§ asagi box §

前回のヴェニスの商人だけど、実は、たぶん、私は原作を読んだことがない。読んだことはあるのかもしれないが、覚えていない。だから、内容についてもおおきな勘違いをしているおそれがある。金貸しはユダヤ人ではなく、名前もシャイロックではない可能性がある。裁判官なんか出てこなかったかもしれない。借金した方に、シャイロック(とりあえずここではそう呼ぶ)から、どうしても金を借りなければならぬ、万人が納得できるような理由があったとしたらどうしよう。そしてそれが極悪なシャイロックによる計略だとしたら。そもそもヴェニスとヴェネチアは同じものなのか。せめてそれくらい調べてから書けばよいのだが、なにしろ私は高校の社会科では地理を選択しながらも、その理由は教室を移動しなくてもよいから、などという非常にフキンシンかつフマジメかつ怠惰な理由からであり、はっきりいって地理などは苦手科目の上位十教科にランクインするほど不得手であった。おい待て、上位も何も主要科目がぜんぶ入ってなお余るではないか。すみません、ぜんぶ苦手でした。

ただ、ヴェニスの商人というタイトルの話があって、前回いちゃもんをつけたようなエピソードがあったことは、まず間違いないだろう(実はこれすらもだんだん不安になってきている)。あれを書きながら、私の頭の中にあった映像というのが、ヤッターマンだったかゼンダマンだったか、とにかくタイムボカンシリーズの例の三悪がシャイロックの立場を演じたシーンであった。もちろん、「血は一滴も流すな」などとほざいて登場するのが正義側だ。かぶっていたマントをばさっとひるがえしながら上から降ってくるのだ。なんだそれは。よりにもよって降ってくるか。だいたい正義のはしくれなら契約の不備を指摘した上で調停を開いて両者和解に持ち込むくらい平等にやってみやがれ。

話はヴェニスの商人から少しはなれるが、私はこの正義側がどうしても好きになれなかった。同じ思いの人も多かろうが、ぜったいに三悪のほうが魅力的だった。正義側をいいところまで追いつめながら、ささいな不運で逆転負けしてしまう彼らが気の毒でならなかった。おしい、あとちょっとだったのに。

もちろん、ヤッターマンのエピソードでは、結果的には引き分けに終わったが、ヤッターワンがぶっ壊されてしまう話がいちばん好きだ。目障りな勝利のポーズはあったかどうか定かではないが、鼻持ちならない正義側の主力メカである機械犬が、外装をひっぺがされ、ムザンな姿をさらしたのには溜飲を下げたものである。勝ちこそ逃したが、一方的な負けではなかったのだ。三悪バンザイ。ちなみに三悪は、のちにヤッターキングとして強化復活を果たした機械犬により、例によってボロ負けしている。

オープンソースという言葉がある。ESRというハッカーオヤジが提唱した言葉で、型どおりの説明をすれば「ソフトウェアの設計図ともいえるソースコードを公開し、第三者が自由に開発・改良に参加できる仕組みまたは方針」となる。目玉の数さえじゅうぶんなら、どんなバグもものの数ではないという、ソフトウェア開発手法についての画期的な思想にもとづく主張だ。

つまり、何がいいたいかというと、私の書く雑文はオープンソースなのだ。間違いを指摘されれば修正するにやぶさかではないのだ。第三者であっても文章の改良に参加できるのだ。ついでに私は正しい知識も得られて一石二鳥である。ああ、すばらしきかなオープンソース。けっして、ろくに調べずに適当に書きちらしておいて、検証や校正はあとからよそ様にやっていただこうなどというフラチな考えなどではない。たぶんないと思う。ないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。なんちて。

今回も反省の色なく、あいまいな記憶にのみ頼って下調べは一切していないので、またどこかでいけしゃあしゃあと嘘をついてしまっているような気がする。さあ諸君、今こそオープンソースの真価を見せるときだ。ESRも草葉の陰から見守っているぞ(死んどらんがな)。

[2000.09.20]
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