| 大学時代の友人が以前話していた 俺、顔面麻痺になって大変だったんだよ〜 へえ、そんなことあるんだ、大変だったね〜 そんな、会話をずいぶん昔にしたことを思い出した。 それが、まさか自分の身に降りかかってくるとは・・・ それが起こったのは本当に突然だった。 ある晴れた日の朝。いつと同じ時間に目を覚まし、眠たい意識を引きずったままとりあえずの朝食を取る。 朝食を詰込んだ後は、洗顔から歯磨きとルーチンワーク。もう長年繰り返している作業だ。 洗面台に映るのは相変わらず痩せることなくまるまるとした自分の顔。 女性のように化粧をするわけでもないので、自分の顔を鏡でのぞき込むようなことはない。T字カミソリでひげを剃るときにあごのあたりを凝視するくらい。 異変に気がついたのは、歯磨きの途中。 クチュクチュと水で口をゆすぐと、右口元かビュッと水が水鉄砲のように吹きだす。 1回なら気にすることはないが、ゆすぐたびにビュビュと飛び出した。 「なんだこりゃ」 初めて鏡を覗き込み口元を確認する。一見変わった様子はない。 しばらく鏡をのぞき込んも、まだ何もわからない。 とりあえず「イーーっ」と口を横に開いてみた ・・・開いて・・・ ひらいてなくね?? 口の左半分は確かに横にひらき、磨いたばかりの歯をみせている。 右半分は、ぴくりともせず真顔な口元のままだった。 一呼吸置き、あらためて鏡全体、自分の顔を凝視する。 口角をあげて営業スマイルを作ってみる。 鏡は、左半分が営業スマイル、右半分が表情もない鉄面皮。 まるで見たことがない、自分の表情を写していた。 |
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