最初の3月

 知らない人が訪ねてきて、おいなりさんに使うおアゲをくれた。
苗のお返しだそうである。するとなにか、オマエは知らない人に苗をあげるのか、
と言われればその通り。それどころか、実は、あげたかどうかも知らなかったりする。
それというのも、私が直接交渉があるのは、お向かいの奥様だからである。

 家を買うときには、周囲の環境に合わせて住民の思考回路まで想像してみた。
引っ越して来てからは、花苗をさしあげる、でなくば預けるに相応しい人はいない
ものかと周囲を観察してみた。その結果が、お向かいの奥様である。彼女は
様々なボランティアや世話役をなさっているらしく、人の出入りが多い。

 今では、開花苗から始まって、ミックス種子の名前のわからない花苗まで、
技術不要な草花関係の余剰苗なら、お向かいにどんどん運び込んでいる。奥様はと
いえば、長年ここに住んで培った豊富な人脈を使い、あちこちに苗をばらまいて
くれる。しかしここまでに至るには、わかる人にはわかるが、わからない人には
てんでわからないはずの長い長い説明があったのである。

 「知人の中には、余分な苗は自分で処分してしまう方もいます。でも、私は同じ
処分でも、誰かの喜びになるかもしれないと思ってしまって。まともな人達なら、
自分がタネから育てたものを何の関係もない人にまでくれるなんて、気味が悪い
ことだとお考えになるでしょう?」

 「・・・でもこれは、自分が好きでやってることで、だからこの苗達はある意味、
自分が楽しんだ挙句の残り物のようなものなんです。それに、差し上げた分だけ
新しい場所が出来て次の種子を蒔くことが出来ますから、もらっていただけるのは
うれしいことなんですね。それどころか、逆に、お返しとして植物をもって来られる
方が困るという・・・まあこれもヘンな話かもしれませんけど。」

 自分ながらこりゃどう考えても普通の思考回路ではないなと思いつつ
大体そんなことを話したのであるが、お向かいの奥様はきっぱりと言ってくれた。
「だーいじょうぶですよ!皆、苗を買ってるんですもの。植物のお返しなんて、よこす
もんですか。大体、奥様みたいに、タネから育てる人なんて、いやしません!」
・・・ああそうかい。

 ・・・人によっては、そこまで「安売り」したら、どんなふうに図に乗ってくるか
わからんぞと思うかもしれないが、今のところはそういうことはない。そしてお礼は
出来るならこちらの方でと、旅行のときの水やりをお願い出来ることにもなった。
(水やり機はあっても苗床までは無理なので、人間の手が一番なのである。)

 花も油揚げも、要らない。私にしてみれば、旅行のときに花の水やりをお願い
出来るような御近所関係こそがありがたい。それはお金では買えないことである。
お返しなんてものは、配布先として選んでくれたお向かいの奥様にやればいい。

 あげたものはあげたものなので、それからどうなろうが私は関知しない。
お向かいの奥さんが実は苗を売っぱらっていたとしても、それは20年この地に
住んで、人とのつきあいを大切にやってきた彼女だからこそ出来ることなのである。

 私にしてみれば、さっさと任せた方が早いのであった。

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 プリムラの種子は、ジベレリン処理をすれば発芽しやすいと聞いたのはいつのこと
だったか。錠剤でも粉剤でも、とにかく100PPMに調整して、一昼夜種子を浸してから、
蒔く。すると。がっぱがっぱと発芽するう〜〜!!はずなのだが。

 処理しても発芽してくれないのがあって、今までのところ、発芽しなかったのは
P.burmanica、secundiflora、lutea、chungensis、bulleyana、beesiana、
そんでもって、integrifolia・・・だった。(今までやってみたのはせいぜいがとこ
30種類ほどだから、もっとあるに違いない。)

 このうちのいくつかを含めたプリムラの種子は、現在改めて試験中である。
これらが暑い暑い関東の夏に育つかどうかは、「些細な問題」であるとして、
とりあえず棚あげしてしまう。

 出来れば、「うちもそうだった」とか、「うちは発芽した」とか、余所様による
試験の結果を待ちたい。ホントに。「こうやれば発芽するよ〜」という内容の
ものなら、なお可。

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 金沢時代、狭い社宅のベランダで、ようよう日陰を作って育てていたオーリキュラ
と、大事に集めた情報を分けていた相手がいた。敵さんはそれらをもらいつつ、
「金沢だから育つんだ。」と言い放った。(敵さんにヘタクソと言ったことはない)

 その後関東に帰ってきて、やっと腰を据えて栽培できることになったのは
御承知の通りである。そしたら同じ人が今度は、「金沢のようには育たないよ。」
と言いだした。(個人的には、金沢以上に育てたいと思っている)

 てことは、うちでそれなりに咲くとなったら、こう言うのは間違いない。
「そこはうちより涼しいんだ。」(ざまーみろ・・・あわわわわ!)

 話から推測されるのは、敵さんにあげたオーリキュラは結局全部枯れたんだろーな
ということと、にも関わらず、相変わらず嫌いではないらしい、ということである。
だからって私にからまれても困るし、なにより当の金沢でだってかなり「育ってない」
方なのだが。でもそれを言ったら、喜ばせるのがオチ?(^^;)

 正直言って、モノがオーリキュラであるならば、私にとって、協力は義務である。
故にと言っていいのか悪いのか、あげた先でオーリキュラが腐ろうがなんだろうが、
なんとも思わない。あげたものはあげたものなんだし、義務は果たしたんだし。
経過報告は質問を伴えば答えるから、これで何か問題があるとも思えない。

 敵さんの趣味が、人の善意を後悔で報いることだとしたら、そりゃ困ったもんだ。
が、今はまだことオーリキュラに関しては自分の執着が勝ちすぎて、「たまにゃー
こういう巡り合わせもあるんだろーなあ、いやはや。」としか考えられないのである、

 「強引にマイウェイ」ってやつかもしれない。