いつか、君はHEROになる





 日曜日、天に祈る気持ちで来須を探す。持ち物を確認するためだ。い、いや、弁当の確認ではない。帽子だ、帽子。これを手に入れなければならない、それだけなのだ、多分。
 テレパスで探ると、公園に来須がいることがわかる。ちょうど、この日の朝、うまい具合に実家からようやくテレポートセルの仕送りがあり、即座に直行。
 あった、帽子を持っている。ついでに言うと、弁当は普通のものだった。思わず、ほっと胸をなで下ろした途端、反省する。ここで、ループの目的を間違えてはいけない。
 しかし、実は朝起きぬけに公園にいきなりやってきてしまったせいで、交換する品物をまるで用意していないことに、ここに来てから気づいた。この際、何でもいいということにする。来須は、モノには執着しない性格をしているはずだ。
 とっさに、赤い花束を作り上げ、そして――、渡してしまった。な、何をやっているのだっ!? プレゼントではなく、交換だろうと思ったときにはすでに遅い。来須の感情はどーんと跳ね上がってしまう。無意識に身についた習慣ほど、恐ろしいものはない。コンマ1秒のポーズ時間もなく、指が動いてしまうのだ。
 これは、少々まずいとは思った。が、相手は、ヨーコさんに靴下を投げつけて喜んでるような男であるし、こちらはこれから丸一日滝川といっしょに過ごすつもりだから、明日の朝には滝川がラブレターをくれる予定である。となれば、大丈夫だろうと考えて、そのまま続行する(今回のループでは、滝川が戦死しない限り、リセットはしないことを信条にしている)。
 花束は使ってしまったので、自作弁当と帽子の交換を持ちかけると、来須は簡単に了解した。
 もう、この男に用はない。さて、滝川探しである。




 尚敬高校の玄関にいた滝川の近くには、なんと、田代香織ちゃんがいた。大変ラッキーである。即刻売店へ飛び込み、少女漫画を買った。交換して手に入れたライダーグローブを滝川に渡す。帽子もグローブも効果は同じ、となれば、グローブが滝川行きになるのは仕方がない。
 にこにこと笑顔をふりまけば、滝川の感情は目一杯らぶらぶである。二人きりでいると、即座にHな雰囲気。いっしょに訓練どころの騒ぎではないのだが、偉大なる助け手を呼ぶことで、これはクリアー。


 ――ピーッ


 ブータが現われたとたん、場は普通の雰囲気に変わるのだ。猫というのは、実に便利な生き物である。ゲーム終了時には、滝川とブータとの関係は、きっと地に落ちてはいるだろうが、HEROになるためにはそのぐらいは我慢してもらう。
 いっしょに訓練〜昼食〜いっしょに仕事、滝川のためを思う行動である。しかし、習得技能0。おまえ、やる気あるのか〜?




 春の日差しを浴びながら脱力しているところで、初戦闘。N.E.Pを所持している3番機は、はっきり言って無敵だ。ターン始めに、もっとも捕獲率の高い角度へ向きを合わせてNEP。その後反対側に向きを変えて、ジャンプの繰り返しでさっさと撤退すればいい。漏らした幻獣が撤退しようがどうしようが、知ったことではない。戦いは、たとえ自分が一番に逃げ出しても、常に GREAT VICTORY となるのが、常識外れな最終兵器の威力である。早く、滝川がこれを使うところを見たい。





 月曜日、今日は机の中にラブレターがあるはずだ。WCOPを取れば少しはやる気も上がるかもしれない(発言力の上昇以外に、パラメータはないって気もするが)。そして、教室へ行くなり、目に入るラブレター。当然だろう、芝村に無駄はない。


 屋上にて待つ ――来須銀河


 なにーっ!? な、なんで? どうして? あなたは、一昨日、ヨーコさんに靴下を渡して幸せに浸っていたはずでは? こんなレベルで告白してくるなんて、反則じゃないのか? 滝川とは運命の絆なんだぞ? どういうフラグが立っているのか、理解できない。だいたい、屋上にて待つって言ったって、教室の入り口に立って、こっちを見てるじゃないか〜っ。おまえ、いったいどういう男だっ!?
 くーっ、これは思案のしどころである。いや、本当は考える余地もなく、お断り〜が基本なはずの今回のループ。しかし、失意の来須は見たくない。表情的にはとても好きではあるが、やはり心が痛んでしまう。が、ここで、来須の誘いを受けると、まず100%、滝川との恋人関係は生じない。なぜなら、来須というのは、絶対に別れない男だからだ。
 悲しもうが、笑おうが、怒ろうが、ともかく、どんな感情を込めて「恋人面はやめてもらおう」と繰り返し言ったとしても、「離す気はない」の一点張りである。殴り込みのけんかをしかけ、「運命の仇」レベルまで関係が落ちまくっていても、別れてくれない(今までのループで経験済み)。



 まったく、普段は無口なくせに、この独占欲の強さはどうかと思う。来須というのは、むっつり野郎なのだ。おまけに、どうやら手が早い。師匠も真っ青である。さらに、大変死にやすいという特異体質持ちだ。
 以前のループで、武尊を 業者に発注  準竜師に陳情 したところ、それを若宮が着込んでしまい、来須は互尊などという、たわけたものを身につけて戦場に現われたことがある。スキュラ5体が待ち受ける中、田代香織ちゃんが突然歌い出すというハプニングに遭遇し、ガンパレマーチに踊らされた来須は、ライオンのブローチをこの手に残して、別世界へ行ってしまった。ああ、今思い出しても、めまいがする展開である。
 だから、今回のループでは、プラスの結果は産みにくい、来須の誘いは受けるべきではない。ない……のだが、やはりだめだ。ふらふらと屋上に行ってしまう。これで明日は何があっても遅刻はできないとも思いつつ――。
 今の段階で、連続遅刻の極楽トンボ、発言力−800は痛過ぎるから。




 来須といっしょに途中から授業に参加した後、昼休みになるのを待ち構え、自動情報収集セルの作成をすることにした。もしも万が一、明日の朝、岩田につかまったりしたら、その場で遅刻が目に見えている(今回、まだ追っかけっこをしていない)。備えあれば、憂いなし、芝村であるからには当然のことだと思えた。
 そして、事は起きた――。



 教室を出ようとした瞬間に現われた、争奪戦の文字。



 な、何をとぼけたことをやっているのだ!? 今、世の中は戦争中だぞ? そんなことをやっていてどうする? と思っても、引き下がるわけがない。だいたい、3月8日なんて、初期も初期、こんなときに争奪戦の憂き目に会おうとは――。それに、今回のループは、恋愛は二の次だったはず……。それなのに、いったいなぜ、こんなにもとんでもない状況が続いてしまうのだろう。天才3の威力は、いったいどこへ消えたのだ!?
「……どけよ。怪我するぞ」
「おまえの入る隙間はない」
 知っている。これを見せられるのは、実は今回のループが初めてではない。
 以前、この2人は、ファイナルバトルへのフラグを立てるための会話をしようとして、こちらが動きかけた瞬間に、目の前でこれをやらかしたのだ。あのときはめまいがしたが(なんせ、HEROとしての存在をかけた戦いに赴く直前の出来事だ)、今回のループでも、すでに脱力モードである。発言力が、羽をはやして飛んで行く〜。
 このままでは謝ることすらできないから、自動情報収集セルの作成を行う。なんだ、そうか……、やることは、結局当初の予定と同じだった。




 夜になり、仕上がったセルを使って、さて、謝罪である。ほったらかしにして逃げてしまったが、このままでは滝川を訓練や仕事に誘うことができない。が、しかし、ここで突然、気がついた。なんと、「あやまる」をまだ持っていなかった! 芝村に謝罪は必要ないと思って、取っていなかったのだ。迂闊過ぎる。
 い〜わ〜た〜、どこだー!? いた! 正面グランドをぶらついている。同じ場所に来須もいるが、この際、それはどうでもいい。周囲の状況などおかまいなく、さー、鬼ごっこをしよう。それができる男なはずだ、岩田は。気まずい雰囲気の中、岩田と追っかけっこをする。が、1回やっただけで、岩田は早退してしまった。これではだめだ。
 残りは、青き女神――、田辺である。田辺はどこだ? いた! 食堂で何をやっているのかは、この際不問にするから、「あやまる」を教えてくれっ。
 実際、田辺のことはとても好きなのだが、仲良くなると、彼女はもれなく貧乏になってしまうので、いつも心が痛むのである。どんな状況でも前向きな、その生き方が好きな分、不幸になるのを見せられるのは辛い。しかし、今はそんなことを言ってはいられない。
 そうして、火事と引き換えに、田辺は「あやまる」を教えてくれた。真紀、ありがとう。




 さぁ、いざ、謝罪である。この際、滝川が先だ。今日は、まだ一度も訓練も仕事もしていない。とっとと技能を覚えろ、この野郎〜である。
 ところが――、え? 帰宅した? ばっかもーん、やる気があるのか、おまえは〜。
 それでは仕方がないから、来須である。鍛えるべき人間とは別に、来須の精神状態にも気を使わねばならないわけで――、だから……、やっぱり屋上へ行くべきではなかったと思いつつ、居場所を探る。
 どこにもいない……。


 おまえら、いったい何やってるんだ〜〜。

 本日の成果0

 明日、気まずい雰囲気から朝が始まること、確定――。




BACK/NEXT


プレイ日記入り口へ戻る