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『教職研修 2003年5月増刊号』用 原稿

発行所 教育開発研究所


○今日から始める実戦課題の基礎・基本


No.1 「今日から始める絶対評価の基礎・基本」

3章 評価活動の基本テクニック徹底解説


<絶対評価で役立つ「通知表」の作成・活用テクニック>


  大阪府吹田市立桃山台小学校教諭 
  野田 健司 



  新学習指導要領の実施に伴い、多くの学校で通知表を改訂した。今回の改訂の大きな変更点は次の2点である。1,「絶対評価を加味した相対評価」ではなく、「絶対評価」にした。2,「総合的な学習の時間」の評価欄を新設した。
 通知表の形態は各学校で自由に決められるが、どのような形にしたとしても、通知表には形成的評価の側面があることを忘れてはならない。



   改訂された通知表

 インターネットで「google(http://www.google.co.jp/)」などの検索サイトを使い、「絶対評価の通知表」や「目標に準拠した評価・通知表」の言葉から探してみると、たくさんのホームページが見つかる。ページの内容は、新聞・雑誌の記事、書籍のタイトル、学校だより、個人の掲示板など多様である。新学習指導要領の実施に伴い評価の仕方が変わったとして、保護者や教育関係者は、通知表についての興味・関心が高いようだ。
 通知表は法律で定められた表簿ではないので、各学校で多種多様な形態をとることができる。移行措置実施以来、ここ数年で多くの学校が通知表を改訂した。
 今回の改訂で大きく変わったことは、次の2点である。
                    
 ○「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)を加味した相対評価(いわゆる集団に準拠した評価)」ではなく、「絶対評価」にしたこと。  
 ○「総合的な学習の時間」の評価の欄を新設したこと。  
 


  相対評価から絶対評価へ

 新指導要録では、「評定」を「絶対評価を加味した相対評価」ではなく、「絶対評価」で記入するようなった。この相対評価から絶対評価への転換は、各学校が通知表を見直す大きな要因になった。
 以前から通知表でも「各教科の学習の記録」を「観点別学習状況」として、絶対評価で記入している学校があった。しかし、今回は「各教科の学習の記録」を相対評価で記入していた多くの学校が、「評定」だけではなく通知表全体(「各教科の学習の記録」を含む)を絶対評価に改めたのである。
 教育評価全国調査研究会の「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)・評定に関する調査」では、「絶対評価を本格的に実施するにあたり、通知表を見直しましたか」という問いに対して、「観点別評価の項目の内容を変えた」学校が72.2%、「通知表の様式を変えた」が61.7%ある(複数回答)。また、「通知表の様式をどのように変えましたか」という具体的な問いに対しては、「文章記述での評価を多くした」29.0%、「評定の欄をなくし、観点別評価のみにした」25.3%、「単元別に評価、それを蓄積して表記した」16.7%、「自己評価を通知表に入れた」8.0%などだった(複数回答)。
 「生きる力」としての自己学習能力を育てるために大きな役割を果たす、「自己評価を書き込める欄を設けた」学校がごくわずかであることが残念である。


  自己評価欄のある通知表

 子どもの主体性を重視した子どもによる自己評価欄を設けて、教師からの評価と併記した特色のある通知表を紹介したい(資料1−A&B参照)。
 この通知表の特徴として、次の点がある。
1,「わたしのめあて」として、学期ごとに自分のめあてと振り返りを書く欄がある。
2,全ての「教科」や「生活の様子」で自己評価を取り入れ、記入する欄がある。また、単純な3段階ではなく、その間も表現できるよう数直線にしてある。
3,保護者向けに「通知表の見方・生かし方」が書いてある。絶対評価であることもわかりやすく書いてある。
4,担任と保護者の両方が書ける通信欄を設けてある。
5,学習者である子どもたちが通知表の評価の意味をわかるよう、表記に工夫をしてある。
6,学期末だけでなく、学期途中にも渡し、形成的評価の役割を強めている。伸びた点については、再度記入できるようにしている。
7,学校の教育目標とその年度の努力目標が図示されている。
8,表紙を含め、全12ページの冊子になっている。

資料1−A 大阪府吹田市立岸部第一小学校の通知票(4学年の国語<3学期は省略>)


資料1−B 大阪府吹田市立岸部第一小学校の通知票(6学年の体育)


                                                              
  「総合的な学習の時間」の評価欄

 新学習指導要領の目玉として、総合的な学習の時間がスタートした。週あたりの時間数も多い。「評価はするが評定はそぐわない」など、各教科の評価とは違いがある。だから、「総合的な学習の時間に、子どもはいったい何をしているのか」という保護者への説明責任を含めて考えると、総合的な学習の時間を評価するための独立した欄が必要である。その欄に、各学校でどのような観点に基づき評価しているのかを詳しく明記する方が、保護者にわかりやすい。
 各地の学校で使用されている通知表の典型的な例を4つ示し、「総合的な学習の時間」の評価欄を作成・活用するポイントをまとめてみたい。


(1)総合的な学習に関する所見欄がある通知表(資料2)

観点 ・自分で課題を見つけ、自分で計画を立てて解決しようとする。  
   ・○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○。
 

学習活動

学習の様子

 前

 期

    

 後

 期

     

             
 年間を通して記入する1つの大きい枠を設けている通知表と学期ごと(前期・後期の2期制の学校もあり、増えてきている)に枠の中を分けている通知表とがある。



 (2)観点別に記号で記入している通知表(資料3)

本年度の観点

学 期

めあてをもって進んで学習する。      

最後までやりとげようとする。      

○○○○○○○○○○○○○○○○。      
・気づいたこと

                                      
 がんばった項目だけに○をつける学校が多い。全ての項目に◎・○・△の3段階などでつけている学校もある。
 観点項目は、学年別で3学期間共通の通知表が多い。記号で記入するだけでなく、「気づいたこと」という形で自由記述を併用する学校が増えてきている。



 (3)自己評価を取り入れた通知表(資料4)
                    

総合的な学習の時間の自己評価

学 期

・課題を見つけ、自ら進んで取り組めたか。      
・情報活用、表現活動などに工夫したか。       
・○○○○○○○○○○○○○○○○。      

1学期
2学期
3学期
 総合的な学習の時間のねらいのキーワードは、「自ら」と「学び方や生き方」である。
 このねらいを達成するために評価をするのだから、「指導と評価の一体化」の視点から考察すれば、総合的な学習の評価は子どもの自己評価が中心になる。
 総合的な学習に関する自己評価欄を設け、自己評価を中心とした形で書く方法が(資料4)である。観点別に努力ができたら○をつけ、文章表記もする。ただし、まったく子どもの自己評価だけではなく、教師からの評価欄を設けることが望ましい。  
         
  (4)ポートフォリオを生かした通知表(資料5)

・自分が成長したこと ・先生から
・地域の方から
・友だちからのひとこと
・家の人から

 自己評価を中心とした考え方として、ポートフォリオを生かした通知表がある。
 ポートフォリオは、子どもによる子どものための「究極の自己評価」である。「収集」「選択」し「振り返る」ことで次の学びに生かす、「学習と評価の一体化」である。
 (資料5)は、ポートフォリオをもとにして、子どもの学びや成長を自己評価や他者評価(友達、教師、専門家、地域の人々、保護者)など、多角的な視点からとらえて記入する方法である。子どもと教師の対話の中で「成長」をとらえ、一人ひとりの長所や個性を引き出しながらプラス面をより伸ばす通知表となっている。


形成的評価の役割

 「診断的評価」「形成的評価」「総括的評価」の3段階で言えば、通知表は「総括的な評価」である。しかし、結果を知らせるだけになり、通知表を見た子どもが次の学期や学年をがんばろうとする励みにならなければ、通知表本来の意味がない。  
 生涯学習の観点からも、学校での全ての評価は、学力を保証し、成長を保証する形成的な評価の側面がある。よい通知表は、子どもの努力や進歩の様子が読みとれるものである。よい点を認めて、やる気を起こさせる役割があることを忘れてはならない。
 形成的評価の役割を重視した新しいタイプの通知表としては、観点別評価表を教科ごとにつけて、分厚いファイル形式にした通知表がある。観点別評価表は、年度当初に子どもや保護者に提示できることが望ましい。また、同じファイル形式でも、ポートフォリオの考え方を取り入れ、通知表自体をポートフォリオにしたタイプの通知表がある。


<参考文献>
(1)「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)・評定に関する調査」『総合教育技術・2002年11月号』小学館、2002年
(2)佐藤 真・古川 治 編著 『ポイント解説・総合的な学習を生かす評価(小学校)』ぎょうせい、2002年


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