猫またぎの庭
猫歴が、長い。
田舎で生まれ育った。猫を欠かしたことはなかった。おかげで、人並みな暮らしには
犬猫の類は必需品だとさえ思っている。そしてどちらかと言えば、うちの場合は
猫の方である。社宅暮らしをしながらも、いずれ定住したら横には猫がいるはずだと
思っている。
こんな私が、猫を迫害する日が来ようとは思わなかった。
何があったのか。そらもう、花壇にやられたんである。どこにどのような状態で
やられたのか。夏に知人のところでもらってきた、ローズマリーの横。
それも、てんこ盛りを発見!!一体何を食べたのかと猫に聞いてやりたいくらいの。
この庭は、ご近所のノラさん達の通り道となっている。
私が来るまではどうだったのかわからないのだが、私が来たからには地面はふくふく
と耕されることになる。で、このふくふくの地面が猫にとってはトイレにうってつけ
なのだ。
これまでもなん〜〜となく、クサいなと思うことはあったのだが、あえて考えない
ようにしてきた。が、猫のくせに砂もかぶせない、異様に大きなアレを見たとき
には・・・!!もちろん、猫に罪はない。猫は己の宿命に従って用を足しただけだ。
で?必要なのは「躾」である。猫にウンコするなとは言わない。いくらでもしていい
のである。ただ、ここでは駄目だということをわからせなければならない。
ものの話によれば、猫を叱っても意味がなく、たんに叱った人間を恨むだけなのだ
そうである。自分から用心する気にしないといけないらしい。つまり、そこは
良くない場所であると猫自身に思わせ、自分からその場所を避けるようにしなければ
ならないとのこと。
では、どうしたらいいのか。私の目的は猫をいじめることではなく、この庭を
避けるべき場所と認識してもらいたいだけなのである。猫が避けたがるのは何か。
犬は嫌うらしいが、だからと言って犬を飼うわけにもいかない。
猫が嫌うものを考えた私の頭に浮かんだのは、「水」であった。
非常〜〜〜に馬鹿みたいな話であり、我ながらよくこんなこと考えつくなあと
感心するのであるが。私は結局、猫が通りかかるのを見たら、住居であるところの
2階から、水をかけることにしたのである。
それにあたってはまず、庭から抜ける場所をふさいだ。通り道ではなくて、
袋小路にしたわけだ。で、上から雨でもないのに水が降って来る、嫌な場所として
認識してもらう、というつもりなわけだ。
「一度の残酷は百の説得に勝る」というのはフランスのことわざだったか??
最初は、いくら命に別状ないからと言っても猫の背中めがけて水をかける度胸が
なかった。しかし、ここは心を鬼にしなければならない。猫が嫌うスプレーとか
割り箸とか、色々話には聞いても、全て結果は失敗に終わっているではないか。
私は、猫フンを薔薇やチューリップの足元に見たくない。
それは私のためでもあったが、植物のためでも、猫のためでもあった。
気の毒なのは誰か。それは、いの一番に猫フンのお相伴に預かったローズマリー
である。
それでも、猫の背中めがけて水をかけるのはコワかったので、間近におみまいする
ことにした。同じことをやっても猫によって反応は様々で、すっとんで逃げるのも
いれば、悠々と帰っていくやつもいる。中には、何故か匍匐前進をはじめたやつも
いたけど、もしかしてあれは、腰が抜けたのかしら・・・?
「頼むから早く覚えてくれえー」と、心の底で猫にお願いしながらベランダに水を
準備しておく私を夫は笑うやらあきれるやらしていた。代案も示せない奴を
相手にする余裕はない。
先日、それはもう上品な知人と、同じように猫の話になった。
彼も、「本気で怒ればわかるという話なんだけどね。」と言っていた。
放っておけばリルケを原語で暗唱し始めそうな、一見温厚にして教養ある紳士である
バラ好きの彼が、猫相手にどんな怒り方をするのかと思えば、柱の陰から覗いて
みたい気がしないでもない。←悪趣味ですね
動物に怒るというなら、忘れがたいシーンがあった。「メイフィールドの怪人達」
という映画の一場面である。その冒頭部分、登場人物の一人は、大事な芝生にフンを
した隣の犬に向かって、「今度やったらケツの穴をホチキスで閉じてやるからなー!」
と、怒鳴るのだ。うう、言葉としてはキョーレツだけど、効果あるのか、おい。
相手は「薔薇」の人だったし、もう冬だったので、剪定したバラの枝をそのへんに
文字通りバラまいておけばいいかもしれないと、その時には話した。猫の習性に
してみれば、コトの前後に土を掘り返すからである。本当に効果があったかどうかは
次にお会いしたときに聞いてみるしかないが、私が猫だったら間違いなくそんな
うっとおしい庭は避けるに違いない。
で。うちの方はといえば、先日、ユリの植え替えをした。
大きな鉢に、未開花の球根をずらずらと並べて上から土を載せる。その、ならされた
土の表面を見ていたら、これもなんだかヤバいのではないかと気がついた。で、
うちも剪定したバラの小枝をちょんちょんと挿しておいた。ちょっと見ると挿し木
してるような雰囲気になった。ふと、これでこの枝が活着したらいいなあと、
馬鹿みたいなことまで考えた。(^^;)
水かけを実行し始めたのは、寒くなる前だった。結局、一ヶ月も続けないで
済んだ気がする。今は、庭で猫を見ることは殆どない。いかな猫であろうとも、
いや、猫だからこそ、上から水が降ってくるようなところで一番無防備な状態になる
わけにはいかないのだ。多分。
いずれ、春が来る。
またノラさん達が増えるかもしれない。いや、増えるだろう。大体、ここから確認
出来るメンバーの構成員が、変っていない。ノラの子達が増えたら、また水かけを
しなければならないのか。うーーーーん。出来れば親猫に子猫達をしつけてやって
もらいたいもんだが。
ところで、ここまでしても私は相変わらず猫が好きで、是非、飼いたいと
思っている。猫に水かけるのと、猫を可愛いと思う気持ちは別なのである。
このへんは是非、理解していただきたいのだが。