオシ映画」第一集でも紹介した「忍者狩り」(1964・山内鉄也)である。 従来の忍者ものはリアルタイプになったと言っても当然スターが演じていたので明るく顔が写っていたが、この作品ではそれもやめた。古典的な表現手法をやめたのだ。大敵役の忍者・闇の蔵人は闇の中に潜んでいて姿も顔も見えない。派手な術も使わない。 一方、主人公は今まで必ずヒロインがあてがわれていたのに、今回は女っ気はなし!しかも目的のためには無実の者を容赦なく殺戮する主人公だ。古典的な表現を避けたので、主役と大敵の対決シーンのチャンバラもない。(近衛十四郎VS天津敏なのにもったいない!)闇の中で後ろを取り合うだけだ。 リアル=古典的パターンの否定という、実験的でなおかつ劇画的な面白さに満ちたとても優れた作品になった。 が、リアルが行き着くと、原点に返るのか、この「忍者狩り」のあと山内監督は1966年に自来也物「怪竜大決戦」(脚本・伊上勝)を撮っている。大友柳太朗が見得を切る古典的な手法だ。同年始まった「ウルトラQ」の影響か、蝦蟇や竜を召還するのではなく、主人公達自身が怪物に変身するところが目新しい。 同じ年に白土三平の漫画を原作とした「ワタリ」(1966/船床定男、脚本・伊上勝)が撮られた。ワタリ・金子吉延、四貫目・牧冬吉、大敵役に大友柳太朗と天津敏だ。これはサイケデリックな当時流行のケバケバ色彩と荒唐無稽な面白さが加味された作品でサイボーグ忍者まで登場する。今日見るとたいへん面白い作品だが、リアルで思想的な原作とかけ離れていた。おかげで白土三平にはいたく不評で、TV化の話が消えてしまったという経過がある。 白土三平がダメならもう一方の忍者漫画の雄・横山光輝だ、ということで急遽、横山光輝原作で「仮面の忍者・赤影」(1967~1968・倉田準二・山内鉄也、脚本・伊上勝)が撮られることになった。赤影・坂口祐三郎、青影・金子吉延、白影・牧冬吉、甲賀幻妖斎・天津敏だ。 脚本家の伊上勝が、この二人は絶対だ!、と推薦したので白影は牧冬吉、大敵役の甲賀幻妖斎は天津敏になった。TV草創期の宣弘社時代からの仲間だ。伊上勝は二人の魅力を存分に知っていた。そして主役を引き立てるバイプレイヤーとして素晴らしいキャラクターを創りあげたのだ。 「仮面の忍者・赤影」は、ぱっと消えたり空を飛んだりする荒唐無稽なサイレント映画時代の面白さと、変身物や怪獣物などSFの面白さを併せ持った、とても実験的で斬新な作品になった。 面白いことに初回にやはり巨大蝦蟇が出てくるのだが、術で召還するのでもなく変身するのでもなく、蝦蟇法師が小さな蝦蟇から大切に育てて巨大蝦蟇にしたところがご愛敬だ。蝦蟇の術も変化し、とうとう怪物ではなくペット化してしまった(笑)。ちなみにこの蝦蟇は「怪竜大決戦」の蝦蟇がリフォームされて使われている。 メイン監督の倉田準二は次々アイデアを出しては実行していった。当時のスクリーンプロセスは時間と金がかかった。16ミリでは出来ないので特撮部分だけ35ミリで撮って合成した。たしかに不自然な合成や釣り糸が画面に見えるが、演出の面白さがそれを上回り、そんなものは気にならない。大胆な色使いも美しい。 役者も監督やスタッフと相談し、衣装合わせの段階からアイデアを出し合った。東映大部屋個性派総出演だ(なんて贅沢!)。昼はロケ、夜はセットと3日徹夜で撮り、アフレコでまた全員集合して丸一日。丁寧に、しかもスタッフも役者も熱く、のりにのって作られた作品だ。そのエネルギーは今日見ても伝わってくる。 第一部「金目教編」の最終話など、金目像(巨大ロボット)の中のエレベーターで上下しながらの殺陣があり、そのセンスは今見ても斬新だ。(スター・ウォーズまでまだ10年もあるのに!) が、後半の三部・四部は忍者物を離れ、怪獣物になっていく。世の中はウルトラ一色に染まり、敵もヒーローも宇宙から飛んでくる時代になっていた。そして脚本家・伊上勝はこの3年後にとうとう「仮面ライダー」(1971・竹本弘一、山田稔)を書くことになるのだ。「人造人間キカイダー」も1972年から始まり、ヒーローは機械仕掛けになっていく。生身の人間である忍者がヒーローの時代は去っていったのだ。 「仮面の忍者・赤影」は忍者物の行き着いた果ての名作である。特撮物としても過渡期にあり、その凝縮された作品世界は一見に値する。特に第一部「金目教編」は、荒唐無稽なサイレント映画の流れを汲む忍者物の最高傑作である!! DVDBOXが東映から発売中。「金目教編」は必見だ! 2001/9/1/更新。2004.5.5.再更新 |
さて2001年10月現在、いよいよ世の中が乱れに乱れてきた。やれ戦争だやれ不況だと、もはやストレスは飽和状態。頭使うテーマや物語はもう良いよ、ほっと一息つきたいときがあるもんだ。第一集で紹介した「鴛鴦歌合戦」が“いやし系”時代劇なら、この「まらそん侍」は“なごみ系”時代劇とでもいうのかな? (1956・森一生) 物語は武士道ものというよりサラリーマンもの。若いサラリーマン二人が上司の娘に惚れてしまってマラソンで競うというもの。主人公の若侍が勝新で、可愛いというか男の子っぽいというか粉ふきイモみたいな顔をしている。親友役は夏目俊二、生真面目で爽やかな二枚目だ。サラリーマンものに定番なのは勝ち気なお嬢様。後年とげとげした悪女っぽい感じになってくる嵯峨三智子もここではお転婆な家老のお姫様で江戸育ち、人に何と言われようと『あら、へっちゃらよ』なんて可愛らしく自信ありげで適役だ。 その勝新達の恋路を邪魔するのが次席家老のアホ息子で、これが大泉滉。 なにがこの映画の見どころって、この大泉滉のシュールでライトな走りである!この放送コードぎりぎりの走りは、ひょっとしてこのキャラは脳に傷があるんじゃないか?と感じさせ、一見の価値がある。 お城の宝を狙う泥棒はトニー谷。高名なボードビリアンで、私はTV番組「アベック歌合戦」♪貴方のお名前なんてえの?♪をリアルタイムで見ていたときは何も感じなかったが、今日改めて見るととても珍しいタイプの芸人で、お笑い司会者の先駆である。 二人とも飄々としてしかも妙に色気があり、基本的には知的ないい男で、必要以上に騒がしくなく、しかも下品でない。この悪役(?)二人がこの作品に魅力的な味を醸し出し物語を引っ張っていく。 勝新も、お宝を取り返したあと背中にくくりつけ、『ハンデになるが致し方ない』などと言ってマラソンを続けていく。マラソンシーンが多いので屋外のロケが多く開放感を感じさせられぼんやり見ていても気持ちいい。もちろん見せ場のチャンバラシーンもしっかりある。 そして当然物語はハッピーエンド。しかし別に主人公が出世したわけでもないし、お嬢さんを手に入れたわけでもない。が、小市民的にハッピーエンドなとこがまたほっとさせられる。これで良いのだとつくづく思う。 もとネタは1955年11月5日にNHK第二ラジオで放送された「安政奇聞まらそん侍」で伊馬春部が書き下ろしたもの。1時間25分の長時間ラジオドラマで大谷友右衛門、金子信雄、森雅之、芥川比呂志、三木のり平ら、総勢40名が出演している新企画ドラマだ。 戦後の混乱が一区切りし、もはや戦後ではないと言われたこのころ。1958年に観客動員数が11億2千7百万人という、戦後映画界最高の黄金期を迎える。その上り坂の文化の中、肩の力をちょっと抜いて一休み一休みという感じだ。 映画史的にどうという作品ではないし、勝新の代表作でもない。が、「まらそん侍」は急ぎすぎたとき、くたびれたときちょっと見返したくなる、そんな側に置いておきたい愛すべき作品である。 「まらそん侍」は大映ビデオからずいぶん昔に発売されています。TSUTAYAにはあるからレンタルでどうぞ。DVDになってほしい。秋の運動会、マラソンシーズンに最適だ。 2001.10.1/更新。2003.1.12/追加更新。2004.5.5.再更新 |