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『総合教育技術 2002年11月号』用 原稿

発行所 小学館


○特集「全国600校アンケート実施/<絶対評価>の徹底−取り組みの現状と課題」


○「全国小学校・中学校600校アンケート結果発表」

「わが校の<絶対評価>の徹底−取り組みの現状と課題、悩み」

小学校編

<苦労してつくったが、基準設定や客観性に不安が残る>


  吹田市立桃山台小学校 
  野田 健司 


 『児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について』(教育課程審議会答申・平成12年)を受けて、昨年度(平成13年度)文部科学省から『指導要録の改善等について』、国立教育政策研究所から『評価規準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料』が出された。
 これらを参考にして、各学校は今年度(平成14年)新教育課程の完全実施を「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」で、行ったはずである。
 それでは、実際にどのような取り組みが行われたのだろうか。アンケート結果を分析し、現状と課題を考察したい。
1 評価規準の必要性

 「『目標に準拠した評価』をするときに、評価規準を用いて評価を行いましたか?」という問いに対しては、「はい」という答えががほとんどだった(84.6%)。また、「いいえ」という学校も「評価規準は、現在作成中だから」という答えだった。絶対評価では、予め観点を設定しておかないと評価の客観性や信頼性を損ないかねない。各学校では、絶対評価における評価規準の必要性を感じているようだ。
 評価規準については、約半数の学校が「自校でつくった評価規準」を使用している。また、半数は「教科書会社等の評価規準を使用」し、「国立教育政策研究所から出された評価規準を使用している」学校が4割強ある(図表1、複数回答)。自校で評価規準を作成した学校も、各教科書会社等の評価規準や国立教育政策研究所から出された評価規準を参考にして、評価規準を作成したと思われる。


2 判断基準のABCと設定方法

 観点別評価を行う際に、66.7%の学校が判断となる基準を設定している。しかし、27.8%の学校が基準の設定をしていない。基準を設定せずに、どのようにして判断したのだろう。印象評価だろうか。
 「判断基準を設定した場合、どのような基準か」という問いに対して、かなりの学校が具体的な回答をしている。ここでは多くの学校が、ABCの基準を○%以上などの数値で表している。例えば、「85%以上でA、70%以下でC、その間がB」などである。地域や学校により、かなりのばらつきがあり、Aは80%以上から95%以上までの学校が、Cは50%以下から80%以下の学校がある。
 同じ学校でも、低・中・高の学年別でその数値を変えているところもある。
 また、%表示の数値ではなく、次のような基準でという回答もあった。

○子どもの学習内容を総合的にとらえた。
○規準を実際の学習活動にあわせた子どもの活動で示したもの。
○目標分析を行い、観点別に沿って評価基準を具体的に設定した。
○単元での評価の積み重ねとして教科書会社のものがベース。
○市教委作成の「資料」における各教科の単元目標を基準Bと考え、それ以上をA、それに満たない場合をC。
○国立教育政策研究所から出されたものを基におおむね満足をB、それ以上のものをA。
○関心・意欲は、発言・取り組みの様子を段階的にとらえて。思考力はノートの記述。技能と知識理解はテストの点数。
○記述テスト、作文、観点に照らしての様々な資料(個人の記録表)を数値に置き換え、ABCで。
○子どものどういった学習態度や様子が見られたらAなのかを決めた(話し合い)。

 判断基準の設定方法については、73.5%の学校が、学校で話し合って基準を決めている。自由記述の中には、次のような回答があった。

○具体的な子どもの姿を評価規準を基に検討し、共通理解を各学年で図った。
○評価計画を学年で作成し、学級格差が大幅に生じないような話し合いを持った。
○評価基準を各学年で作成し、それに基づいて評価を行うようにした。

 小学校の場合、学校全体で話し合ったというよりは、各学年での話し合いで基準を決めたというのが現状ではなかろうか。学校全体で共通理解を図ることが課題といえる。


3 評価を進めていく上での困難
 
 多い順から、次の通りである(図表2、複数回答)。

1「観点別や評定を判断する基準の設定が難しい」  
2「客観性のある評価であるかどうかが不安である」
3「観点別の記録などが大変で、作業に時間がかかる」
4「新しい評価について教職員の共通理解が難しい」
5「評価、評定への総括化が難しい」


 各学校で規準を決め、基準を設定する難しさがよく表れている。規準までは何とか決めることができても、その各項目に対して基準を設定していくのは、かなりの時間と労力がいる作業である。小学校では、各教科ごとの基準を決めることが難しい。
 また、苦労して決めた評価でも、客観性がある絶対評価になっているかどうかが、自信が持てないようだ。
 基準が細かければ細かいほど、判断しやすいかもしれないが、その基準作成に時間がかかる。さらに、細かければ細かいほど、各観点別の評価をし、記録していくことが大変である。


4 観点別評価、評定への総括化

 「1学期末の観点別評価への総括化をどのように行いましたか?」という問いに対して、71.0%の学校が「単元や学習過程でのA、B、Cを合計したり、数値化したものをもとに、A、B、Cの各段階での子どもの姿を想定したりして、それと照らし合わせて総括化した」と答えている。
 この「子どもの姿を想定し」というところが難しい。目の前にいる子どもの姿と照らし合わせて総括化をすることになるが、どのようにして、その子どもの表れを把握し、評価していくのかが重要だ。従来ある相対評価の分布にあわせて、いわゆる「相対評価を加味した絶対評価」になってしまわないか危惧されるところである。

 「1学期末の評定への総括化をどのように行いましたか?」という問いに対して、「単元や学習過程でのA、B、Cを合計したり、数値化したものをもとに、1〜5の各段階での子どもの姿を想定したりして、それと照らし合わせて評定をだした」が最も多く、38.3%である。以下、「単元や学習過程でのA、B、Cをそれぞれ数値化したものをもとに評定をだした」13.6%、「単元や学習過程でのA、B、Cの数を合計して評定をだした」11.7%と続いた。いわゆる「相対評価を加味した絶対評価」に陥る危険性はここでも指摘される。
 また、1学期は評定を行っていないという回答も3分の1ほどあった。小学校では、年度末にのみ評定をし、年度途中では評定をしないという傾向も見られる。



5 最も重視する評価方法

 「『目標に準拠した評価』を本格的に実施するにあたり、どのような評価方法を重視していますか?」という問いに対して、図表3のような回答があった(複数回答)。最も多く、ほとんどの学校が重視している評価方法は、「小テスト、単元テストを中心に目標の実現状況をみていくこと」であり、次が「補助簿をつくり、児童の記録を充実させ、目標の実現状況をみていくこと」である。以前よりも細やかな方法(回数が多くなった)が重視されているようである。
 また、ポートフォリオ的な評価を取り入れた学校が3分の2ほどある。以前からある「小テスト・単元テスト・補助簿」と同様に、「ポートフォリオ」が多くの学校で重視されていることは注目に値する。今後、より多く活用される方法になるだろう。
 複数回答の質問に対して、たくさんの項目が選択されていたことから、さまざまな方法を組み合わせて、よりよい評価方法を探ろうとしている現場の努力がよくわかる結果である。

 絶対評価の本格的な実施にあたり、テストの回数が変化したかどうかについて、小学校で最も多かった回答は、「これまでと変わらない」である。中学校では、「小テストなどを含めて、テストの回数は増えた」であり、中学校との差が特に目立った結果だった(図表4)。
 小学校では、観点別評価導入の時点から絶対評価を取り入れてきたと考えているので、今回の改訂では変える必要性をあまり感じていないのではないだろうか。


6 通知表の見直しと指導の改善、評価に取り組む体制および組織

 「『目標に準拠した評価』を本格的に実施するにあたり、通知表を見直しましたか?」という問いに対して、「観点別評価の項目の内容を変えた」ところが72.2%、「通知表の様式を変えた」が61.7%ある。新学習指導要領への移行・本格実施に伴い、保護者によく理解されるよう、新たなものに変える必要性を感じたのであろう。具体的には、「文章記述での評価を多くした」「評定の欄をなくし、観点別評価のみにした」などである(図表5、複数回答)。
 ただ、「生きる力」としての自己学習能力を育てるために大きな役割を果たす、「自己評価を書き込める欄を設けた」学校はごくわずかであった。

 「『目標に準拠した評価』を行うことにより、指導でどのような点が改善されましたか?」という問いに対して、最も多かった回答は、「基礎基本の定着を意識し、児童の様子をしっかりと見ることができるようになった」である(図表6、複数回答)。次は、「授業の目標をより明確に持ち、指導することができるようになった」である。今まで以上に、目標をはっきりさせ、子どもの姿をしっかり見ようとしているようだ。評価のために評価するのではなく、指導に生かすために評価することが望ましいのは言うまでもない。

 「学校内で、評価に取り組む体制および組織はありますか?」という問いに対して、62.3%の学校が「はい」と答えている。しかし、「その体制および組織はどのようなことに取り組んでいますか」という問いに対する記述欄を見てみると、定期的に行われていないのではないかという疑問を持った。通知表改訂だけの委員会になってしまっている学校がいくつもあるようだからだ。
評価に取り組む体制は、今回のような学習指導要領改訂時(通知表を変えようとする時)だけではなく、日々の評価活動をスムーズに行うため、日常的な学校組織として必要である。


7 絶対評価について保護者への説明

 「『目標に準拠した評価』の実施に伴って、保護者に何らかの説明をされましたか?」という問いに対して、最も多かった回答が「学級・学年の懇談会などで説明をした」であり、次は「学校便りなどで説明をした」になっている(図表7、複数回答)。保護者との対応は、学級や学年が中心になっている小学校の特徴がよく出ている。しかし、説明内容(評価の規準や基準の設定を含めて)が、学級・学年任せになっていないだろうか。学校として共通理解を図り、保護者に説明することが非常に大切である。
 ちなみに、中学校で最も多かった回答は「PTA総会などで説明を行った」が75.3%以上だったが、小学校では40.1%だけである。

 「評価規準を保護者や子どもに説明しましたか?」という問いに対しては、残念なことに、過半数が「保護者、子どもともに、評価規準は示していない」であった(図表8)。評価は誰のためのものなのか、何のためにしているのかを考えると、評価規準や基準は保護者や子どもへ明確に伝えるべきであろう。2割弱の学校が「保護者、子どもともに、評価規準を示している」であった。今後こういう学校が増えていくことが望まれる。


8 課題や問題点

 最後に「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」の実施について、多数寄せられた課題や問題点などの自由記述の代表例を紹介して、まとめとしたい。

●評価規準の作成が大変だ
○小学校では、全教科を指導するため、各教科の評価規準の作成作業が大変である。また、芸術教科の評価は難しい。
○大きな課題は評価規準の設定だ。学年間のばらつきもないようにしなくてはならない。
○各学校の実態に沿った評価規準づくりをするための時間がとりにくい。

●基準の設定が困難だ
○つくる際に一番難しかったのは、AとBの違いをどう文章化するかだった。文章化したものにも自信がないし、文章化の仕方によって評価が分かれるといった心配もある。
○見えにくい学力である「関心・意欲・態度」について評価基準をどうつくり、子どもの姿をどう見取るのか、整理する必要がある。

●学校独自の評価規準が必要なのか
○学校独自の単元等がある場合は別だが、なぜ評価規準を各校バラバラにつくらねばならないのか大変疑問に思う。共通の規準があってそれに基づいて評価するべきだ。
○基準づくりの段階で市レベルでの作成が必要であると考えてきたが、実現されなかったことが最大の悩みであり、心配である。

●評価をして出てきた問題点は何か
○文章上での評価規準は設定できても、子どもの具体的な活動をどのように見ていくのかが難しい。運用にあたっては、教師の主観や迷いもでてきて絶対評価といえるのかどうか不安である。
○Aの多いクラス、Bの多いクラスなど差が出てきた。客観性のある評価になっているか不安である。また、評価に極端な差が出た場合、教員の指導力や学校の批判につながるのではないか。
○Cと判断された児童に対する指導の手立てまで考えられていない。
○評価に時間がかかりすぎ、追われてしまう。
○カードやノート類での評価では教師の主観が入り、同じものを見ても評価にばらつきがある。
○各学年・各教科ごとに評価規準・達成基準の作成が必要であるが、教師間でもその判定尺度・達成(到達)の基準(水準)をどこに置くかについて共通理解が難しい。
○評価規準を児童の姿としてとらえた時、客観性のあるものになっているかどうかがわからない。新しい評価方法についての教職員間の共通理解を持つことができない。

●今後の課題は何か
○実践を通して評価規準を見直し、実行可能な評価規準となるよう改善をすること。
○評価のための評価ではなしに、日々子どもたちの充実した学びに結びつく指導(学習)と評価の一体化を大切にしたい。
○評価規準と基準の公開に向けて動いている。



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