1 総合的な学習の通知表
通知表に、総合的な学習の評価をどう記載すればいいのか。 通知表は法律で定められた表簿ではないので、各学校で多種多様な形態をとることができる。各地の学校で現在使用されている通知表の典型的な例を紹介し、総合的な学習を生かす通知表の在り方を考えたい。
総合的な学習に関する所見欄を設けることで、教師の側に「総合的な学習で必ず評価をする」という意識づけができる。 表記の方法としては、学期ごと(前期・後期の2期制の学校もある)に枠の中を分けている通知表と年間を通して記入する1つの大きい枠を設けている通知表がある。また、観点を定めて詳しく明記しておくことは、保護者にとってわかりやすい工夫である。
総合的な学習に関する欄を設けて、観点項目別に記号を使用し記入する方法がある。がんばった項目だけに○をつける学校が多い。全ての項目に◎・○・△の3段階などでつけている学校もある。観点項目は、学年別で3学期間共通の通知表が多い。記号で記入するだけでなく、「気づいたこと」という形で自由記述と併用する学校が増えてきている。
学習指導要領による総合的な学習の時間のねらいは、次の2点である。 「(1)自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。 (2)学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること。」(1) このねらいを達成するために評価をするのだから、「指導と評価の一体化」の視点から考察すれば総合的な学習の評価は子どもの自己評価が中心になる。 そこで、総合的な学習に関する自己評価欄を設け、自己評価を中心とした形で書く方法がある。観点別に努力ができたら○をつけ、文章表記もする。
ただし、まったく子どもの自己評価だけではなく、教師からの評価欄を設けて併記すべきである。
総合的な学習の時間のねらいを考慮し自己評価を中心とした考え方として、ポートフォリオを生かした通知表がある。 子どもの学びや成長を自己評価や他者評価(友達、教師、専門家、地域の人々、保護者)など、多角的な視点からとらえて書く方法である。
・自分が成長したこと
・地域の方からのひとこと
・先生から
・友達から
・家の人から
ポートフォリオは、子どもによる子どものための「究極の自己評価」である。「収集」「選択」し「振り返る」ことで次の学びに生かす、「学習と評価の一体化」である。子どもと教師の対話の中で「成長」をとらえ、一人ひとりの長所や個性を引き出しながらプラス面をより伸ばす通知表となっている。また、最近では、通知表自体をポートフォリオ形式にしている学校も出てきている。これは、特筆すべきことである。
自己評価を中心として、総合的な学習を生かす通知表を作成したとしても、教師評価を記入する必要がある。ここでは、学習指導要領で例示された学習活動別に分類し、記入文例を作成してみた。横断的・総合的な課題(「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」)については、それぞれで項目を、児童の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題については、「その他」として項目をまとめた。
○姉妹都市であるバンクスタウンからの外国人講師との交流をきっかけに、オーストラリアの子ども達の遊びや地域の様子などに興味をもち、質問事項をたくさん考えました。 ○韓国と日本の違いを「気候、食べ物、服装、遊び」などの視点をもってまとめることを通して、日本のことを深く理解しました。また、「チャング」の練習を始めるなど、朝鮮半島の民族音楽にとても興味をもちました。 ○児童会活動として取り組んだユニセフの募金運動をきっかけに、アジアやアフリカの子ども達の生活に目を向けるようになりました。「今、自分達にできることは何か」という視点から、友達と協力して壁新聞を作り現状を紹介しました。 ○ゲームや歌などの体験的な活動を通して、数の数え方、身近な物の名前、あいさつの仕方等、日常の簡単な英語を話したり聞いたりしました。身ぶり手ぶり等を交え、英語で表現することに慣れ親しむことができました。 ○インドの留学生からインドのダンスを教わり、楽しく踊るだけではなく、インドのスポーツ「カバディ」に興味をもち、熱心に調べて、実際にクラスの子ども達と楽しんで遊んでいました。
○自分のテーマに関係あるパンフレットや新聞記事などの資料をポートフォリオに収集し、それらを活用して調べていました。収集した情報を適切に選択して自分なりに整理し、上手にまとめることができました。 ○「コンビニ探険隊」での調査では、何軒か取材体験を積み重ねているうちに、電話のかけ方、インタビューの仕方、メモの取り方等の情報収集の基本をしっかりと身に付けることができました。 ○自分に必要な情報を探すために、図書館や公民館、市役所などへ行き、進んで資料を収集しました。また、よく似た課題をもつ友達と情報を交換し合い、協力して調査することができました。 ○平和学習でインターネットを活用し、原爆や広島の歴史について必要な情報を入手して、自分なりの考えをもつことができました。 ○自分の調べたことをまとめて発表する時に、適切な方法(レポート、模造紙、ペープサート、紙芝居、寸劇、ビデオ、コンピュータなど)を選ぶことができました。発表会場にいた子ども達も興味深く聞いていました。 ○マウスやキーボードの使い方(ローマ字入力)を覚えて、コンピュータを操作できるようになりました。情報の収集や学習のまとめにインターネットで検索したり、CD−ROMの百科事典や図鑑などを活用したりして、コンピュータを積極的に利用しています。 ○「ケナフ」について、全国の同じ課題に取り組んでいる友達と電子メールのやりとりを通して、情報を交換し、自分の研究に役立てていました。電子メールに画像を取り入れる方法も覚えました。情報活用や情報処理の力がついてきています。 ○調べてきたことをホームページで情報発信するなど、とても意欲的に取り組むようになってきました。見る人がわかりやすいように、グラフや画像を使用し、自分の住んでいる地域の特徴について伝えていました。
○「お茶から始めよう」の体験的な学習を通して、資源としての植物やペットボトルのリサイクルなどの身近な問題から、地球規模の環境問題についても、自分の考えをもつことができるようになりました。 ○自分から進んで農家の人に栽培方法を聞きに行き、「バケツ稲作り」を始めました。カラスやスズメなどの鳥から稲穂を守るために、かかしやネットの利用など様々なアイデアを出し、積極的に学習していました。 ○「私たちの町、千里ニュータウン」の学習を通して、地域の人々の思いや願い、努力の様子を知りました。人々がかかわり合い、助け合って生活することの大切さに気づき、地域の人と清掃活動に取り組んでいます。 ○図鑑やインターネットを利用して昆虫や植物の生態について調べ、「生き物にやさしい」ビオトープの設計図をかきました。学年集会で発表し、採用されました。作業が始まっても、池の水はけをよくするための溝を何回も掘り直すなど、熱心に活動していました。 ○「芥川を探る」という学習で、川の上流から下流まで実際に歩いて調べ、水質検査を行い、調査結果を絵地図にまとめてわかりやすく発表しました。川の水質を悪くしている原因を考え、これからの自分達の生活の仕方と川とのかかわりについて提案をしました。 ○「リサイクルクル・ワンダフル」というテーマで、友達と発表を行いました。商店街の人や古紙回収業者の人にインタビューし、ごみの減量やリサイクルの方法などを調べ、自分達の普段の生活でどうしたらごみを減らせるのか自分達なりの考えをもって、みんなに呼びかけることができました。 ○身近な環境についての学習で、自宅の前を通っている道路の騒音の実態を数ヶ月に渡って詳しく調べました。調べたことや結果から考えたことをもとにして、写真や地図、グラフを入れたポスターを制作しました。問題意識をしっかりもって、自分の課題を追求することができました。
○地域の高齢者の方を音楽会に招待したとき、イラストを入れ、とてもていねいな文字で手紙を書きました。お礼の返事をいただき、その後も交流が続いています。平和集会では、戦争体験も聞かせていただき、生きることや命の大切さを真剣に受け止めることができました。 ○保育園児との交流の計画を知り、自分には何ができるか、どんな方法でかかわりをもちたいかを真剣に考えていました。訪問交流をした後、相手の気持ちを考えて進める大切さがわかりました。次の訪問でやってみたいこととして、紙芝居とペープサートに決めました。 ○障害をもっている方との交流学習を通して、バリアフリーについて学びました。実際にアイマスク体験や車椅子体験を通して、障害をもつ人の気持ちを考えました。 ○「みんなにやさしい町づくり」を意識して地域を歩き、放置自転車、段差等に対して、自分達ができることは何かを考えました。高齢者や障害をもつ人にやさしい町づくりへの提案をまとめ、わかりやすく発表しました。 ○「わたしたちの心と体の成長」の学習では、自分の体について関心をもち、地域の医師や本校の栄養士から「人間の健康について」の話を聞いて、調べることができました。調べていく中で、心身の健康の大切さについてよく考え、自分の心と体にとても気を配るようになりました。 ○「生命の誕生」の学習では、自分の生い立ちについて調べ、誕生したときの周囲の人々の喜びなどを知り、命の大切さを理解することができました。その後の「成長について」の学習の中で、「みんな違って、みんないい」と、自分のよさや友達のよさに気づくことができました。 ○スポーツテストを通して、自分の体や運動への関心を強くもちました。また、「健康な生活」の学習の中で、運動のほか食事や睡眠、規則正しい生活が健康のもとであることに気づき、実践しようとしていました。
○「昨日、今日、明日」というテーマで、過去を振り返り自分の未来を見つめるという学習をしました。家族や親戚へのインタビューや、地域の人々とのたくさんの出会いの中で、いろいろな仕事への興味が高まり、自分のよさを生かす職業や生き方を真剣に考えることができました。 ○自分の身近なことから課題を見つけ、自分なりの解決方法をいろいろと工夫しました。自分の設定したテーマにこだわりをもって、とことん追求していった積極的な姿勢が素晴らしいです。 ○5・6年生が合同で取り組んだ中間発表会では、しっかりとメモをとって友達の発表を聞いていました。また、地域の特色である「山田の権六踊り」については、自分のテーマに近いため進んで質問を行い、参考にしていました。 ○グループでの活動を通して、友達と協力して作り上げていく楽しさを体験することができました。自分の考えだけではなく、友達の意見も積極的に取り入れながら、課題を追求していきました。 ○ポートフォリオを自己評価として振り返りに使用するだけではなく、相互評価に活用することで、友達のよさを見つけ、伝え合うことができました。互いに伝え合うことで、新たな自分のよさに気づき自信をもつことにつながりました。 ○調べてわかったことを、どのように伝えればわかってもらいやすいのかを考え、友達と劇にして観てもらう計画をたてました。自分達で脚本を書き、大道具や小道具を作り、何度も練習して劇を完成させることができました。「ももっこまつり」のステージで、子ども達に大好評でした。
以上、教師評価の通知表記入文例をまとめてみたが、各学校で作成した評価規準(第6章参照のこと)に応じて、活用されたい。