いつか、君はHEROになる





 朝起きたら、真っ先にテレポートで教室まで直行する予定である。そうすれば、HRが始まるまでの間、その場で自由に会話ができるのだ。実際、その場に、滝川、もしくは来須のどちらかがいるのかどうかは、運ではある。が、滝川の場合、先に1組にいる確率はかなり高い。来須の場合は、朝はたいてい、屋上にいることが多いから、こちらはだめだ。挨拶をする間もなく、いっしょに教室へ行くはめになってしまう。まずは、滝川だ。滝川の精神状態を普通に戻さねばならない。
 そのように心に決めて、3月9日の朝が来た――。




 心はずむ音楽とともに、実家からの仕送りが届く。延べ棒とバーチャルペット――、芝村一族というのは、いったい何を考えているのだろう。金は腐るほどあるというのに。転校して一週間たらずの学生が、毎日100万の金を使うわけがない。こづかい100万/日っていったい……。欲しいのは金じゃない、発言力だ。
 そうして、画面が変わったとたん――、うなる音楽、それを耳にして硬直する身体。明るい日差しの下、尚敬高校の校門には、滝川と来須が立っていた。お先、真っ暗である。ずるずると、ただ前に足を進めれば、来須が突進してきた。その後ろを滝川が追いかける。
 おい、目がすわっているぞ? 来須。
 引きずられるような感じで、教室へ行く。弁解するチャンスは与えないというような扱いである(このとき、どれだけリセットしたかったか……。もちろん、この現況が再現するかどうかの確認のため。まあ、偶然なはずではある。しかし、すごい状況だ)。




 教室へ入れば、自動的にHRである。この日、戦車学校は、勲章受賞の大盤振る舞いだった。狩谷、善行、遠坂、森、田辺、田代、新井木、岩田――、みな戦車技能を取り、士魂徽章を受け取って行く。先週末、滝川といっしょに仕事をするとき、ハンガー2F右側に人が大勢いるのを見たのだが、それは、こういうわけだったのだ。みな、真面目に技能取得訓練に励んでいたということなのだろう。
 これでは、今日は陳情ラッシュ、 人事部長 準竜師は大忙しに決まっている。そのうちの誰が2番機パイロットに納まるかは、わからない。が、明日には、確実に、滝川の席は1組にはない。急がなければ、いよいよ、無職の人間が陰謀のターゲットになりかねない時期が来てしまう。
 しかし、そのような、こちらの気持ちをよそに、授業風景は一見空恐ろしいものだった。なんといっても、来須の席はすぐ後ろであり、その授業参加態度は元々よろしくない。なんだか、今にも背中から殴られそうな気配だった。




 さて、待ちに待った昼休み――、当然のことながら、うなりまくる音楽しか響かない。まずは、滝川に謝罪しよう。
「許すがいい」
 成功率100%の表示を見て、ほくそ笑む。
 芝村が頭を下げているのだ、当然……のはずなのに、どうして、そこでいきなり割り込みをかけるんだっ、来須っ。やめんかっ。発言力を無駄使いしてしまったではないか。
 しかし、来須はその場から離れない――だけではなく、突然の説教である。おいっ、いったいどうやって、その説教コマンドをゲットしたのだ?
 男女関係が乱れているって言ったって、他人より低レベルでラブレターを寄越したおまえが悪い。
 えーい、滝川、ちょっとこっちへ来い〜〜とばかりに、来須から離れて呼び寄せれば、怒り心頭モードで滝川がやってくる。もう一度、謝罪だ。しかし――、だめだった。また、来須が飛んで来てしまう。こうなっては、滝川は後回しだ。先に、来須に謝罪する。
 滝川の割り込みはさせないつもりらしく、即答で返事が戻る。謝罪の言葉は受け入れたようだったが、内心は怒髪天を衝いていると、ファジーが教えてくれる。それでも、来須は普通状態になった。やれやれ、まったく手間のかかる……。




 次に滝川だ。が、結局、滝川への謝罪が無事に通るまで、3回も発言力を無駄使いするはめになってしまった。
 なんだか、気力が萎えたような感じがするのは、ただの気のせいなのかもしれない。
 それでも、二人とも、一応は普通状態にはなったので――内心怒り狂ってはいるのだが――、お愛想をふりまいて、滝川を訓練に誘う。念の為に、事前に技能チェックをすると、狙撃1、飛行1、情報1だった。い、いつ、そんなものを取ったのだ!? 昨日か? そうだろうな、そうでなければおかしい。自動情報収拾セル作成に没頭していたときのことなのだろうか。では、滝川は前向きになったのだ。めでたい! それでは、訓練である。すると、なんと、技能を取得した。ただし、同調1。こんなものをゲットして、何をする気だ?




 引き続き、訓練2回、さらに仕事を3回こなしたが、この日はそれまでだった。訓練〜訓練というときや、仕事〜仕事というとき、何度か来須の姿が画面に映ったのは、たまたま偶然に、近くを通りかかっただけなのだろう……と、このときは思っていた。
 なお、この日、最後に善行に向かって、作戦会議の提案する。もっと早くやりたかったが、争奪戦なんぞというものに振り回されてできなかったのだ。



 そうして、翌3月10日の朝、作戦会議で訓練強化週間の提案が可決された。これをやると、効果が2倍となって現われるし、技能習得率も高くなる。そのせいか、3月13日までの間に、滝川が取得したものは、次の通り。


 飛行1、情報2、誘導1、同調1、白兵1、狙撃2


 しかし、戦車技能はいったいどうしたのだ? 毎日、12時間は滝川と訓練や仕事をしているはずだ。訓練や仕事のお誘いは1回目が成功率100%で快諾、2度目は100%ではあるが文句を言う、3度目は74%に下がり、どうにかOKレベルとなっている。訓練3回、仕事3回――これだけやっても、戦車技能を取らないって、いったい……。
 そして、来須は――、2度目と3度目の訓練及び仕事の場には、必ず現われる。3月9日には偶然だろうと思っていたが、こうなると、いやでも作為を感じざるを得ない。
 その後、3月12日に、滝川からデートに誘われた。もちろん、快諾する。今のパラメータで、滝川からのデートの誘いに応じれば、その行き先は多分――。




「日曜の夜は眠らせないからな」
 それは……、不可能だと思う。そもそも、行き先を知っていて、そう言ってるのだろうか? 言っておくが、誘ったのはおまえだぞ? 滝川。
 しかし、それからというもの、滝川は何を考えているのか、周囲に人がいようがいまいがおかまいなしに、日曜日のデートについて、でっかい声で確認を取って来る。当然、来須もそれを聞いていた……はずだ(としか、思えない)。




 こうして、3月14日、デートの日。朝、味のれんの前には、来須が立っていた(やはり、リセットをして再現するかどうか、確認したくなったのは言うまでもない)。ほとんど、だめ押し気分に陥る。間違いない、滝川とのデートの現場を押さえる気なのだ(ほんとか?) なぜなら、日曜日の早朝、来須は、かなりの確率で公園にいる(ということを、何回となくループをくぐったから知っている)。それがどうして、滝川とのデートの日に限って、味のれんの前になど立っているのか。こんなのは初めての経験だ。
 まだ、滝川は来ておらず、ここでまた、争奪戦なんぞをやられてはたまらないから、びくびくものだった。来須がこちらへ近づいて来る。うっと身構えようとしたとき――。
「なあ、今日って家に帰らなくちゃいけないの?」
 滝川がやってきて、そう言った。だから、それは無理だというのに。
 来須を置き去りにして、デートに出かけた先は――、図書館。
「ひょっとしなくても、俺へのいやがらせか」
 そんなことを言っても、仕方がない。おまえ自身が選んだのだ。そして、それは、今のパラメータでは、先の読める行動でないか。といっても、この滝川自身には、ループの経験がないから、わからない……か。夕方には、当然閉館である。
 その後、戦闘――。ちなみに、2番機は、毎日のように乗り手が入れ代わる落ち着きのなさである。それは、誰もが実績を伴うことがないということが原因の1つなのかもしれない。なぜなら、今のところ、敵を撃墜しているのは、士魂号3番機だけである。1番機も2番機も、撃墜数0であり、さらにスカウトの実績もまったくないという、ある意味、非常にいびつな戦果を示している、5121部隊――。
 その中で、早くもゴールドソード目前となっている3番機。無意味だ、とっても無意味な数字だぞ、これは。こちらが、勲章もらってどーするのだっ。早く、戦車技能を取ってくれ〜〜、滝川〜〜。




 ……と、のんきに言ってる場合ではなかったのだ、実は――。
 この後、3月19日の夜、大問題発生。
 まじに、血の気が引きました、はい。




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