きたのエンジェル

きたのエンジェル

20世紀最後の年、父が死んだ。

葬式を済ませ
お寺から火葬場に向かう時

運転手が気を利かせたのか
母の依頼だったのかはわからないが

父の棺を乗せた車はぐるっと遠回りして
我が家の前の道を走ってくれた。

父が30年間患者を診察し続けてきた
今はもう主のいない古ぼけた医院の前を
車はゆっくりゆっくり通り過ぎて行った。


「今までの人生の中で
一番悲しかったことは何ですか」と
誰かに尋ねられたら

私は
このときのことを語るだろうと思う。