いつか、君はHEROになる





 アルガナ勲章を手にした翌日の4月6日、真っ赤なスカーフを受け取った。芝村司令の誕生である。善行の采配に不満があるわけではない。善行の使命と、OVERS@芝村舞の使命が異なる――、ただ……、それだけだ。
 滝川が、自主的に戦術論を身につけるのを待っている時間はないのだ。指揮車の機能を利用して外部誘導をするに限る。だから、ポジションちぇ〜んじ!だ。
 これは、かなり効果があると思えた。友軍への支援要請を封じることができるし――そんなものやるわけがない、やるのは小隊に対しての支援活動だけだ――、戦闘の最初に攻撃ポイントを1回指定すれば、後は……、歌が歌えれば歌っておしまいである。掃討戦に入ってしまえば、太刀だろうが、ジャイアントアサルトだろうが、好きにすればいい。
「全軍突撃っ、我に続けっ」
 ではなくて、滝川に続け……である。




 司令になれば、毎朝、勝手にどこかの戦区へ 殴り込みをかける 戦闘参加するかどうか、システムから聞かれるが、これは見送りにしておいた。なぜなら、これをやってしまうと、もうそれで1日が終ってしまう。それはまずい。先生たちには、空き時間を使って滝川を鍛えてもらわなければならない。
 が、これがうまくいかない。本田先生の場合は、快諾してくれるのだが、坂上先生は――。
「今は……、そんな気分じゃありません」
 おいっ、できの悪い生徒を指導するのに、教師が嫌がってどうするんだっ!? 真面目にやってくれ、頼むよ。
 しかし、駄目だった。時間帯その他を変えても同じ。もちろん、OVERS@芝村舞と坂上先生とは、良好な関係を築いている――、こちらの思惑以上に先方から一方的に良好のようで、実は困っているぐらいだ。




 この兵学校の先生たちは、生徒同士で話をしていると、もう……、めったやたらに割り込んで来ることで、有名である。先生同士で、どこか他所で勝手に会話してくれよと思う生徒の気持ちは、常に無視される。なのに……、どうして、滝川と仲良くしたり、滝川に協力したりすることを嫌がるんだっ、坂上先生は〜〜。教師が、えこひいきをしてはいかんよ。
 まあ、その、なんだ……、割り込み好きな先生たちは、OVERS@芝村舞とラブラブな滝川との関係は非常に悪いから、そのせいだろうか? だが、それにしては、本田先生が快諾するのはおかしいではないかっ。
 断られ続け、しかし、それでもあきらめ悪く、坂上先生に頼み込む毎日が続く。戦術論をぶちかまさなくてもいい、いっしょに訓練〜でいいのだ。
 坂上先生は、持てるそのパラメータの中で、運動力が一番高い。よって、いっしょに訓練〜をした場合、必ずそれは運動力の訓練となる。運動力を上げたいなら、お供は坂上〜というのが、この兵学校の常識なのだ。
 運動力が高ければ、太刀戦のときの破壊力が大きくなる。2太刀必要なところを一太刀で済ませることも可能だ。N.E.Pに頼っている以上、それは無視してもよいレベルかもしれない。が、それでも掃討戦とういうのはあるわけだし、一人で訓練するよりも、いっしょの方が遥かにパラメータ上昇率は高いわけだし――。そもそも、滝川は、一人で訓練して来いなどと言っても、受けつけないタチでもある。
 が、一向に、坂上先生は滝川の指導をしてくれない。





 そうした中、激戦区に毎日転戦しながら戦闘を続けたせいで、滝川の撃墜数はのびて行く。そして、4月11日のことだった――。
 昼間、来須と図書館に行き、その後家まで送ってもらって、ごきげんで就寝しようとしたところに下った出撃命令。
 まず最初に、煙幕効果支援を祭ちゃんへ頼み、さて、滝川の誘導をしようとして、ターゲットを2番機へ合わせて愕然とする。
 なっ、なんだっ!? この射程距離は〜〜〜。どうして、こんなに射程距離が短いんだっ!? 


 なんと、滝川は、N.E.Pを持っていなかった!!


 ど、どうしたんだっ、滝川っ。N.E.Pをハンガーに置き忘れて来たのかっ!? なんで、ジャイアントアサルトなんかを手に持ってるんだ〜〜〜!!


 実際のところ、N.E.Pというのは、不思議な武器である。他の、たとえばバズーカやジャイアントアサルトの場合、戦場で投げ棄てれば、それでおしまいであって、数が減るのだが、N.E.Pに限っては、ハンガーに戻った士魂号の手に、一人で勝手に納まるのだ。いや、士魂号が夜中に拾って歩いているのかもしれない――ホラーだ。




 それはともかく……、このとき、N.E.Pは2番機にはなかった。まさか、未央ちゃんが主旨変えしたのかと思って探ると、やはり違った。では、3番機なのか?と考えて眺めれば――、あった! 善行がしっかりと抱え込んでいる。


 おのれ〜〜、善行〜〜。
 それは、滝川のものだっ。おまえのものじゃないっ。



 叫んでもどうしようもない。戦闘は始まっている。そして、何の誘導もしなくても、善行は無駄なくN.E.Pをぶちかまし、一撃で14体の幻獣を倒した。即刻、掃討戦である。
 優秀なんだな、善行。明日から、滝川に戦術指導を頼むよ……。




 脱力しつつ、翌日を迎える。朝起きるなり飛んで行ったハンガーで、2番機と3番機の装備をいじくり回した。
 このとき眺めた、2番機の装備は次のとおり。

右手:ジャイアントアサルト
左手:超硬度大太刀
右肩:展開式増加装甲
左肩:展開式増加装甲
後腰:機関銃弾帯
右脚:機関銃弾帯
左脚:機関銃弾帯




 そして始まった、泥棒との戦い。そうだ、5121小隊には泥棒がいる……としか、思えない。いや、そうではなくて、滝川が毎日N.E.Pをゴミ箱に捨てて、それを3番機パイロットが拾っているのだろうか? このあたり、いったいどうなっているのか、理解できない。
 善行は結構、好戦的だからこれをやるのかと思い、外見と物言いの割りには、常識を持っているはずの岩田あたりはどうであろう?と考えて、配置替えをしてみても、やはり同じだった。毎朝、3番機にN.E.Pが行ってしまう。
 もしかすると、速水のせいか? が、それはあり得ないような気がする。ぼややんとしているはずの――今回のループでは自己紹介すらいまだしていない――速水が、実は夜中に装備変えをしているとは考えいにくい。
 そもそも、5121小隊の隊員たちは、仕事などすでにしていない。すべてのパラメータはSであり、どいつもこいつも、毎日遊んでいる。ハンガーは常に無人なのだ。おかげで、士魂号の声さえも、耳に響かない。
 幻獣大発生前の作戦会議の決定を修正していないから、これは当然だ。そんなにパラメータを上げる必要もない。敵が減ってしまう。
 それはともかく、毎朝、2番機の装備は上記のようになっている。稼働ステップが少な過ぎて、前戦で闘う気があるのか?というような、どうしようもない状態だ。
 滝川〜〜、おまえ、重装備は嫌いじゃなかったのか? 楯を二つもくわえ込んで――、それでは、まるで……、甲羅に閉じこもるカメではないか〜〜。
 ますます、朝一番にどこかの戦区へ出かけるわけにはいかなくなった。装備を点検しない限り、戦闘には行かれないのだ。

 司令には休む時間はない。


 それでも、やっとのことで、滝川はゴールドソードを受賞した。




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