台北2008年4月 淡水・八里

 2日目の朝食は、温かいものを見極めることから始まった。
初日の朝食は、おかゆもコーヒーもぬるくて閉口したのである。なんで、他所で口に
するものがぬるいとあんなにも腹が立つのか??コーヒーはやめて紅茶に、おかゆは
鍋の下の方から掘り起こすようにして温かさを得た。

 ソーセージの類もあるのだが油を吸わせたいのか、トレイの下には食パンが敷いて
あって、それが熱を奪い、なおかつフタをしないので肝心のソーセージはぬるくなる
一方なのである。こういう無駄が、どーーーーにも気になる。

 その日は曇ってはいたが、雨は降ってはいなかった。コンシェルジェのおねえさんに
聞いてみたら、50%で20℃、という答え。なんとかなるかもしれないのでカサは1本
だけ持ってホテルを出た。私は猫空というところに行きたかったのだが、夫は淡水に
行くという。淡水とは川の名前と一緒だが、河口にある街で、夫の大好きな渡し舟が
出ているという。地下鉄の終点にあって、台北から50元ほど。

 駅前の地図を見た。川沿いの道と、街の真ん中をつっきる道がメインらしい。
周囲の人々は殆ど川沿いの方に歩いていくが、私達は街中の道を選ぶ。すぐさま2軒
並んだ菓子屋に当たってしまった。わざわざ2軒隣り合っている手前の店が空いている。
そちらに入ってみると試食を勧められた。これがぎょっとするほど大きい。

 夫が好物の落雁みたいなのを買っている間、ゴマをのせたひらべったく丸いお菓子を
つまんでみた。これがうまい!つい、買ってしまう。次いで隣の店にも入ってみる。
またまた試食がでかい。同じようなゴマのお菓子は風味が少し違っていて、私としては
隣の方が好みであった。が、抹茶のお菓子は断然こちらがうまい。ヤバい。こんな
ことを見つけてしまうと、この街にハマってしまうではないか。

 街は、観光地らしい部分もあったが、生活のための場所でもあった。
みやげ物や名物の店が混じる商店街の裏が、そのまんま市場になっていた。
お惣菜だの野菜だの肉だの、服に下着類にと、生活そのまんまの商品を扱う小さな店が
いつまでもうねうねと続く。人はごったがえし、店の人が景気良く呼び込む。

 市場を出て、またしばらく歩くと店と店の間にある狭い路地に続く階段に
「←紅楼」とあるのが見えた。それはガイドブックによれば眺めが良いところにある、
観光スポットのレストランである。路地の階段をのぼって、行ってみることにした。
ら、その階段が続く続く。

 下を向いて上って行くと、花の香りがする。
名はわからない、ピンクの花が落ちている。これかと思い、マシなのを拾ってみるが、
その花には香りがない。もう3段上ったところで、今度はかんきつ類の花が落ちている
のを発見。花の香りはこれだった。

 そしてまた10段も上ったところで、その産品は全て坂の横にある家の庭からの
ものと気がついた。サクラの花もまた、咲いている。顔をめぐらせば、左には結構な
大きさになるカエデが新芽を伸ばしている。家自体も古くて大きかったが、つまり
この家の主は日本に通じるものを庭に植えていたのであった。

 レストランはそれなりだったが、夫は川向こうに行けば何かあるから、そこで
食べようと言う。それで今度は店を素通りして反対側の坂をくだるのである。船着場に
行く途中には教会があって、ウェディングドレスと白いスーツの二人が写真を撮って
いるのが見えた。雨でなくて良かったねえ。



 船着場の周囲は、食べ物の露天だらけだった。人とはこんなに食べてばかりいられる
ものだろうか、ってくらい。船会社は一つではなくて、いくつか別々に切符を売って
いたが、行く先は皆一緒のようだった。これに乗って、淡水対岸の八哩の街に渡る。
所要時間は、5分かそこらである。

 もやっている対岸が近くなるに従って、海辺の店の看板の文字もはっきりしてくる。
「本家孔雀蛤大王」・・・本家と大王はいいけど、真ん中の、孔雀蛤ってなんなんだ?
船つき場のまん前には2軒、小さな通りをはさんで「元・海の家」みたいなお店があり、
その片方がこの、本家で大王なのだった。

 小さな通りは買い食い用食べ物を商う店がひしめいている。その中の1軒が店の前に
水槽を置いていた。何か黒いものが見える。海鮮料理の材料かと覗いてみたら、全て
貝だった。真っ黒いムール貝みたいなのの、貝殻の縁がきれいな緑色になっている。
なるほどこれが孔雀蛤かと、一目で納得。

 そうなると、食べてみたくて仕方ない。方法を考えてみた。貝となると、蒸すか
炒めるか。じゃあ、これを紙に書いて出せばなんとかなるな。うひ。
一人笑いしてる両脇では相変わらず食べ物屋がこちらを呼んでいる。

 そんな中に、カニを揚げたものを商っている店を夫がみつけた。
それはまさに渡りガニで、美味しいかもしれないが鋏もなければ皿もない状況で
食べようを考えつかない。やめておきましょうという話になる。やがて道は交差する
道路で行き止まりとなったが、その向こうに廟が見えた。思ったとおり、海の神様を
祀っていた。

 廟の見物のあと、ふと境内?の脇を見たらそこには先ほどの渡りガニを食べている
親子連れの姿があった。あんな面倒くさそうなものを本当に買って食べる人がいる
んだなーと感心した。道路脇にはバス停があって、ここからも台北までバスで帰れる
ということがわかった。渡し舟の往復チケット(ほんの150円くらいだあ)を買って
しまったので、バスには乗れなかったけど。

 で、バス停の横には立派なガラス張りの掲示板があって。その掲示板に貼られている
のが、迷い犬の広告なのである。犬の写真もカラーコピーされていて立派な広告だった
が、こういう場所には殺人犯かなんかの指名手配写真を貼っておくべきじゃないの?

 それでもその広告をちゃんと見ると「性別:母」とか「乳頭9つあり」とか「耳は立って
ます」とか書いてあって、それはそれで面白かったのであるが。