セネター・フォング植物園
 
   ハワイでも植物園を見ようとは思っていた。
が、しょせんハワイである。夏場の東京の最高、最低気温と湿度はハワイより
高すぎるし、冬はその全てがハワイより低すぎる。雨季と乾季も逆。

 植物好きが植物園の植物を見るときの視線の一つ、というよりその殆どは「ウチで
それが再現可能か」ということではないのか。温室のない私がそのすり合わせをどう
することになるのかと思えば、気持ちはおのずから萎えていくのだった。

 最初から熱心でなかったうえに、間際になってインターネットで検索してみたが、
多すぎてお話にならない。検索の仕方が悪いと言えばそれまでだが、ぐちゃぐちゃ
やってるうちに出発時刻が来てしまった。もーいいやと出発した。

 何故この Senetor Fong's Plantation & Gardens にしたのかといえば、
ガイドブックに載ってたからである。もっとも通常、ガイドブックにはまともな
植物園情報など載ってない。ドールの農園に行けばパイナップルの珍種を見る
ことが出来るなどとは書いてあっても。見たいか、そういうの?そしてどうやら
面白い植物園があるのはハワイ島の方らしかったが、いくら隣の島ったってねえ。

 というわけで、私の事情によれば、「アラモアナ・ショッピング・センター前の
バス停から55番の Circle Island と書かれたバスに乗って約一時間、
(料金1ドル50セント)その後バス停から歩いて20分。」ということになる。

 なるべくならバスの運転手には最初っからその旨告げておいた方が良い。なんと
なればバス停にはそのまんまBUS STOP としか書いてないことが多く、現在位置は
地形で判断することになるからである。

 55番バスは平野からいきなりぴょんと突き出た高い山の裾を逆時計周りにぐるり
と回って裏オアフ?に向かう。バスはそのまま乗っていれば、オアフ島を一周して
くれるはずである。4時間強という時間をかけて。(でも、1ドルと50セント!)
もちろん、反対側から時計周りに島を周るバスもある。

 てなわけで、我々はアラモアナ・ショッピング・センター前からバスに乗った
わけだ。バスは観光地区を出て、やがて山の中をつっきり、海沿いの道に出て
普通の住宅地を横目に走っていった。途中で乗ってきたオジサンが我々に何処へ
行きたいのかと聞いてくれるが、植物園の名前を言ったら、「オレは知らんから
運転手に聞け!」と教えて?くれた。

 バスを降りると、何かを焼いてる匂いがする。見まわせば、これがなんと庭先で
子豚の丸焼きを作っている!!丸々一頭の子豚をぐっさりと鉄の棒に刺して
火の上でぐるぐる回してあぶっている。この「ぐるぐる回し」はモーターがやっていた
が、夫によれば昔は当然人間の役で、焼けた子豚の肉は小さな斧のようなもので
そぎ切りにしたのだそうである。

 それにしても、沖縄で生まれ育った夫にとって子豚の丸焼きは懐かしい風景だった
が、私にとっては初めて見るものであり、オジサンが番をしてさえいなければ是非、
じろじろと見たいものであった。「話には聞いていたけど、本当にやってるのねえ!
嘘みた〜い!」というのが正直な感想だったのである。もひとつおかしかったのは、
道の反対側に大きな犬が一匹つながれて、そっちをじっと見ていたことであった。

 植物園の看板があり、海岸通りから山に向かう道に入る。この道、夫によれば、
蛙が何匹も干物になっていたそうである。私は一匹しか見なかったが、跳ねるという
よりはのそのそ歩くしかないような大きさの丸々した蛙が、見事に平面になってる
のに感心した。さすがは日差しが強い割には湿度の低いハワイと言えよう。←!?

 ナマ物ならともかく干物の蛙など踏んづけようがケトばそうが恐れるに足りず、
私は周囲の家とかそのへんに生えている植物を見て歩いた。熱帯の大きなシダを
植えたハンギング・バスケットをいくつか飾ってオシャレをしている家があり、その
家の横にはトム・ソーヤの小屋みたいなのを作ってある。他の家々と違ってこぎれい
に片付いているところといい、日本ならこのパターンでいくとペンションだが、
これはどうやら単なる「色々凝ってみた」民家なのだった。

 途中、植物園まで1/4マイルと書かれた看板があって一瞬びびるが、夫によれば
「大体600mといったところ・・だと思ったな。」で、最初の方に書いた通り、結果的
にバス停から20分ほど歩いて到着するのである。道にはべりついた乾物のカエル、
周囲の民家の様子、不出来な熱帯植物園状態の藪?を見るのが楽しくない人は
リムジンをチャーターするとか自分で運転した方がいいかもしんない。

 植物園、の入り口には小さな土産物屋があって、これが種子とか本とか色々売って
いればいいものを、その関係は何ひとつ売っていなかった。そろそろお昼だったが、
食べ物もたいしたものは売っていない。食事の用意はしてあったがこれはツアー客の
為のものであり、それでもって日本人が来たと思ったら食事だけしてそのまんま
帰って行くのであった。
 
 誰が植物園と訳したのか、「Senetor Fong's Plantation & Gardens 」を。
アジア系として初めて上院議員となったフォング氏の、ここは農園なんである。
普通の入園料は設定されてなくて、トロリーに乗ってのツアーが10ドルとある。
入り口には縄が張ってあって、入れないようにしてある。乗り越えたけど。

 柵を乗り越えてそのへんをうろうろした後、涼しい日陰に座って咲き誇る花や
やって来る鳥を眺めつつトロリーの時間をぼけっと待った。垂れ下がるヘリコニアや
スパニッシュ・モス。花木。クチナシはハワイでも育つ、と言って悪ければ日本
でも育つ???グリーンの、ガクだけで出来てるようなバラ、これってなんだっけ。
大体葉っぱが虫食いだらけ。それも青虫系じゃなくてバッタみたいな食われ方。

 レインボー・シャワーとやらの木(後で知った。だってここに名札はない)が桃の
実のような色をした花を見事に咲かせていた。あまりに見事なんで、見飽きない。
トロリーを待つ椅子は、それほど悪いところでもなかった。

 やがてアメリカ人が10人ほどもやってきたと思うと今度はいきなり陽気なブロンド
のおばさんが登場、ツアーの時間だった。トロリーに乗って、園内をまわる。どうせ
よく聞き取れない英語なので、聞くともなしに聞く。私はここで初めてヘリコニアが
花が垂れ下がるタイプと立ち上がるタイプがあると知った。

 確かにブロメリアもヘリコニア(当然、どれもこれも地植えね)もあるけれど、
ハワイでは主役は樹木であり、その花である。草花をちまちま植えてまあきれい、
というのとは話が違う。ハワイではとにかく大きな樹木に目をひかれる。(それに
比べればこの農園はどーもちまちましていて・・。)

 で、このあたりが沖縄と違うところで、戦火で焼かれた沖縄本島、那覇や南部
あたりには巨木は少ない。まあしかしハワイの樹木ときたらあきれるばかりで、
アウトレットからの帰り、同じバスに乗ってた親子が「どの木も皆、この木何の木 
に見えるよねー」と話していたのには、思わず座布団1枚あげたくなった。

 ツアーは植物好きにとっては中途半端でつまらないかもしれない。私も出来れば
園内を歩いてみたかったが、名札があるわけでもなく、農園だからと言ってつまみ
食いが出来る(←やたらなもん食べるとお腹こわしますよ。)わけでもないのだ。
一度は行ってもいいかもしれないが、二度行く必要は感じない。でも、文句を言う
ほどつまらないわけでもない。その証拠に、ガイド・ブックに載っている・・・??

 というわけで、ここにはのんびりしに行った、だけであった。(←十分じゃん。)
しかし、パンの木やらコーヒーの木やらマンゴーにライチーの巨木(と言っても
樹齢130年とかなんとか、だが)にパパイヤに花がついたシェフレラにと、
そういうのが楽しい人には良いところだと思える。

 にしても、人は植物園に何を求めて行くのだろう?
そこそこ楽しんだにせよ、少しばかり、悩んじまったよ。