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雑誌掲載原稿(『新教育課程で体育・保健授業はこう変わる』楽しい体育の授業'98年12月臨時増刊号)

☆「運動の学び方」をどう指導するか

<発達段階に応じた「めあて学習」>

高槻市立日吉台小学校  野田 健司

一、「審議のまとめ」から

 教育課程審議会『審議のまとめ*1』の「体育・保健体育」改善の具体的事項として、〈小学校(体育)〉では、「児童の発達段階に応じて各種の運動に親しむことにより運動が好きになるようにするとともに、身近な生活における健康・安全に関する実践的な理解を図るため、次のような改善を行う」とある。
 また、いくつかの運動領域についての「内容の改善」や、「現在、各学年ごとに指導することとしている運動をいずれかの学年で指導することができるようにする」など、「現在の児童の体の状況及び発達段階に応じた運動の指導に重点を置くことができるように内容の改善を図る」と述べられている。
 しかし、運動の内容だけを発達段階に応じて改善するのではなく、「運動の学び方」自体を発達段階に応じさせる必要があるのではないか。

二、「めあて学習」という学び方の経緯

 『審議のまとめ』の教育課程の基準の改善の方針を読んでも、「ゆとり」の中で「生きる力」を育むという考えや、生涯学習社会という基本的なコンセプトは変わらない。だから、小学校では個に応じた指導としての「めあて学習」が「運動の学び方」として推進されるだろう。
 「めあて学習」が、その名称を認識されだしたのは、平成三年に文部省より『小学校体育指導資料・指導計画の作成と学習指導*2』が出されてからである。個に応じた学習指導の方法として出された、学習過程「モデルA(スパイラル型)・モデルB(ステージ型)」に現場の関心が集中した。モデルAで使用された「めあて」、モデルBで使用された「ねらい」と言う言葉が、「めあて学習」と今日言われるようになった語源である。従って現在も「めあて・ねらい学習」と言う場合もある。
 ところが、「指導法としての学習過程が一人歩きし、形式化するという実体をも生み出した。さらに、学習過程の一人歩きは、個に応じた学習指導の方法としての学習過程『モデルA・モデルB』それ自体が、『めあて学習』と同義語との理解を形成し始め、本来の概念である人間尊重の精神を基調にした『より新しい体育』の総体としての『めあて学習』との間に大きなギャップが出てきた*3」。
 つまり、形を当てはめることが先行したために、学習過程は「モデルA・モデルB」になっていても、運動の機能的特性との関わりがなく、技能中心や体力づくり中心になっていたり、「モデルA・モデルB」の形になっていないと指導案として認められないなど、マニュアル化・画一化して、授業の形骸化もみられた。その結果、子どもの主体性を重視するために「教師は全く教えてはいけない」「子どもが楽しんでいたらそれでいい」などの「めあて学習」の誤った認識が行われ、そのことで「めあて学習」への批判も広がった。
 平成七年に文部省より再び『小学校体育指導資料・新しい学力観に立つ体育科の授業の工夫*4』が出された。その中で、「めあて学習」は単に学習過程の問題としてではなく、運動の学習の総体として次のように再定義され、現在に至っている。

◎めあて学習は、運動領域全般にわたって、学習の進め方を示したものである。それは、次のような特徴を持っている。
ア、自発性の重視                                              運動の楽しさや喜びに触れる活動に向かって、おもしろそうだやってみたい、と自ら進んで取り組むこと   を重視する。
イ、めあての自己決定の重視                                         めあてを子ども自身が工夫したり、決定していく活動を重視する。 
○ここでいうめあてとは、次の三つを意味する。
    (1)目標を設定すること。 (2)課題を選択すること。(3)活動を決定すること。   


三、発達段階に応じた「めあて学習」

 このような「めあて学習」の特徴を学習の最初の段階から子ども自身が身につけていないことが問題である。これを考慮しなければ、「子ども自らが学ぶには、カードや学習資料を与えておけばよい」「ペアやグループを組むだけで、子ども達は相互に学びあう」「一斉指導を行ってはいけない」などの誤解が再び生じる。
 教師は、子どもが今持っている力でそれぞれの運動の楽しさや喜びに触れることのできる活動を提供したり、「めあて」の中身を整理して子ども自身で工夫できるような手がかりを示していく必要がある。それは、子どもの運動の楽しみ方の発達段階だけでなく、子どもの学び方の発達段階に応じなくてはならない。
 発達段階を考慮して、「めあて学習」の学習方法を三段階に分けてみると、次のようになる。*5

A、ある動きや運動がしたいという欲求を持つ。
   ↓やりたいことができる。
(先生や友達のよい動きをまねしたり一つひとつの動きに工夫を加えたりして、動きが広がり、よりよい動きができる)
B、自分のめあてを持つ。
   ↓めあてを意識して学習できる。
(友達との教え合いの中でよい動きや悪い動きが発見できる。また、動きや技のつまずきを指摘された箇所を自らのめあてとできる。)
C、めあてを達成するための手だてを計画する。
   ↓場づくりができ、めあてを解決していける学習ができる。
(学習資料を利用したり、友達に見てもらったりして、技能的なつまずきを発見し、自らのめあてとできる。また、高度な内容や新しい技に挑戦するめあてを持つことができる。)


 このABCの三段階は、子どもや学級の実態に応じて、何年生からでも適切な段階から指導すべきであろう。

〈引用文献及び参考文献〉
*1教育課程審議会『審議のまとめ』1998
*2文部省『小学校体育指導資料・指導計画の作成と学習指導』東洋館出版社1991
*3杉山重利 他 編著『小学校体育「めあて学習」の進め方(みんな仲良く楽しい体育)』P.6 東洋館出版社1997
*4文部省『小学校体育指導資料・新しい学力観に立つ体育科の授業の工夫』東洋館出版社1995
*5吹田市小学校教育研究会体育部『平成6年度研究のあゆみ』1995

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