ピエール、らぶ。(何じゃそら)


 「緑が好き。」なんて言う奴とは、絶交したい。
もちろん、緑が好きだから絶交したいのではなく、女性雑誌のように耳当たりの
良いことをそのまんま口に出して平気であるという神経と、絶交したいのである。
CMの御隠居さんの、「つまらん!お前の言うことはつまらん!」ってやつだ。

 よしゃーいいのに(おいおい・・)「ガーデニング」なんか流行りになったせいで
こんな陳腐な受け売りにつきあわなければならない。「園芸」のままなら絶対手なんか
出さないくせにー。

 もう私は、緑なんか嫌いかもしれん。植物のせいで、こんな余計なストレスまで
感じなきゃならん。いや違うか、悪いのは緑じゃーない。でも、緑が素敵だなんて、
誰がひろめやがったのか。家の中にまで鉢置いて、あんたはうれしいかもしれんが、
緑はあんたのことが嫌いかもしれんぞ。なーんてな。←煮詰まってます

 しかししかし。捨てる神あれば拾う神あり??こういうストレスに晒されている
私のところに、ちょっとばかり良いことがあった。それはある朝のことで、
地区会のチラシをポストに入れながらその人は、庭の私に、一声かけたのである。

 「おはようございまーす。いつも花できれいにしてますねー。」
んまーほほほほ、私もきれいですー、と言ってみたいがやめておくのは相手が
人品卑しからぬおぢさんだったからではなく、御近所の人だったから、だ。

 で、「恐れ入ります〜。」と答えることになる。ここまでは普通の会話だ。
敵さんは続ける。「沢山苗がありますねえ。それ、栽培なさっているんでしょう?」
ほう!「育てている」じゃなくて、「栽培」ときますか!?

 栽培といえばそうかもしれないが、それは門扉のハンギング・バスケット用に
買ってきたポット苗であると告げ、こんなことよりは種蒔きが好きである旨を告げる
と、「たいへんですねー。発芽率とか、色々あるでしょ?」ときた。

 ほほー、「栽培」の次は「発芽率」とくるか。こいつ、何者?
「ええ、宿根草とか、外国から輸入した種子とか、どうもいまいちだなんて話を
友人同志でしていますのー。」って、私ときたら、なんじゃそりゃ。

 それでも友好的に別れた後、私はお向かいの奥様のところに情報収集に赴く。
で、事情を話し、あれはどこのどなたかと聞けば、園芸をやる人はあちこちにいるが、
多分それは薬科大の教授をしているXXさんではないかと言う。

 てことは、「ピエール」である。もっとも、ピエールったって、純粋な日本人だ。
奥方が昔は夫婦で「実験」やら「研究」してたと言ったので、私が面白半分に陰で
「マリーとピエール」と呼んでいるのである。(友人は笑いながら私のことを根性悪
だというが、キュリー夫妻と一緒にされて、どんな文句があるというのか?)

 お向かいの奥さんは、「でもあの人は薬草ばかりで、花の方はどうだかわかりま
せんよ〜。」と続けた。うーん、この人って一体、鋭いのか呑気なのか。「大丈夫
ですよ、だって栽培することは一緒ですから。」って私ときたら何が「大丈夫」なのか。
この場合正しくは、「関係ないですよ。」という言い方になるのか??

 マリーは先日もトルコの植物学者が来たとかなんとか言ってたが、当のピエールが
いくら薬用とはいえ、植物関係とは知らなかった。で。そんなピエールが忙しい
ながらに御近所にいて、時にはこちらをうかがっているとなったわけだ。

 これって、私好みの素敵なストレスではないのか。
なんせ御近所である。先は長い。

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 ハンギング・バスケット用に、マリーゴールドやジニアを蒔いた。
買えば1株100円はしてしまうが、種子なら200〜300円で、10株づつも作れば
楽勝でモトがとれる。で、ミックス種子を買って各色5株づつ作ろうと目論む。

 前向きというよりは、もはや反則?
いやあ、土地代、土代、お世話のための手間代、と書いていくと逆に高くついている
ような気もしてくる。そして、いずれも小学生クラスの草花のくせして、案外と
作りにくいのである。

 ハンギング・バスケットに使う植物は市販されている苗のようにぴかぴかして
いなければならないが、マリーゴールドはハダニやエカキムシがつくし、ジニアは
ヘンなふうに腐りやすい。(そうそう、思い起こせば普通のおっきいジニアも
ウドンコにかかりやすいんだった!)

 こんなに弱かったか、それとも「小学生クラス」と思ってナメているからこんな
ことになるのか?多分、どちらも本当なのだろう。しかしそれにしては、例え道端
でも、ところを得たマリーゴールドやジニア達は立派に育っているように見える。

 してみると、今ある花達ではなく、そのコボレ種子から育つはずの、次代の
花達に期待すべきなのかもしれない。って、それのどこが園「芸」やねん?と
つっこまれそうな気がするが。

 マリーゴールドは、黄色やオレンジのもあるが、私はあの古い古い、秋晩く
見れば美しいが、夏のさなかに見てしまったら死にたくなりそうなビロードのような
花が好きである。それも、自分が咲かせるのではなく、通りがかりに見かける、
というのがいいと思う。

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 ハンギング・バスケットを作るようになったら、一生関係ないだろうと
思っていた植物達とおなじみになってしまった。ペラルゴニウム(ゼラニウムと
呼ぶ人も多い)や、ランタナなんかがそうである。

 で、私ときたら、現実に触れてみたせいでヤなことに気がついてしまった。
何の話か。「臭う」という話である。今までも、プリムラ・オーリキュラを植え替える
たび、「なんとかならんかい」と思ってきた。花はきれい、花はいい香り、それは確か
なのだが、葉や根には花とは違う香りがあるのだ。

 オーリキュラはどうでもいい。東南アジアかなんかの山の中でハエに花粉を運んで
もらっているラフレシアも許そう。しかし、バスケットのおかげで、御家庭の近くに
ある植物だって、なかなかのものがあると知るに至ったのである。

 一般的に臭いと言えば、マリーゴールドである。←言いきっていいのか?
が、ペラルゴの匂いもそれなりだし、ランタナも独特の匂いがある。もちろん
匂いの好悪の感じは個人差もあるだろう。私個人としては、マリーゴールド、ペラルゴ
も我慢できるし、ランタナもキライではない。がしかし、ペチュニアはかなりイヤな
部類である。

 そんなこんな初夏の頃、一見ぱきっとしたクリアな色の花を使ってバスケットを
組んでみたはいいが、ふと気がつけば、あっちもこっちも臭う植物であった。
触るたびに臭う。「いっそのこと、臭うバスケットと呼んでくださ〜い。」
そう言ったら、ウケたりウケなかったりした。外見的には実に爽やかに出来たのだが。

 そうそう、バスケット用に蒔いてみた植物の中に、ティモフィラがある。
外見はふわふわほやっとしているが、触るたびにミョウガに似た匂いが強烈に臭う。
イヤだイヤだと思いながら扱っていたある日、ガーデンセンターに同じような
植物が別の名前で出ているのを見た。

 「ダールベルク・デイジー」。この音からすると、ミョウガから青臭さを抜いて
もう少し腐蝕質の多い土の香りを加えた感じが相応しい・・・などといーかげんな
ことを思いながら、指をつっこんでみた。

 おなじみのうげげな香りが立ち上り、私はめでたく「ダールベルク・デイジー」
とやらは、確かに「ティモフィラ・テヌイロバ」と同じか、さもなくば非常に近しい
植物と判定したのであった。

 頼んでもいないのに、もののついでに新しい世界を発見してしまった。
うれしいっつーか、哀しいっつーか。「お花、きれい〜。」で済むはずの世界を
また違う方向に逸脱しつつあるぞ、私は。