自己評価は、自分の学習状況や生活を見つめ、次の行動の指針とし、自己を高めていくためのものである。「生きる力」としての自己学習能力を育てるために、大きな役割を果たす。
しかし、今回の調査では、この自己評価を書き込める欄を、通知表に設けた学校はごくわずかであった。
子どもの主体性を重視した子どもによる自己評価欄を設けて、教師からの評価と併記している例として、大阪府吹田市立岸部第一小学校の通知表がある(図表19-37ページ)。
この通知表の特徴として、次の4点がある。 ○「わたしのめあて」として、学期ごとに自分のめあてと振り返りを書く欄がある。 ○全ての「教科」や「生活の様子」で自己評価を取り入れ、記入する欄がある。また、単純な3段階ではなく、その間も表現できるよう数直線にしている。 ○学習者である子どもたちに通知表の評価の意味がわかるよう、表記に工夫をしている。 ○学期末だけでなく、学期途中にも渡し、形成的評価の役割を強めている。伸びた点については、再度記入できるようにしている。
次に、「学びのきほん」として、学校生活全般にかかわる学びの傾向を示す欄に、自己評価欄のある例が、北海道教育大学附属札幌小学校の通知表である(図表20-38ページ)。
この通知表の特徴として、次の5点がある。 ○教科学習だけではなく、学校行事や特別活動など、学校生活全般に関わる学びの傾向として、「学びのきほん」の欄を設けている。 ○評価の観点を8つあげ、次のように2つに分けている。 ◎探求する子‥‥「豊かな感性」 「思慮深さ」 「ていねいさ」 「ねばり強さ」 ◎共感する子‥‥「他者尊重」 「協調性」 「自発性」 「貢献」 ○教師は、他の子との比較ではなく、その子自身の学びの傾向を見取り、よさと課題を示している。 ○子どもは、「自分を知る子」として、自分のよさと課題を見つけるという観点で評価している。 ○「取り組みの様子」として、「がんばったこと」や「これからのめあて」の記述をする欄もある。
次に、生活面でも学習面でも、自己評価用の大きな記述欄がある例が、埼玉大学教育学部附属小学校の通知表である(図表21-40ページ)。
この通知表の特徴として、次の4点がある。 ○生活面と学習面に分かれていて、学期ごとの記入欄が大きい。 ○自己評価に対して、保護者からと担任からのコメントを書く欄が毎学期ある。 ○子ども用の「学習ガイド」と「生活ガイド」を別に印刷して渡している(図表22-41ページ)。 ○「努力すること」として、学期ごとの目標を書く欄がある。その際に「学習ガイド」と「生活ガイド」を参考にしている。
自己評価欄がある特徴的な通知表としては、新潟大学教育人間科学部附属長岡小学校の通知表(図表23-42ページ)もあげられる。「学習や生活をふりかえって」という欄があり、観点別(◎○△の3段階評価)と自由記述を併用している。
また、京都教育大学教育学部附属桃山小学校の通知表(図表24-43ページ)は、「○学期をふりかえって」という欄で、「たのしかったか」「がんばったか」「よくできたか」のそれぞれの項目について、5段階の自己評価ができるようになっている。
2 発達段階に応じた自己評価の方法を取り入れる
今回の調査で残念だったのは、せっかく自己評価を取り入れた先進的な学校でも、全学年、同じ形式の自己評価欄を使用しているところが多かったことだ。 自己評価の方法も、他の学びと同じように、繰り返すことで身につくものである。「自己評価欄さえあればよい」「どの学年の子どもも、一律の方法でできる」ものではない。子どもの発達段階に応じたものでなくてはならない。 発達段階を考慮して、自己評価欄を入れるとすると、例えば、低学年は○や△などの記号化で簡単にする。中学年では記号と文章で表記し、高学年では、目標に照らして文章で記述する方法などが考えられる。自己評価欄も、各学年の表現能力の違いを考慮してつくることが望ましい。 これからの通知表の課題として、発達段階に応じた自己評価欄の研究・開発が望まれる。
3 通知表の自己評価を日常の学習に生かす
今回の調査では、自己評価欄を設けた学校で、日常的には、どのように自己評価をしているのかはわからなかった。 そこで、子ども自身が生活や学習の仕方を振り返るために、すべての評価項目に自己評価の方法を取り入れている大阪府吹田市立江坂大池小学校の例を紹介したい(図表25-44ページ)。
江坂大池小学校では、「自己評価については、通知表にいたるまで、各時間、あるいは各単元のポートフォリオ評価や自己評価を行い、最後に学期を振り返った後、記入している」とのことだった。
自己評価する時には、評価する子ども自身が、何をどう評価したらいいのか、評価する客観的な規準や観点がわかっていること、学習ノートやファイル、テスト、ポートフォリオなど、振り返る材料が具体的にあることなどが大切である。 前述のように、自己評価力も、積み重ねることで身につく。通知表に記入する時だけではなく、日常の学習で自己評価を取り入れることが必要である。
自己評価により、日常の学習と通知表が結びつけば、通知表から教育活動を見直すことができるようになる。
現行学習指導要領の目玉として、総合的な学習の時間がスタートした。週あたりの時間数も多い。しかし、「評価はできるが、評定がそぐわない」など、各教科の評価方法とは違いがある。そこで、ほとんどの学校は、総合的な学習の時間を評価するため、教科の欄とは別に独立した欄を設けたようだ。
「○○タイム」「○○っ子時間」「○○学習」のような学校独自のタイトル名の評価欄を設けているところと、「総合的な学習の時間」「総合的な学習」「総合学習の様子」など、「総合」の名をつけているところがある。
2 観点を明確にする
学習活動のタイトル欄や自由記述欄だけを設けているところは多いが、観点を記載する欄があるところは少ない。しかし、各学校でどのような観点に基づき評価しているのかを詳しく明記する方が、保護者にわかりやすい。
観点を明確にした総合的な学習の時間の評価欄の例には、次のような学校がある。
・京都府亀岡市立保津小学校(図表26-46ページ)
・大阪府河内長野市立天野小学校(図表27-46ページ)
・O大学附属P小学校(図表28-47ページ)
・宮崎大学教育学部附属小学校(図表29-47ページ)
・愛知県丹原町立中川小学校(図表30-48ページ)
・山形県酒田市立鳥海小学校(図表31-48ページ)
・秋田県千畑町立千畑南小学校(図表32-49ページ)
・兵庫県小野市立小野東小学校(図表33-49ページ)
・大阪府八尾市立八尾小学校(図表34-50ページ)
・大阪府大阪狭山市立第七小学校(図表35-50ページ)
・北海道札幌市立美しが丘緑小学校(図表36-50ページ)
教科による評価基準のようにはならないとしても、総合的な学習においても評価規準を具体的にし、観点を通知表に記載する方が、学習のねらいが保護者にわかりやすく、子どもも活動しやすい。 また、指導要録との関連で考えると、「学習活動」「観点」「評価」の3段構えが記入しやすい。
3 自己評価を取り入れる
現行学習指導要領による総合的な学習の時間のねらいは、次の2点である。
(1)自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。 (2)学び方や、ものの考え方を身につけ、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること。
このねらいを達成するために評価をするのだから、「指導と評価の一体化(学習と評価の一体化)」の視点から考察すれば、総合的な学習の評価では自己評価が中心になる。通知表の総合的な学習の評価欄には、ぜひ、自己評価を取り入れたい。 自己評価の欄を設けているところは、自由記述だけのところ、観点に基づいて記号だけで評価しているところ、両方を併用しているところがある。
・北海道教育大学教育学部附属函館小学校(図表37-51ページ)
・大阪府吹田市立岸部第二小学校(図表38-51ページ)
1 わかりやすい資料を配布する
保護者に通知表の見方を説明していない学校は、ほとんどない。多くの学校がPTA全体会や学年・学級懇談会などの機会を利用して説明会を開いて、理解に努めている。 別刷りのプリントを保護者へ出しているところも多い。どのような内容で、どのように評価しているのか、具体的な場面が浮かぶような資料を配布すると保護者にわかりやすい。
評価資料として、評価規準や内容の一覧表を出している学校もある。
・石川県金沢市立南小立野小学校の「通知表について」(図表45-55ページ)
・石川県金沢市立南小立野小学校の「通知表・評価の観点」(図表46-56ページ) ・岡山県岡山市立岡山中央南小学校の「通知表が変わった!」(図表47-57ページ)
・U県V小学校の「通知表の見方」(図表48-58ページ)
・A県B小学校の「学習の様子の評価の観点」(図表49-59ページ)
2 保護者からの連絡欄を取り入れる
通知表は、学校から家庭に一方的に通知・通信する役割だけでなく、家庭から学校・担任教師へ連絡するなど、学校と家庭の間で双方向のコミニュケーションを担う役割がある。 だが、まだまだ保護者から学校や担任教師への連絡欄があるところが少ない。 連絡欄を取り入れた例には、次のような学校がある。
・北海道教育大学附属函館小学校(図表50-60ページ)
・秋田県由利郡大内町立上川大内小学校(図表51-61ページ)
・北海道札幌市立美しが丘緑小学校(図表52-61ページ)
・宮城県伊具郡丸森町立舘矢間小学校(図表53-62ページ)
・茨城大学教育学部附属小学校(図表54-63ページ)
励ましの言葉として欄があったり、自己評価と組み合わせているなど、各校での工夫が見られる。
最後に、3章の「(1)自己評価欄を取り入れる」の項で述べた埼玉大学教育学部附属小学校の「通知表、学習・生活ガイド、解説書の活用の手順」を紹介したい(図表55-64ページ)。児童・教師・保護者が相互に作用しあいながら、日常の学習と通知表を結びつけていく参考になるだろう。