球根と初恋

  今年、久しぶりに知人のところに球根を贈ることにした。
彼女のところに球根を贈ったのは、4年前のことだった。何かのお返しだった気が
する。あの時は確か、チューリップと百合のカサブランカの球根だった。

  それで今年もお友達に送る?それがアナタ、私に何の関係がありますか?
と言われるかもしれない。関係は、殆ど、ない。ただ、色々あってねえ。聞いてくだ
さる?つまり。問題は、彼女のところが暖地であるにも関らず、毎年その
チューリップが開花している、という手紙が届くということなのである。

  あるわけが、ない。本当に咲いてるのか、保っているのか、おい!?と聞きたい。
園芸的一般常識としては、暖地ではいくらがんばって肥培やら消毒やらしてみた
ところで、チューリップの球根はウィルス病にかかりやすいので、品種によるにせよ
せいぜい2〜3年で駄目になる、はずなのである。多少のケアがあったところで、
本来とっくにないはずのものなのだ。だが、彼女は咲いていると書いてくる。

  本当に?本当なの?もしかしてお互いが武士の情けを発動してるんと違う?
「咲いている」というのは別の言葉の意訳ではないの?一方で、あんたの管理が
悪いからだと言ってダンナさんが叱られてる?聞きたいが、勇気がない。大体、本当
に保っていたらどうする?そして、次の春こそは4度めなのだ。来年こそは「咲い
てる」わけがない。春先の怪談だってば、それ。

  それで私はどうするのかと言えば、新たなる球根を贈るわけである。咲いていると
言うのは見栄っぱりな知人の大嘘だろうということで、あえて嘘のフォローをして
あげようというわけだ。そうすりゃ、来年咲いてたって当たり前じゃーん?てなわけ
で例のごとく国華園で球根選び。こういうのって、始めてみちゃうと、がぜん、
ノリノリ。益々もって、アホだが。まーそんなもんだよね、園芸関係の人々?

  植えるのは大変だが、植えてしまえば後は割りと呑気な、百合もついでに足して
しまう。品種は、スターガザール(濃ピンク)と、マルコポーロ(薄くピンクがかる)
で、1セットが 10球づつだから、何がどーだろーと、まず、足りなくなることは、
ない。変な言い方だが、いやほんと、彼女のところはこの言い方がぴったりくる。

  昨今の土地事情を考えれば、場所の問題から手間の問題から色々ゴタゴタするに
違いないけれど、そこんち、大地主。深めに掘らねばならない百合の穴掘りに苦を
感じないでくれるは、彼女のダンナであり、鑑賞したり絵にするのは彼女。ああ、
なんて気楽なのお。(:^0^)/

  今どき、楽しく身勝手にでかくなる品種を選んで20球も送って、咲いたらさぞ
見事かろう、へへん、どうよ、参っていただけて?な〜んて言ってられる相手なんて、
どこにもいやしないのである。下手すると、これなら切り花の方がいいのにと
思われたりするのである。ああ、せいせいするわ、私。変かな、私。

  で、来年咲いていても困らないチューリップは、「クイン オブ ナイト(黒)」
であり、「バレリーナ(オレンジの細長い花)」であり、「モンテカルロ(黄色)」
だった。いずれも25球づつ。咲いたら報われるけど、75球も植えるのはうんざり
だろうなあ。

  大体がとこ、この3つ、1つ1つの品種は悪くないにせよ、同じ場所には絶対植え
られない。色といい、個性がケンカし合うって奴。うまいこと、場所を探して土を
作って植えてね、彼女のダンナ。

  ・・・と、そこで思い出したのだが。彼女のダンナ、去年ケガしたのである。
これがまたすごいケガで、庭を開拓していたら、大きなムカデにお尻をかまれて。
ものすごくハレたのだそうで、病院行ったら即、手術ということになり。
担当医だったか執刀医だか指導教授だったか忘れたが、それが彼女の幼なじみの
初恋の人で。術後何日かしたところで彼から優しくかけられたその言葉は。

  「便は出ましたか?」

  ・・・初恋の人と、便の会話かあ。そんなのって全然うれしかないよなあ。元は
球根の話だったのに、変なこと思い出しちゃったなあ。今度はムカデに刺されないで
ね、彼女のダンナ。彼女もたまには手伝ったらいいと思ったりして。