「痩せる薬」




やせる薬・・・そんな物あるわけがない。
常々、そんなものには引っかからないぞと自分を諌めている訳ですが、
人間に失敗はつき物、そんな話。

以前、タイに行った時のこと、
格安パックによくある土産屋周りが当然ツアープランに組み込まれています。ブランドショップや物産館めぐりには全然興味の無い管理人ではありますが、その日ばかりは少し違っていました。
一枚のパンフレットに書かれていた「中国漢方薬専門店」という文字。その言葉が管理人を狂わせていたのです。

そう、ダイエッタ−の弱点、
「サプリメントに反応してしまうツボ」を思いっきり突かれていたのでした。

店に入るやいなや日本では入手しずらい、中国サプリメントを物色。
漢方薬にも興味しんしんです。お土産と称して怪しいドリンク類なども買いまくり、すっかりご満悦。
ショッピングを楽しみながら珍しいものを探索です。

観光客気分丸出しの管理人、今思えばハイエナの群れに何も知らない小ブタを放り込んだようなものだったのでしょう、
既に周囲の店員からロックオンされていることなど全く気がつかずに、無邪気にいろいろなサプリメントの餌場で遊びに興じていたのでした。

しばらく後・・・つかつかとヒールの音を響かせて白衣をまとった美人店員出現!

満面のナイススマイルを浮べながらこちらに近づいてきます、
「ショッピングは楽しいですが?」
「もちろん、珍しい物が多くて楽しいですよ」
浮かれていた管理人もグッドスマイルで返したのでした。
片言の英語で少し雑談などをしながらも、美人店員は管理人のショッピングバッグの中身をちらりと見ます、
「ダイエット関係が多いですね?」
「そうなんですよ、つい・・・」
またしても馬鹿管理人はへらへらと対応、
あまりにも無防備なその態度を確認してからか美人店員が管理人にすっと近づき、
耳元でささやきます。

・・・「やせる薬ありますよ」・・・と、

タイの熱い空気にやられていたのか、
はたまたサプリのツボがまだ効いていたのか、いまだに分かりません。
最後は「女性に滅法弱い」という管理人の急所をも直撃され、異国での三所責めにもうギブアップ!!
ふらふらと夢見ごこちのまま彼女に付いて行くしかありませんでした。、
しばらく後、呆然としたままバスに戻った管理人の両手にはしっかりとその「痩せる薬」が握り締められてたことは言うまでもありません。



日本に帰国してから、大量に買い込んだお土産の仕分けをします。
赤い箱に入ったその「やせる薬」はなぜかバッグの一番奥に押し込めてありました。

結局、あの美人店員の勧められるがまま約1ヶ月分の薬を購入、
今となってはどのくらいの金額だったのかも忘れてしまったけれど、結構高い買い物だったはず。
安いかどうかは効果次第、なにか悪いもの手を出しているかのような感覚にとらわれながらもその封を切ってみます、

「痩せる薬」は赤い紙製のパッケージでタバコほどの大きさ、中には安っぽそうなカプセルが24個、
カプセルの中はまるで固まりかけた血のように真っ赤でドロッとした液体が8分目程度、

しばらくそれを眺めていたが、明らかに危険な香りがする・・・
心の制御装置が「危険!危険!」とガンガン警告を発令中、動物ならば本能でこれを避けることは間違いないかもしれない、
しかし、管理人は当然人間、ここですごすごと逃げ出すわけにも行くまい、なにしろ高いお金で買ったものなのだ。
気を取りなおして同封してある説明書に目を通してみよう、


・・・・・・読めない、、、

見た事もない漢字がびっちりと書き込まれている。
中国製だから当たり前といえば当たり前なのだが、
一応、薬である。
日本の薬ならば、
「医師・薬剤師にご相談のうえ、用法・用量を守って正しくお使い下さい」
という暗黙のルールがあり、いざとなれば薬局にも相談できる。
しかし、中国の薬はどうなのだろう・・・

現地で聞いた片言の日本語での説明を必死に思い出す。
いくら思い出そうとしてもはっきりとした答えは出てこなかった。

少し考えた後、
「成人男性ならば一日二回、一回2錠に違いない!!」
どっかのテレビで聞いたような言葉を思い出す、
今考えれば、アホとしか言いようがない、


「成人男性ならば一日二回、一回2錠・・・」
結局、そう自分に言い聞かせ「やせる薬」を飲んでみることにした。

初めての服用、
飲んでからしばらく後に、全身が熱くなり心臓がドキドキしてくる、頭に血が上ったような感じがして「もしかして効いているのか?」と勘違いする。しかし、この薬のおかげで体重が減ったかどうかは不明。なにしろ当時はいろいろなダイエットの真っ最中だった。

服用一週間、
飲むたびに頭に血が上りぼぅっとすることが多くなる。
体は火照った感じというより「だるい」という感覚、
日に日に体調は悪くなっていくばかり。
以前、某食品を試したときに言われた「好転反応ですよ!」という言葉を思い出しつつこのまま継続するかどうかを考え出す。
考えてみれば「好転反応」といわれて好転したためしがない・・・
そんなことも気がつかないまま時間だけが流れていった。

しばらく後の病院の定期検診にて
その日も朝2錠を服用後、月一回の病院検診へ出かける。
結果は・・・
頭に血が上ったような感じ⇒薬による血圧の急上昇
全身のほてり・ドキドキ感⇒薬による過度な心臓負担による動悸
「絶対にその薬は飲むな、捨てろ!」と医者からみっちり説教される。
その時は「結局、使えない薬だったのか。残念・・・」ぐらいにしか考えていなかったかもしれない。

自宅に帰りなにげにネットで薬の名前から検索してみる。
最初からやれよと突っ込まれそうだが、当時はまだネットを使いこなしてはいなかった。
一件の情報がヒットする。そのサイトを覗くと日本語での注意事項と説明が書かれていた、
・一日一錠厳守
・不規則な服用厳禁
・最大服用許可期間1ヶ月
等々・・・、次のページを見ると過去の事故例まで書いてあった、

「死亡事故も発生しています」・・・と、

「おい!」と一人突っ込みをいれてみる、
残りの薬を全てゴミ箱に捨て、しばらく画面に見入っていた。