いつか、君はHEROになる


 ――OVERSによる事前準備。
 5/10にN.E.P2挺を陳情。こうしておけば、次回ループの冒頭、これが届くことになる。次回ループの目標は、「滝川陽平、HERO化計画」である。なお、操作キャラは、初期能力、経済状態から見て、芝村舞とする。





 転校初日、自己紹介のあと、早速クラスメートたちに話しかける。適度に親しくなったところで、とりあえず、テレパスセルを作成し、その日は終了。
 翌朝、実家から金の延べ棒と表計算セルが届く。なんだ、表計算セルか……。延べ棒は、まあ、いい。しかし、なぜ、電子妖精とかを送って来ないのか、芝村の実家のやることは理解できない。テレポートパスでもよいのに。この際、仕方がない。あきらめるとする。
 そして届いた、前回ループからの贈り物――N.E.P――は、なんと1挺だった。しばし、呆然とする。総計56000もの発言力をつぎ込んだのに、その半分を無視されるとは……。
 それでも、なんとか気を取り直して、行動を開始することにした。とりあえず、この最終兵器は、1人分あればそれでいいわけだから。1人で2挺のN.E.Pを抱えては、動きが悪くもなると、自らに言い聞かせる。
 ところで、最初のうちは遅刻するわけにはいかない。真面目に授業に参加しつつ、引き続き、会話コマンドを手に入れるべく奔走した。「交換する」を手に入れ、猫笛も拾う。


 ――ブータ、出てこーい! ピーッ!


 ブータはすぐやってきた。やはり、偉大なる神は違う。反応が素直だ。
「マタタビをやるから、首輪を寄越せ」
 ブータ相手に、マタタビの威力に勝るものはない。ジャイアントアサルトも真っ青の威力だと思える。
 これで、こちらの能力は目一杯上昇するから、自分のための訓練など、当分はする必要がなくなった。
 そうして、笑顔をふりまきつつ、会話コマンドをかき集めているうちに、発言力が足りなくなってしまい、自動情報収集セルを作成。その場しのぎではあっても、電子妖精よりも成功率が高く、時間帯によっては、その後も引き続き行動ができるこちらのほうがありがたいものだ。
 その後、夜明けまでの間に、「いっしょに訓練」「いっしょに仕事」を始めとして、当面必要そうなものは手に入れることができた。
 帰宅前に、滝川を誘って訓練しようかと思って探したところ、やつはすでにどこにもいなかった。
 帰宅が早過ぎるぞっ、滝川。おまえ、まだ、何も覚えてないだろうがっ。




 そして、事件は、翌3月6日の午後に起きた――。
 猫笛でブータを呼び、うっかり間違えて、「持ってこい」を選択。逆立つ毛並み、にらむ瞳――。
「許すがいい。うっかりは誰にでもあることだろう」
 心の中でつぶやいて、売店へと走る。マタタビを渡して、きげんを取る必要ができた。いまだ、実家からは、テレポートパスが仕送りされないから、移動が面倒なことこのうえないが、仕方がない。
 おねえさんからマタタビを買い、先程ブータがいた校舎外れに行くと、なんと、来須とヨーコさんが、小隊隊長室のわきの木陰で、逢い引きをしているのが見えた。
 何を話しているのかはわからないが、どちらも楽しそうだ。が、今回のループの目的は、学園らぶらぶ大作戦ではない。滝川に絢爛舞踏を取らせること、この1点に尽きる。自分の恋は二の次……なはずである。
 しかし、気になる。何を話しているのだろうか。これでは、猫笛を吹く気力も失せるというものだ。


 ――ピーッ


 それでも、惚けたような心理状態でなんとか吹けば、ゆらめく尻尾が再び目の前に現われた。マタタビを渡して、 偉大な神 のご機嫌取りをした後、今度こそ、「持って来て」を選択。これで、2個目の首輪が数日中には手に入る。
 そうして、ブータが去った後も、来須とヨーコさんは相変わらず、大木の下にいるままだった。おいっ、いつまで話をしてる気だ? 午後は何もやらない気なのか? いや、真面目にやる気がないのは、こちらも同じことなのではあるが――。
 二人の仲が気にはなるが、ともかく、滝川を探して訓練だと思い直し、テレパスで居所を探ろうとしたとき、画面上にシステムからのメッセージが現われた。



 ――来須は幸福状態になった



 な、なにーっ? これはいったい!? まさか、来須がヨーコさんに告白してOKをもらったとか、それともその逆が成立したとかなのだろうか――。このとき、時計の針は、午後3時56分を指していた。動揺しつつ、なぜか時間帯を見てしまう。
 今まで、何度もループを経験しているが、実は、キャラ同士のカップル成立の瞬間に居合わせたことはなかった。瀬戸口くんが東原さんに告白したそうですね――といった、事後のうわさ話は耳にすることがあっても、イッツ告白ターイム!に出くわしたことは、かつてない。あれは、人気のないところで行われるものではないのか?
 そうして、幸福状態の来須がいるせいで、画面はひたすら明るい。午後の日差しもゆるやかに伸びて、春のうららかさを伝えていた。しかし、こちらの気分はどん底である。




 たとえ、今回の目的が、滝川をけしかけて 応援して、絢爛舞踏を取得させることにあるにせよ、それでも、来須が誰かと付き合ったりするのを眺めるのは、悲しい。いずれ来須からは、滝川のために帽子を手に入れる必要があるのに、それを持っているかを確認するとき、明日から、「ヨーコの手作り弁当」を見ることになるのか――。
 だいたい、以前のループでも、こちらが「交換して」を手に入れる前、なんと初日に、来須はヨーコさんに帽子を渡してしまうという展開があり、ヨーコさんからそれを奪い取るのは気が引けて、田代香織ちゃんのライダーグローブで攻撃力の増強を図ったという経験を持っている。そう、それは、思い出したくもない、死者12人を輩出した負け戦の始まりだった。初っぱなの気分の状態は、後々までたたることがあるのだ(違うって)。
 今回も、その繰り返しなのかと思いつつ、とりあえず、来須の持ち物を確認……した瞬間に、脱力した――。
 ないのだ。来須が持っているべきものが、1つだけなくなっている。



 それは、靴下だった。唖然としつつ、ヨーコさんの持ち物を見れば、しっかりと「来須の靴下」が納まっている。



 どういう男だ、おまえは、来須〜〜。人に靴下を投げつけて、幸福に浸ってるんじゃねーっ! くさい仲になりそうで、うれしいのかっ!?
 あまりの展開に、へたり込みそうになるOVERS@芝村舞である。
 いや、こんなことで、へこたれてはいけない。ともかく、まずは滝川に戦車技能を覚えてもらう必要がある。話はそれからだ。




「えーい、訓練するぞっ、滝川〜。ついて来るがいいっ」
 やけのやんぱちで、こちらがサンドバッグを殴り飛ばす隣で、「あーあ、訓練しないで、パイロットになる方法ってないかなぁ」なんて、ぼやくな、おい、こらっ。おまえの夢は、エースパイロットになることなんだろ? 協力してやるんだから、ありがたく思え(ほとんど、善意の押売りである。迷惑なこと、このうえない)。
 どうだ? 技能を覚えたか?と思って眺めれば、習得技能0
 さ、先は、長そうだな、滝川……。




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