バラ、レタス、そして君の名は

 一月四日、二日酔い気味でおまけに何かイヤに寒いなあと感じてはいたのだが、
「どこか散歩に行こう」と夫が言い出したものだから、「それではガーデンセンターに。」
と、行き先指定で外出したのだった。

 12月までは冬に、12月中は年末年始に向かい合うつもりで過しているのだが、
正月が終わったとたんに今度は「春」に向かい合おうという気持ちになるのである。
で、冬が寒いのは当たり前、こうしてはいられない!とばかりに外出し、懸案の
つるバラを入手したのだった。

 普通のバラなら、鉢植えに出来る。というわけで、今まではイングリッシュ・
ローズの「ヘリテージ」や「スウィート・ジュリエット」と共に転勤生活をしてきた。
しかし、つるバラはそうはいかない。三年で次の土地へ引っ越しするようでは。

 何を買ったの?って、うう、聞くな。
はるか昔、博多在住の知人の庭で一目ぼれしたはいいものの、いつか定住したら
・・・と思ってるうちに、イングリッシュ・ローズとオールド・ローズのブームが
来て、もののついでに手垢がついた品種、言えば誰もが「ああ、アレか」と答える
ヤツである。

 花好きに悪い人はいないかもしれないが、人が悪いヤツは確実にいる。
こんなところに書いたら、「ああ、アレか」どころか、ナニを言われるもんだか
わかったもんじゃーない。だから。黙って植えるのである。

 ヒントとして言うなれば、どっちも丸まっちい花で、片方の花色は蕾のときは
緑がかった白、それから花が咲くにつれて、中心部は薄いピンク・・・。
もうひとつの花色はピンクで、花弁の重ねは少ない。どっちも傾向こそ違え、
「丸まっちい花」であります。へっへ。答えはどうせそのうち話に出て来るさ。

 ところで、寒いというのは結局悪寒のことであり、結局風邪ひいてせっかく
買った苗も植えつけられず、しばらく玄関横に置き去りにされていた、
なんてのはまた別の話であった。

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 ガーデン・レタス、なるものを蒔いたのはいつのことだったか。
秋になってからである。ぼけっと北側に蒔いて、双葉が出揃った時点で、日に日に
陽がさす場所が少なくなり、日陰に侵食されていくのに気がついた。
やがてレタス達は完全に日陰の身の上となったのである。

 陽がささないので、成長が遅い。しかし枯れもしない。遅々たるものながら
成長もしている。間引きを行いつつ知人達に聞いてみると、ある人は「日陰?日陰
じゃダメよお。」と言ってくれ、ある人は「高冷地で作るものだから、寒さには強い
けど、でも霜が降りたらダメだね。」と言い切ってくれた。

 やがて本格的な冬が来て、霜がもちあがった。
あれは降りるものではなく、持ちあがるものなのである。その証拠に、あまり根張り
が良くないらしい品種が霜にもちあげられ、つまり根が切れて死んだ。まだ「ベビー
リーフ」もいいところで、首も据わらない感じだったので、ろくに食べてないのにと
残念だった。

 それからまた少しして、正月が来た。
その正月三日には、さらに雪が降った。引っ越して来て半年、好きなように
掘り返してきた地面が、みるみる白く染まっていくのを見たとき、あわてて
カサさしてレタスをとりに行ったのは、客が来るからである。つまり、サラダ用。

 しかし、レタスの上にも、地面の上にも、はては手の上にも雪は重なっていこうと
して、つまり、ベビーリーフ・レタスを抜く私と雪は競争なのであった。
たいへんっ、早くしないとレタスの場所がわからなくなるうううう・・・。

 午後遅くなって客達はやってきて、食べて飲んでくれた。
レタスも無事、食卓にのぼった。庭は中途半端な雪景色となっていた。

 ビオラやデイジーが植えてある、門から玄関までのミニ・ボーダーが彼らのでかい
靴の下になってたことがわかったのは、翌朝のことである。雪はレタスだけではなく
整然と植えこんである草花まで隠してくれたのであった。

 あいつら、いっそ、花が咲いたら招待してやりたい・・・。

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 植物の名前を知ることは、難しい。
金沢の自然に驚き魅せられ、山渓の事典を持って林道を走りまわったら、やっと
それに気がついた。それまではカタログから名前を知り、種子を注文して蒔いては
咲かせていただけだった。

 私はもうひとつ広い植物世界の扉を開けたことになるはずなのだが、
これからどうしていったらいいのかわからない。

 というわけで?他でもない園芸ニュースレターの会合に私は自分が蒔いた養成中の
苗の中から、名前不明の植物を持っていくことになった。何故不明なのかと言えば、
例の如くミックス種子から出た苗だからなのである。

 園芸ニュースレターの集いには頼りになる人どころか、近寄るに近寄れない人まで
いて、一体全体こんなところに私がテキトーに蒔いたらああそうかいと発芽する
ような植物を持ちこんでいいのかと言えば。すみっこの方でやるに決まっている。

 その日も、いろんな人が来ていた。
帰る頃までにはわかるだろうと思っていたが、名前はわからずじまいだった。
皆、なんとなくそれらしい名前を言うのだが、「・・・見たことはあるのに・・」
という苦悶の声と共に、結果が出なかったのである。

 しかし、こんなのは、まだいい方だった。ちゃんと聞けたからである。
一番アテにしてた人が欠席、「なんで?どうなさったのかしら。」
と聞けばその理由は、「ぎっくり腰だって〜。」というものだった。

 いやもう実に、植物の名前を知るのは難しい・・・?